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選挙制度のうまくいかない失敗 Vol. 56

前回はなぜ、わが社が幹部選挙制度に至ったのか、それが機能したことは何か
俺の葛藤などを交えて書かせてもらいました。
いつも 2000文字前後だったnoteなのに 
それの1.5倍も増量してお送りしてしまい読むのが大変だろうという申し訳なさと、
半分にすれば2部作になったのに・・・という後悔を残しつつ、

今回はバロックワークス(選挙制度)が進化していく中で 
実際にうまくいかなかったポイントを共有したいと思う。


①力量と期待値の乖離

社員全員による選挙だから、正直、俺も誰が当選するか開票するまでは分からない。
そもそも 俺に投票権がないわけだしね。
変な人が選ばれたらどうしようとか、俺に合わない人が選ばれたらどうしようとか思うわけだよ。

選挙制度の初期のころは 
立候補者がそもそもいないから
ある程度レベルのある人に立候補してもらうっていう保険をかけた。
だから、この問題は特には起きなかった。

変な人が選ばれることはないが、とはいえ
選ばれる人たちに会社経営の経験がある人もいない。
やったことのない人たちが ポジションを得て、頑張っていくわけだ。
プレッシャーに耐え、役割を果たそうと投げ出さない人たちは
速いスピードで一定のスキルを獲得していくという利点はあるものの、
残念ながらこれは誰にでもできることじゃない

大半は投票してくれた社員たちの期待を一身に背負ってはいるものの、
それに応える実力がなく、藻掻く子たちばかりだ。

姿勢よく 自分の不足と向き合ってくれるならば、まだ 
何とかできるかもしれないが 中には 選ばれて その気になっちゃう子も少なくない。
できない自分を認められない、 
いわゆる 「偉くなっちゃった病」 に感染する子たちだ。

こういう子は 教えても、諭しても、その場では わかった風な返事をするんだけど、
結局、行動を変えることはない。
自分ができないということを受け入れられないからだ
だから、本質的に大事なことを言われていることが理解できない。

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・偉くなっちゃった病の症状
  できない自分を受け入れられない 
  抱え込んで 助けてと言えない
  成果が出ない、やってる風な報告が増える
  考えてるだけで 行動しない   


こういう子の治療法として 俺がやってきたこと

マイクロマネージメントをする時もあるし
叱咤激励するときもあるし、
成果が出なくても じっくり見守って待つこともする。
また、俺の声が届かないと思ったら
家庭教師(外部の専門的な顧問)をつけることもある。
これで治ればいいけど、治らない場合は 
あとは思いっきり突き落とすという粗治療しか残っていない。

いわゆる ポジションから外すことだ。

実は、俺に投票権がない代わりに幹部をポジションから外す権限がある。
経営者として当然だけど、
成果を出せない人をいつまでも ほっといて 対処しないことはできないからね。

当人に「ハッ」としてほしいし、もう一回、這い上がってきてほしいから 
そんな断腸の思いでポジションから 外してるんだけど、
外せば外すで 大半の子は ショゲて、もう這い上がってこないわけだよ。
それで、さらに悲しいことに しばらくすると わが社を辞める選択をするんだ。

「なんだよ~!
もっと気張れよ!! 
どんだけ 温室育ちなんだよ~」って、当時は思った。

その子たちは立候補して、みんなから期待され、それに応えられなかった。
失敗したから、恥ずかしいと思い込んでいるんだ。
選挙制度の初期~中期にかけて、こんなケースは散見され、俺を悩ました。

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②仕事幅の足枷

もう一つは
おれが選ばれた幹部たちの成長する歩幅を考えられなかったことだ。

選ばれた幹部たちに与えられたミッションは一つだけで
「会社をよくすること」だ。
単純なわかりやすいミッションなんだけど
選挙制度の当初は 
経営をやったことない人たちで構成され、
今までは言われた仕事だけをやればよかったが
今度は仕事を生み出さないといけない訳だ。
まるで勝手が違うから皆、戸惑いだす。

そのうえで「会社を良くする」っていうミッションは漠然としすぎている。
一見 自由度が大きくて 聞こえはいいが
逆に言うと
何をどこから やればいいか分からない。
何が正解で 何が正解じゃないのか、
誰もが答えを持っていない人たちにとっては苦痛でしかない。

だから、幹部たちは自分で仕事を生み出すことの難易度を
なかなか超えられないでいた。

今でこそ、生き残ってきた幹部たちは年数を経過し、
仕事を生み出すことに慣れた人が増えたけど、
初期は ほとんど幹部として仕事を生み出す機能をしていなかったように思う。

急に当選し、仕事幅に自由度を与えられても・・・
サッカーで基礎を学ばないで、いきなり試合に出るようなもんだ。
勝てばいいから って言われてね。。

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幹部が機能しないから 社員たちから 
「選挙制度って意味あるんですか?」 とか
「ただの人気投票で成果出せるんですか?」 とか 言われる始末。
こんな声が聞こえるたびに 
俺は何度もこの選挙制度を廃止しようと思った。

それでも 選挙制度を止めないで、 俺を思いとどまらせたのは

組織は所詮「人」だ。 
この選挙制度は 社員たちにとって 
活躍できる幅と可能性の希望になるべきだし、
そのポジションから 人が責任と自由、期待を受けて
「人を育てられる仕組みの一つだ」と信じたからだ。

思い返すと
若い意欲的な子たちの成長する歩幅をちゃんと俺は考える余裕がなかったし
また、その子らの挑戦で 疲れた時の心休まる居場所を作ることも 
当時の俺にはできなかった。 

世の中、行動しない奴のほうが多いなか、せっかく意欲を出して 
やったことのないことに挑戦するんだ。
それがうまく行かないことの何が悪いのか。
当たり前じゃないか!
そう思った俺は これらがきっかけで  
「失敗してもいい、挑戦する奴がカッコいいんだ」という文化を作りたいと思うようになった。

それが わが社のバリューの一つである
「果敢に挑戦すること」 だ。
この思いを込めている。