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#映画感想文⑦独りよがりでキモい。けどなぜか面白い『バッファロー'66』とメンヘラ映画

#映画感想文

『バッファロー'66』

設定とか、主人公の独りよがりな性格とかめっちゃ嫌いなタイプ。

自分がうまくいかないことを全部周りのせいにして、メンヘラ起こしてわめき散らしたり、女の子にお願いする癖に最初から威圧的だったり(その割に女の子も受け入れる謎)。

「なんじゃこいつ」なのに、なぜか面白かったから不思議だった映画。

◎あらすじ

失敗続きの元囚人(ヴィンセント・ギャロ)が、両親に会いに故郷バッファローに戻ってくる話。
彼は子供の頃、アイスホッケーの試合に負けたことが原因で父親に虐待され、母親にも愛想を尽かされたと信じています。
出所後、両親にええカッコしいする為に自分が結婚していると嘘をつき、彼女(クリスティーナ・リッチ)を雇って妻役を演じさせます。しかし、彼女との交流を通じて彼は自分自身と向き合い、最終的に・・・?

◎概要

主演俳優のヴィンセント・ギャロさんご本人が監督・脚本・音楽も担当された映画です。
そういう「全部、俺!」なナルシストな映画って、
たいてい「ひー・・・」な黒歴史感がすごいのに、
この映画はいまだに色あせない。ずっと人気、評価されている作品なことがすごい。

まず、パケ写のヴィンセント・ギャロさんの目バキがすごい。
それがなぜかは映画を観るとこのシーンが出てくるので分かる。
一見、絶対「全部、俺!」のナルチシズムでファッションだけ、おしゃれ感だけの映画っぽいのに、面白い不思議。

バッファロー'66のWikipediaに書いてあったのですが、
ヴィンセント・ギャロさんは日本の小津安二郎監督のファンで、
小津監督の ”固定カメラ中心の独特の映像” に影響を受けたらしいです。

確かにそれを言われてみると、『バッファロー'66』に感じていた不思議なテイスト。
パッ、パッと視点が変わる絶妙な間合いの違和感
が小津監督の映画のそれだ!と思った。

『東京物語』

(笠智衆さんのこのパケ写の表情、バリ良いですね!)

◎『バッファロー'66』感想

たぶん私がこれを面白かったと思ったのは、
今まで気がつかなかったけど、小津安二郎監督のテイストを入れた淡々とした違和感のある映像の雰囲気

あとはラストが良かった!
なんかこれまで失敗続きだった彼の人生に、少しだけ楽しくなりそうな雰囲気が見えた感じ。
さらにその後はどうなるか分からないけど、そこに希望が感じられた。

そういう感じで、今どんなテンションの人でも予想外に面白く観れる映画なので、ぜひ観てみて欲しい。

『バッファロー'66』共演者のクリスティーナ・リッチは、
パケ写の通り、元祖ロリかわいい(?)

皆さんご存知と思いますが、彼女は、

『アダムス・ファミリー』

のウェンズデーです。

ちなみにクリスティーナ・リッチの出演作でなぜか、

『私は「うつ依存症」の女(原題:プロザック・ネイション)』

という映画が一番記憶に残っています。

※ ↑ 現在販売なし。

”プロザック”というのは、コロナの薬の件でもその名を聞いた(?)製薬会社イーライリリーから当時販売された”抗うつ薬”の名称です。

◎概要

端的に言うと、今日本でも流行ってしまっている(?)”メンヘラ”という状態な若い女性の抱える葛藤の自伝本の走り的な映画です。
精神医学において日本よりも先を行っている本場アメリカで、若者の”メンヘラ”が世間で社会問題として認識され始めて、新しい抗うつ薬が使用され始めた時代の当事者のお話。
原作本は90年代に出版されてベストセラーになりましたが、おそらく物語の舞台は80年代だったと思う。

触れるものみんなを傷つける主人公の彼女・・・。

原題とは全然違うくなっちゃってると思うけど、この「うつ依存症」という邦題の付け方、いじわるだけど上手いなぁと思った。

主人公の彼女の「私は感情的に繊細で、人とはどこか違ってて特別で、だからそれで苦しんでる!」みたいな透ける自意識の強さを、邦題タイトル付けた人は客観的に指摘してる感じ。

本来、自分が最も消したいと思っていた、最悪な症状のはずの”うつ”という状態自体に、彼女自身が実は依存しちゃっているということか?
(主人公は非定型うつらしいです)

ある意味、病気と共依存しちゃっているってことか?

そんなわけない! し、治したいと誰よりも思っているはずなのに。

したり顔でそれを指摘してくる精神科医にもムカつくし(映画の中です)。

でもそんな奇妙な現実を突き付けられて、最初は当然受け入れられない。

主人公の彼女は本当に苦しんでいるけど、

客観的に冷静に見ると「うつ依存症」と指摘されてしまうのだろう。

原題タイトルの『プロザック・ネイション』のように、主人公の彼女は色々な出来事から徐々にその指摘を受け入れて(?)、
処方された当時の新しい抗うつ薬 ”プロザック” は、彼女にとって功を奏した結果だったようです(映画の中です)。

この映画は、90年代に出版されたエリザベス・ワーツェルさんという方の自伝小説の実写化作品です。

(原作者のエリザベス・ワーツェルさんは、2020年に亡くなっています。
うつ病ではなく、乳がんで亡くなられたそうです。)

精神医学問題において、やっぱりアメリカは日本の先をいっていますよね。

日本でも

『クワイエットルームにようこそ』

とか精神病院が舞台の映画があったように、

昔から日本でもあったことだけど、日本社会では(特にSNS関係で若者の)”メンヘラ”が社会問題としてやっと今、世間全体で「問題だ」となった感じ。

似たテーマでもっと有名なのは、
今や『ストレンジャー・シングス』でお母さん役:ウィノナ・ライダーと、
アンジェリーナ・ジョリー共演の

『17歳のカルテ』

ですね。
こっちもノンフィクションが原作の精神病棟に入院している元祖”メンヘラ女子”たちの映画。

『うつ依存症の女』と同じく90年代の作品です(しかしこちらの話の舞台は1960年代のアメリカと古い)。

でもどっちかというと、『17歳のカルテ』の話のフォーマットは『オレンジ・イズ・ニューブラック』に似てるかも?


『17歳のカルテ』の主人公の彼女は”境界性パーソナリティ障害”と診断されていたはず。

そして、こっちの作品のアンジェリーナ・ジョリーが演じている役の子も、上の作品でいう「うつ依存症」的な子だったと思います。
病気がもはや自分のアイデンティティみたいになっちゃってる。
自分ではそんなつもり絶対ないと思うけどね。

主人公のウィノナ・ライダーが演じる役の子はそれに気がついて「私は違う」みたいになって、最後退院となってました。

以上です。

今回は結果的にほぼ ”メンヘラ” 映画特集になってしまいました。

毎回書き出すと書こうと思った内容とは全然別のところに思わぬ脱線をして、そのまま書いちゃっていますが、
まぁそれもジャズということで、良しとしておきます。

#映画感想文




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