音楽葬って知ってる?

音楽葬って知ってる?

葬儀の時に、故人や遺族の意向で好きな音楽を流したり、生演奏を行う葬儀のこと、らしい。
僕は存じ上げなかった。

最近、死だ、悔恨だ、って薄暗い話ばかりしてしまっているけど、これは至って前向きな話としてお付き合いいただきたい。

音楽葬を知るきっかけになったのは、半年ほど前に、知人と ”もし自分の葬儀の諸々を決められるなら、どんな式にしたいか” なんて話をしていた時だった。
僕は、もし自分の死が予見できる状況で、尚且つ割合自分が若い時分であるならば、薄暗く悼まれるよりも楽しい会にしてほしい、なんてことを兼ねてから思っている。冗談だけど、真に受けてくれても構わないけれど、棺にカルビを入れて、「いい匂いだな、二次会は焼き肉にしようか」なんてニコニコしてもらえる式にしたい。なんて話は、近しい人にはしたこともある。僕のために人が集まってくれる会だし、一般的にはきっと、そんな集まりってオフィシャルなのは結婚と葬儀くらいでしょう。結婚はお相手のお仲間も集まるから、対バンみたいな感じだし、僕だけの集客力じゃない。すると葬式はどうだろう。完全にワンマンだ。オフィシャルかつワンマンが、この世を去った後の一発限り、というのは皮肉だけれど、多くの人の一世一代のワンマンは葬儀なんじゃないだろうか。でしたら、当然、21世紀を生きたparty personとして謹んで盛り上げたい所存だ。賑やかに去りたいよね。

そんな話をしていたら、彼女は自分の葬式で流すプレイリストを用意しているという。小粋じゃないか。遺書とは違った、故人の意志の遺し方。それも、式にフォーカスが置かれていて、集まる人へのメッセージにもなる。手紙よりも、汲み取る余白もあるよね。

それなら僕は、どんなプレイリストにしようかな、と、当然考えた。
葬式のプレイリストを作るとなると、単に好きな音楽を詰め込めばいい訳でもないし、あんまりおあつらえむきに、よそ行きにしすぎても、僕らしくもなくなってしまう。自分の生を総括するのだ。加えて、集まってくれた家族、お友達、その時期まで関わってくれた人たちが、僕を偲んだり、もとい、思わず頬を緩めるような選曲が求められるのだ。一応、この世を去ってるからぶち上げてばっかりでは、場に相応しくないだろうし、ダウナーばかりじゃ場に飲まれて落ちちゃうだろうし。故人が——生きているし、実際用意する局面でもまだ生きているから未故人という方が適切だろうか——死後の場を弁えるっていうのもなんだか変な気もするけれど。本人が不謹慎を気にする必要はないんだろうけど。そもそもこの世を去っただけで、謹慎したつもりはない。

僕のを紹介する前に、かの有名な坂本龍一さんも生前に葬式用のプレイリストを用意していた、とのことなので、こちらに載せておくよ。ちゃんと構成されている、作品として仕上がっている、彼の人生を総括する音楽ってこれなんだ、っていう感慨深さも沁みわたる。かっこいいわね。

さて、照れくさいから後回しにしたけれど、坂本龍一さんの後に自分のを紹介するのは、順番を誤っている気がする。
ちょっと恥ずかしいけれど、でもちょっと見てほしいけれど、去んでからリクエストを通す方が難しい ━━ 遺書って直筆かつ母印がないと効力がなくって、そのほかの書面だと見つけた人の判断に委ねられる(かつ親族の合意が得られないといけなかったりするらしい)━━から、ここに2024年版は残しておくね。(そして、これって結構楽しい作業だから、皆さんも自分のを作ったら教えてくれたら嬉しいな。)

