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『十三機兵防衛圏』のネタバレ込みの感想


先日投稿したこちらの記事にも書いたのだがそもそも私はネタバレ込みの『十三機兵防衛圏』の話がしたくてnoteに登録したのだ。それをせずしてどうする、というわけで今回はネタバレ込のただ私個人の心の丈をぶつけただけの駄文を綴っていく。
※以下、ネタバレ

















クリア直後の感想


良かった……みんな幸せなようで良かった……。


そりゃもちろん「せっかくテラフォーミング成功したのにエンディングでまた仮想世界かい!」とか「これがありなら最後の戦いって何だったの……」と思わないわけじゃない。

でも、プレイヤーから見たらただの仮想世界でも彼らにとっては故郷だ。

10数年間生きた故郷に(正確にはそれ以上だけど)里帰りしたいという気持ちは自然なものだろう、人間だもの。

最後の戦いだってあの12時間の耐久戦を凌いだからこそ人類存続にも繋がったわけだし、彼らは(多分)テラフォーミング先でもきちんとやることやってるんでしょ。 如月と緒方の間に子供いるし。

それなら自由に生きる権利があるじゃないか。
あの仮想世界にもう一度降り立ち、仮想世界の住人と再会することでテラフォーミングは成功なんだよ。

どいつもこいつも楽しそうにイチャつき見せつけてきてもおじさんは怒らないよ。むしろもっとやれ。
そもそも本作の登場人物のほとんどが「惚れた〇〇のために××する!」ってのが行動理念だもの。

良いんだよ、ジュブナイルなんだからどいつもこいつも恋愛脳で。それが若さだよ。そりゃ今どきの女子高生はロボットだって乗っちゃうよ。


さて、ここから本作のキャラクターたちのここが良かったという点を語っていきたいわけだが、何せ発売して随分と時間が経っている。十三人の主人公たちについてはもはや語り尽くされているといっても過言ではない。

ここで私が彼らの物語を一つ一つおさらいしていった感想なぞ先人達のレビューの焼き増しにしかならないだろう。


であれば、語るべきは主人公たちを取り巻くサブキャラクター達から見た本作ではないだろうか。

本作では十三人の主人公たちはもちろんのこと、彼らを取り巻くサブキャラクターたちも非常に魅力的だった。


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鞍部十郎の親友として寄り添い、彼の自我の確立へ至る最後の一押しとなった柴久太。

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謎のしゃべる猫として適合者たちを目覚めさせるために暗躍し、薬師寺恵とのアンバランスな疑似親子愛を育みながら世界を救った影の功労者であるしっぽ。

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半ば押し掛ける形で鷹宮由貴の探偵活動の助手として収まり、彼女の活動をサポートしながら最期には倒すべき敵として立ちはだかる相葉絵理花。


彼らの活躍なくして本作のあのハッピーエンディングには到達しなかった。

以下、和泉……じゃなくて彼ら彼女らの活躍にスポットを当てながら本作を見返していきます。



謎の探偵助手、相葉絵理花


鷹宮由貴はもう見るからに『スケバン刑事』。

鷹宮由貴って名前からしてもう隠す気なし。何ならトークイベントでヴァニラウェアの代取がスケバン刑事オマージュです!って言うくらい。んでディレクターズコメントでは『探偵物語』がコンセプトと語っている。

刑事に探偵、どちらにも助手は不可欠でしょ、ってくらいのノリでぬるりと現れるのがこの相葉絵理花さんだ。

井田哲也に弱みを握られ、潜入した学校で「ホームズとワトソンみたいですねー」なんて言いながらするっと鷹宮の懐に潜り込み、ちゃっかり捜査を一緒に行う。

……まあ、すごい怪しい。

案の定敵じゃんか、ほらー。

……いや、流石に中身がテロリストのおっさんだったとは思わなかったけど。

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相葉さんの好きなシーンは何だかんだで鷹宮編でほとんど必ず最初にやる屋上のくだりですね。のんびりとした口調で鷹宮の助手という立ち位置を利用して情報収集する姿は、どこかの白馬の王子様を待つのほほん娘よりよっぽどのほほんとしてて癒されました。

ていうかこれ和泉十郎はどういう心境だったの。

嫌だよ、ネカマのうまい父親。恵ちゃんドン引きだよ。



属性もりもりの義父、しっぽ


愛しの和泉十郎が記憶喪失になったと知り、すっかり意気消沈した薬師寺恵の前に現れたのが言葉を喋る猫、しっぽ。
しっぽは自分と契約すれば十郎の記憶を取り戻してやると提案してくる。
学校、鞍部邸問わずどこにでも現れて誰々を撃ってこいと指示してくる慇懃無礼な態度のしっぽに対して、嫌悪感を滲ませながらも次々と適合者を魔法の銃で撃ち抜いていくのが薬師寺恵のストーリー。


