Spick(釘) and Span(木片) =ピカピカな[物語のある英語 Vol. 33]
直訳すると「釘と木片」になり、光る要素がないのに、なぜピカピカな、という意味になるのか?
1.由来の話が長いので、先に使い方から紹介
輝きが見えるほど、新しい状態のことを指す。
The apartment was spick and span.
(アパートはピカピカの新品だった。)
She's always cleaning because she likes her home to be spick and span.
(部屋を常にピカピカにしていたいので、彼女はいつも掃除をしている)
建物だけではなく、洋服にも使える。
Thomas looks great in his spick and span new uniform
(トーマスはピカピカの新しい制服を来ていたので、大層豪勢に見えた)
2.Spick and speckの由来
昔、Spickには色々な意味があった。ベーコンの側面、ラベンダーの2~3本の束、釘、茅葺き屋根の茅葺き、などなど。
Spanも同様に多くの意味があった。親指の先から小指の先までの距離、バターを数えるときの量詞、鎖、木片。こんなにも全てお互いに関係の無い意味ばかりの単語も、ある意味珍しい。
「親指の先から小指の先までの距離」の意味で、いつ使うんだ?とツッコミたくなったが、定規のない昔の時代なら親指と小指までの距離を使って長さを測っていたのかなと思った。カタカナ語でもライフスパン(Lifespan = 寿命)というように、Spanには期間の意味がある。期間も、距離も、「長さ」で共通しており、親指から小指の長さくらいの長さであることが多い「木片」、の意味になるのも少しはうなずける。
Spickが釘の意味で使われるようになったのは、音的にSpikeと似ているからだろう。サッカーで使う、スパイクシューズの「スパイク(トゲ)」だ。それゆえ、Spickが釘という意味で使われるようになったのはうなずける。
木片(spans)と釘(spicks)で色々なものが造れそうだ。この2つを使った単語「spickspeldernieuw」がオランダ語にあり、新品の船という意味になるらしい。「spickspeldernieuw」をよく見ると、spickとspanに通じる単語が入っているのが見える。新品の船は、ピカピカなので、それゆえSpick and spanでピカかピカの、という意味になったのだろう。
2.なぜオランダ語にspickspeldernieuwという単語があるのか?
考えてみれば不思議だ。なぜ新しい船をnew+shipというように2語で表わさず、あえてそれを表す1語を作ったのか?きっとそれには歴史的背景があるに違いないと思い、少し考えてみたら、日本には唯一の貿易国がオランダだった時代があったのを思い出した。
そう、オランダは海運力が強かったのだ。もちろん、オランダの海軍が名を轟かせていた時期もあった。それはオランダの植民地の多さを見れば分かる。
・インド
・台湾
・西アフリカ
・北アメリカ
・ブラジル
などなど、本当に幅広い。オランダにとって、海軍は特別なものであり、また船というのも、特別なものであったのだ。それがゆえに、新しい船のことを特別に表す一語が作られたのではないかと、SLOVARはそう思っている。
まとめ:今でこそはSpick and Spanは英語だが、その背景には、嘗て世界を支配していたオランダ海軍の輝きがあったのだろう。
余談だが、どんなにspick and spanのものでも、いつかはその輝きが衰えてしまう。嘗て最強を誇ったオランダ海軍ですらだ。そこに一抹の儚さを感じる。ただし、金とダイヤモンドなどの宝石は例外だ。
人間は輝くものが好きらしい。それゆえ、いつまでもその輝きを保てる宝石に惹かれるのだろう。
いつも記事を読んでいただきありがとうございます。英語学習に苦しんでいる方、つまらなそうに嫌々語学を学んでいる方が周りに居ましたら、シェアしていただければと思います。楽しく、深く、語学に取り組める人が1人でも増えたら幸いです。