そして、ここからが本題に当たるんだけど、これを実際に葬式で流すにはどんな準備が必要なのか、調べてみたのです。案外シンプルだけど、葬儀場によって可否があったり、手続きも多少異なるらしいんだ。生演奏か、音源の再生かによっても違うんだけれど、ここでは、僕が音源の再生を想定しているから、そのケースの手順を記すとします。(単にケーススタディではなく、若くして去んでしまった人たちを偲ぶたび、完全に他人事ではないから、僕は備えとして、備えがあれば嬉しいから、探求しました。)

ネックになるのは著作権料をどう支払うか。
基本的には、執り行う葬儀社で音楽葬(音源再生)が実施できるなら、問題ないよう(費用は通常のものと異なるケースが大概だけれど)。
遺族サイドですべきことは、流したい曲を葬儀社に伝えることくらい。

パターンとしては、
①葬儀社が既にJASRAC(ないしは日本レコード協会)と契約しており、その分の費用を葬儀社に支払う
②葬儀社的にはOKだがJASRACとの契約がなく、個別にJASRACに交渉し、当日著作権料を支払う
に大きく二分できる。

※ただ例外的に、流したい楽曲が、JASRACの管轄外である場合、殊にインディーズバンドであったりすると、事務所や製作者に直接許可を取るような形になるケースもあるようです。

前者は事前に、未故人(亡くなる予定の人本人)あるいは近親者が葬儀社を当たっておけば、スムーズに進行できそう。

後者であれば、JASRACとの交渉が少し面倒そうですね。JASRACとの交渉においては、こういった使用ケースでは、1ヶ月など短期の使用許諾を得る形が主のようだけれど、案外融通も効くみたい。
JASRACのHP、問い合わせフォームは以下なので、実際にご準備される方はまずご相談いただくのが良さそう。

HP

問い合わせフォーム

※葬儀での利用に向けた窓口が見当たらなかったので、類似の使用状況と考えられるブライダルの窓口に問い合わせてみました。


JASRACに問い合わせてみたところ、丁寧なご回答がいただけた。一営業日でお返事が来たので、詳細な事情や条件がある場合などは、問い合わせてみるのが得策と思う。
②のパターンを想定して尋ねたけれど、基本的には、①のパターンで考えて良いようで、葬儀社あるいは葬儀場が音響設備を有し、音楽を再生するサービスを提供しているのならば、遺族は葬儀社に相談するだけで、後の手続きは葬儀社に任せておけば良いよう。葬儀社が音楽再生を請け負うにもかかわらず、JASRACへの手続きを行なっていない場合は違法利用になってしまう恐れがあるため、そんな心配があるときはJASRACの各支部に連絡してね、とのこと。
葬儀社がJASRACへの手続きをしているかいないか、なんてどうやってわかるんだろ。皆目見当がつかないけれど、ひとまずは、公に音楽葬のサービスを行なっている、としている葬儀場であれば問題ないのではないでしょうかね。

また、今回の僕のイメージとはちょっと離れるけれど、個人の耳元で流す、イヤホンで聴かせる、のような形であれば商用利用に当たらないので、著作権料は不要とのこと。そりゃそうだ。そうであってくれ。

JASRACの支部の連絡先一覧のリンクも念のためこちらに貼っておきますね。


ちなみに、個人でJASRACと短期契約を結ぶ場合、おおよそ葬儀場ではない場になるのだろうけれど(それって一体どこなんだ)、CDを再生するなら相場は以下のよう。


”CDやレコードを流す場合は「~500㎡で年間6,600円」「~1,000㎡で年間11,000円」など平米数によって変わる部分や、開式前・お別れ時でループ再生のみと、弔電や弔辞など部分部分で使用する場合は別途必要とのこと。”

音楽葬について|形式や流れ費用・選曲・著作権についてご紹介


僕が今直近でこれらを生かす機会がないことを祈る。まだ生きていたいし、皆さんも生きていてね。
ただもし、死期が近いことを知った方や、身近な故人にこういった意向のある方が読んでくださっているなら、少しでもお役に立てば、これ幸いと存じております。

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