しっぽも大概気に食わない奴でね。

世界の危機がすぐそこまで迫っていてもう後がないことを差し引いても嫌な奴なんですよ。

恵ちゃんの言うことを冗談めかして茶化したりだとか、恵ちゃんの機嫌が悪ければ「お、生理か?www」(意訳)と訴えられたら負けるような冗談を飛ばしたりと

でも、恵ちゃんも馬鹿じゃないから適合者を1人撃ち終えるにつれて次第に「いや、この契約って何?」って疑問に思い出すんですよね。どう考えてもおかしいやろ、と段々冷静になっていく。

ほとんど全員を撃ち終えたところで案の定黒幕がしっぽであることが判明し、クライマックスでは誤って愛しの十郎まで魔法の銃で撃っちゃう。絶望した恵ちゃんは自分のお腹を撃って自身も適合者に……しっぽは目的を達成して高笑い。



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いや、これはズルでしょ!!

当の本人が意識を失っているのをいいことに!隠していた本音を吐き出すなんて!お前、それを恵ちゃんに言ってやれ!せめて伝えてから消えてくれよ!行かないで!

と、こんな風に和泉……じゃなくてしっぽはとてつもなく狡い男なのだ許すまじ。



最高の親友、柴久太


〈追想編〉はとりあえず無難に十郎編から進めてたんですよ。

スタート画面で真ん中にいるし多分主人公だろうな、カーソルの初期位置も彼に合わせてあるしなって、特に何も考えずに。
そりゃ冬坂とくっつくと思うわけですよ。網口が恋のライバルで、薬師寺ちゃんは負けヒロイン、柴くんは一悶着あれども気の合う親友。

……結果的に予想が当たってたの柴くんだけだな。

しかし他の主人公のストーリーを読み進めていくと冬坂は冬坂で別の男がいるし、網口くんもスケバン刑事にお熱だし、薬師寺はよくわかんないけど何か重い過去があるみたいだし……。あっという間に本来のカップリングが浮き彫りになっていく。



十郎編は思春期の少年が自己を確立させるまでの物語だと思うんですよ。

どこか自信なさげな主人公がロボットに乗るという「いや、何年前のアニメよ」ってくらい王道な物語。

唯一の理解者であるお調子者の親友が軽口を叩きながら主人公を支える姿にも既視感バリバリ。

親友の裏切りに遭いながらも(正確には裏切りってわけじゃないけど)何かこの世界でおかしなことが起こってるぞ、という漠然とした不安に立ち向かう十郎。


そして十郎編のこのクライマックスですよ。

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「ゲームオーバーでも交代はナシだ」


そう言って姿を消す柴くん……。世界を救う役目を親友に託して自身は消える。

お前は最高の親友だよ!!

機兵を起動し、親友から託された想いを胸に戦いへ赴く十郎。

ここでわけも分からず眺めてただけのプロローグの言葉が思い起こされる。

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「違います 僕は…鞍部十郎だ」

いつも傍にいた親友はもういない。

しかし、この時に彼はあやふやだった自分の正体をはっきりと明言する。

自分は和泉ではなく鞍部十郎であると。

和泉として生きた過去を過去として割り切り、鞍部十郎として生きる覚悟を決めたと。

あの瞬間にこそ鞍部十郎が誕生したんですよ。


ここまで来たらエンディングのあの話もしないとならない。本当に本当のクライマックスなので切り抜きは当然禁止されているため、文字のみのお話なんですが本作をクリア済の方はもちろんわかるでしょう。



本作のエンディングってかなり賛否割れると思うんですけど前述の通り私は圧倒的に賛の側でして。一番の理由があのシーンなんですよ。

戦いを終えた若者たち各々のその後を眺めながら(そういや、十郎と冬坂の関係って結局ただのミスリードだったのかな……)なんて考えてた。

BJ、鞍部玉緒、井田哲也まで救われたエンディングだが、和泉と森村の関係の修復には至らなかった。

まあ、明るい未来が見えている現在から考えるに彼らの誤解が解ける日もそう遠くはない。それだけで十分なのかもしれない。

なんてまとめかけてたところで……最後の最後で……そうか……こうやってお前ら……良かった……お前らまで報われて……。

やっぱ本作は十郎×冬坂ではじまり十郎×冬坂で終わるんだなーって!!


何十年の時を経ても恋人と出会った瞬間には初々しかった少年少女の姿に戻る。これを粋と呼ばずして何と呼ぶのか。ご都合主義大いに結構ですよ。これほどまで綺麗に2人が結ばれる様を描かれたらもう何も言うことないです。

本当に誰も彼も救われるハッピーエンディング!ここまでやるともう逆にあざとさが薄くて清々しいよ!

十三機兵防衛圏最高!和泉十郎最高!おわり!

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