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二元論的思考から離脱するために

はじめに

こんにちは、キャベツです。4月以来の記事になりますが、今回もそれなりに真面目な話になるかと思います。プロット等は書かずにいきなり書いているため、若干話が右往左往するかもしれませんが、温かい目で見ていただければと思います。推敲はするので、多少は読みやすくなっていると信じたい…
さて、今回扱っていく内容は題名にもある通り「二元論的思考から離脱する」ということなのですが、その話をする前に1つ違う話をしてから題名の回収をしていこうと思います。

「テラスハウス」が浮き彫りにした誹謗中傷の横行

2020年3月のテラスハウスの事件から、誹謗中傷という言葉が他者に意見を言う上で気にしなければいけないものになりました。SNSという便利なツールが普及し、誰かに対して意見を述べることが容易になった現代において、どのような言葉を使いどのような形で意見を述べるかということが重要になってきています。従来のコミュニケーションの中でも、相手の意見に対して意見を述べるということは日常的にありました。しかし、SNSを通したコミュニケーションは、不特定多数にリーチ可能であるということ、自分や相手が匿名という仮面をつけることができるということが従来とは異なる点として存在し、考えなければならない点になります。この中でも、匿名というものは、従来よりも攻撃性を発信者に与える危険性を特に孕んでいます。この危険性が今回の事件で作用してしまったと私は考えています。

この事件を発端として、誹謗中傷はやめようと殊更言われるようになりました。とにかく誹謗中傷はやめよう、誹謗中傷を言っている人を許すなといったことが叫ばれ、誹謗中傷の中身に関しては特に言及されることはほぼありませんでした。そのため、自分の行った過去の発言が誹謗中傷にあたるのかという弁護士への相談が、非常に増えたそうです。匿名であることを盾に、特に著名人に対して否定的コメントを繰り返してきた人たちが、戦々恐々とし始めたことが容易に想像できます。
2020年7月には、女優の春名風花さんがSNS上での誹謗中傷による名誉棄損の訴訟で、被告が示談金315万4000円を支払うことで示談が成立するという判例ができました。(以下の記事参照)

さらに2021年4月には、情報開示請求がしやすくなるプロバイダー責任制限法の改正案が参議院本会議を通過し、2022年末までには施行される見通しとなりました。これによって、従来だと情報開示の手続きに1年ほどかかっていたのが、数か月から半年ほどでできるようになり、誹謗中傷による名誉棄損から守りやすくなります。

では、漠然と叫ばれてきた誹謗中傷ですが、普通の否定と誹謗中傷の違いはどこにあるのでしょうか。それは、否定の対象先にあると私は考えています。
自分が受け入れられない意見に対して否定をするときに、「意見に対しての否定」と「その意見を言った人物に対する否定」の2種類が存在します。その中で、今回問題になった誹謗中傷と呼ばれるものは後者なのではないかと思います。具体例としては、日頃から冗談で使うことが多い”バカ”という2文字が挙げられます。つまり、「お前それは違うだろバーカ」と言った瞬間アウトということです。ただ、相手との信頼関係等によって特に問題ない場合があるので、一概に言うことはできませんが、多くの場合はこういう些細な一言が誹謗中傷として扱われる可能性があるということです。特にSNSのような匿名で情報発信できるサービスでは気を付けるべきでしょう。兎にも角にも、相手の人格否定にあたる表現を使うことは控えることが大事になります。

「良い」と「悪い」の二元論的思考

我々人間は、大人になるにつれて様々な考え方に触れ成長していきます。そうした中で、自然と相手の気持ちを慮ることが、習慣として身についていくと思います。日常生活において、自分の言動が相手に与える影響を考え、実行するか否かの意思決定をするというプロセスが、無意識下で行われています。そのようにして成長する我々人間が、誹謗中傷してしまうのは何故なのでしょうか。

