拡大するアップサイクル市場と「アップサイクル認証」

アップサイクル認証は循環型経済(サーキュラーエコノミー)への大きな一歩であり、廃棄物が出ない自然なフードシステム(食料システム)です。

そして消費者はこうした製品を購入することで、最も簡単かつ確実な方法で気候変動の解決に貢献することができます。

オーガニック食品革命の始まり

1980年、全米オーガニック認証基準委員会が初めて会合を開き、オーガニック食品革命が始まりました。最近では、米国のほぼすべての食料品店、さらにはガソリンスタンドでさえオーガニック製品が売られている状況です。消費者は珍しい製品や目新しい製品よりも、オーガニック製品を求めているのです。

6月、アップサイクルフード協会(Upcycled Food Association、以下UFA)は初めて第三者組織によって認可を受け、食品廃棄を防止する製品を示す認証システム「アップサイクル認証」を発表しました。UFAは全米のすべての食料品店でアップサイクル食品を販売することを目指しており、目標達成までの期間として当初は40年間を見通していましたが、期間を見直し2030年までに達成する見通しを立てました。

2030年は、SDGs(持続可能な開発目標)のターゲット12.3「食品廃棄物を半減する」の目標の年にあたります。もしそれを達成できれば、気候変動に対する世界最高の解決策として、うまくいけば地球温暖化の最悪のシナリオを避けることができるかもしれません。

現状では25億トン(約40％)もの食料が毎年廃棄されており、今後8年半の間でその半分の12億5000万トンの捨てられていた食料の使い道を見つけ出す必要があります。

アップサイクルフードの定義とは

アップサイクル・フード協会の調整の下、ハーバード大学ロースクールや米ドレクセル大学、世界自然保護基金(WWF)、自然資源防衛協議会(NRDC)などの専門家チームは2020年、6カ月間の共同作業を経て、「アップサイクルフード(アップサイクル食品)」の定義を発表しました。

【アップサイクルフードの定義】

アップサイクル食品とは、本来であれば人間の消費にまわらない原材料を使い、検証可能なサプライチェーンにおいて調達し生産された、環境に良い影響を与えるものです。

1. 　アップサイクル食品は、そのままであれば食品廃棄されてしまう原材料から作られる。
2. 　アップサイクル食品は、付加価値のある製品である。
3. 　アップサイクル食品は、人間が消費するものである。
4. 　アップサイクル食品は、監査可能なサプライチェーンを有する。
5. 　アップサイクル食品は、どの原材料がアップサイクルされたものかを表示している。

アップサイクル認証

アップサイクル食品産業の急成長は、この高い目標を達成する希望の光となります。調査によると、アップサイクル食品市場は2019年時点で467億ドル(5兆1000億円)規模と推定されています。

市場原理の働きかけによって、食品生産者や、製造業者、売り手が、捨てられていたものから新たな製品を開発する意欲を後押しするでしょう。

アップサイクル食品を購入したい消費者　80％
アップサイクル食品が何かを知っている消費者　10%

また消費者もアップサイクル食品を求めています。『食品と栄養科学(Food and Nutrition Sciences)』に掲載された最近の研究では、アップサイクル食品を購入したいという消費者は80％に上るといいます。しかし、今のところ、アップサイクル食品が何を指すかを知っている消費者は10%しかいません。

すべての食料品店でこうした製品を手に入れたい場合は、数百万人もの消費者に教え伝えていく必要があります。果たしてどうすればいいのでしょうか。

アップサイクル食品が何を指すか理解する為の認証

アップサイクル認証は、消費者と小売業者がアップサイクルされている製品が何であるかを理解するために、製品または食材に対して付与される“待望の”認証プログラムです。

“待望の”というのは、少し大げさかもしれませんが、実際にこうした認証システムを構築するのに何年もかかりました。UFAは幅広いボランティアネットワークを用いて、18カ月かけて完成させました。

まもなく、最初のアップサイクル認証製品が、食料品店の棚に並べられることでしょう。

ロゴは、ボランティアで集まった学者が複数の消費者調査を実施し、その調査結果に基づいてデザインされました。結果、51%の消費者がこのロゴのついた製品を購入したいと答えたとのことです。この数値はパタゴニアとドクターブロナーが開発したリジェネラティブオーガニック(環境再生型オーガニック)認証のロゴよりも、高かい結果となりました。もちろんリジェネラティブオーガニックに異を唱えるわけではありません。

リジェネラティブオーガニックとは
土壌の有機物質を増加させ、炭素を土壌に隔離し、土壌侵食を削減するために、農家は主作物に加えて被覆作物を育てます。 農家は農場廃棄物をコンポストに変え、土壌のための自然の肥料および殺虫剤として利用する農法。

ただ、アップサイクルに向けた動きが消費者の心に刺さったのです。マトソンの調査によると、消費者の95%が食品廃棄を防ぐために貢献をしたいと考えているとのことです。

サプライチェーンがさらに発展すれば、カタログ内で検索可能な基準としてアップサイクル認証の導入が始まることでしょう。これにより、食材の卸売業者は製品開発段階において、持続可能な原材料をより簡単に調達が可能になります。

「アップサイクルされた食材を使用することは、製品をより持続可能なものにするための最も簡単で最も効果的な方法の一つだ」

このように、食品企業に対して自社製品の環境影響の削減を推進している、プラネットFWD代表のジュリア・コリンズ氏は述べています。

急速に加速するアップサイクル産業

実際のところ、アップサイクル産業は急速に加速しており、この動きは最終的に食のサプライチェーン全体を変える動きになると期待できます。

アップサイクル食品に関するメディア報道は今年128%増加(前年度比)しました。UFAメンバー企業は今年の売上成長率を160%と報告しており、2021年末までに、数百のアップサイクル認証製品と食材が市場に出回ることを目指しています。

UFAは慈善団体の支援の下、消費者にアップサイクル食品について教育を行う動画を公開する予定です。また、小売業者と協力し、店舗での特設売り場を作り、アップサイクル食品のプロモーションを全面的に打ち出していく予定です。

今後10年間、アップサイクル食品産業の成長率を少なくとも年間10%倍増させようとしています。これは、投資家にとっても大きなチャンスです。

そうというのも、今年はますます多くのアップサイクル食品企業が資金調達に成功しているからです。

UFAは、どの製品と食材が厳格なアップサイクル認証基準を満たすかを決定するための統一されたシステムを構築することにより、特定のアップサイクル製品、企業、または業界全体の影響を総計で追跡するシステムも開発しています。

今後、アップサイクルされた製品は購入するすべての製品において、「○○ポンドのCO2と食品廃棄物を削減できます」といったアピールをすることができます。そしてさらに、アップサイクル認証は単なる追跡システム以上の働きをします。これは、環境と経済の利益が一致するまれな事例であり、循環型経済における先駆的なモデルとなります。

すべての資源を廃棄することなく、確実により良いものになっていくという、自然な食料システムです。そして、消費者は日常的にこうした製品を購入することで、最も簡単で確実な方法で地球温暖化の解決に貢献することができるのです。

参照記事：
https://www.sustainablebrands.jp/news/us/detail/1204651_1532.html

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