私たちはよくマウンティングというものをします。他人より自分が優れていることを確認することにより、自己肯定感を高めていくという、人間に備わったメンタルケアのためのごく自然な行動です。我々が生きていく上で欠かせないものということです。しかし、最近は悪いこと、してはいけないこととして扱われるようになりました。このように扱われてしまうようになった原因として、誹謗中傷の件と同じように、SNSを中心としたデジタル上での意見発信が容易になったことではないかと考えています。今までは、思っていても心の中でとどめていたものが、簡単に発信できてしまうことによって相手に不快感を与えてしまう。その結果、してはいけない悪いこととして考えられているのだと思います。
最近では、これらを総括して「ネットリテラシー」と呼ばれ、インターネットを正しく使うために欠かせない知識として、学校の総合の授業などで取り扱われたりしています。ネットを介したコミュニケーションを行う際に、トラブルを起こさないようにと教わるもので、デジタルネイティブと呼ばれる世代の人たち、その中でもZ世代の人たちには、当たり前のように考えなくてはいけないものとして習ってきています。

ここまでSNSのネガティブな側面ばかりを扱ってきましたが、それだけではなくポジティブな側面もあることは皆さんご存じだと思います。特に不特定多数にリーチできる点と発信を容易にできるようになった点は、新しい自己表現の形として発展してきました。YouTuberやInstagramerなどのインフルエンサーと呼ばれる人たちが現れ、それに呼応するようにビジネスモデルが構築され、新たな働き方として注目されるようにもなっています。「バズる」という言葉も生まれ、2018年の13年ぶりの大改訂で大辞林に載るまでになりました。このように、SNSを代表としたインターネットの発展は、新たな文化形成を促し、社会を動かしています。他にも良い面はありますが、それを差し引いてもネガティブな面が目立ってしまっています。メディアのSNSに対する取り扱い方にも原因があるとは思いますが、やはり根本的な問題はSNS内にあると思います。

Twitterを始めとしたSNSには「いいね!」という機能があります。Facebookに実装されてから、様々なサービスでも採用されるようになったこの機能は、SNSで欠かせない機能の1つとなっています。一見すると特に問題ないように思えるこの機能ですが、私はここにこそSNSのネガティブな要素の根源あると考えています。
日常生活において何かの意見について考えるとき、様々な側面から考えます。ここは良いけどここは良くないよねといったように、賛成できる部分とできない部分を分けることで深く理解していきます。しかし「いいね!」というボタンは、対象となる意見全体に対して賛成できるかできないかを判断させる特性を持っています。そのため、すこしでも賛成できないものは受け入れることは出来ないと思い込んでしまいます。SNSを特によく使っている人は、これを1日に複数回繰り返すため、こうした二元論的思考を日常生活においても行うようになっていきます。これが、SNSが孕んでいる最大の危険性であり、他のネガティブな面を助長していると私は考えています。そして、思考力の低下したSNSユーザーから、誹謗中傷をしてしまうのです。

二元論的思考から離脱するためには

SNSを使いながら二元論的思考に陥るのを予防することは出来ないのでしょうか。もちろんそんなことはありません。今回は、SNSの中でもTwitterを使っていると想定して考えていきます。
まず最初に、Twitterに備わっている機能を整理していきましょう。前章でも扱った「いいね」機能、他者のtweetをさらに他者にシェアする「リツイート」機能、ただシェアするだけでなく自分の意見も交えてシェアする「引用リツイート」機能の3つが、情報発信機能を除いた主な機能になります。(ここでは、リツイート機能、引用リツイート機能の働きを情報発信ではなくシェアと考えています。)この3つの機能の中で、最も二元論的思考に近い機能がいいね機能になります。これに関しては前章で述べた通りなので、説明は必要ないかと思うので省きます。次に二元論的思考に近い機能はリツイート機能です。リツイートを英語で表記するとRetweetになります。ここで既に予想出来てるかと思いますが、リツイートはtweetを再び行うということです。そのため、賛成できるものを他人にシェアをするという二元論的思考に近い機能になります。加えて言うならいいね機能より周りに与える影響が強いため、リツイートこそ注意すべき機能なのかもしれません。最後に残った引用リツイート機能ですが、一見すると二元論的思考に近い機能な気がするこの機能が、3つの中で唯一救いと言っていい機能でしょう。
引用するということは、元情報に加えて自分の意見を載せてシェアすることができます。そこには意見に対して「良い」「悪い」の2つ以外の思考が働きます。もちろん、加える自分の意見によっては二元論的思考に基づくようなものもありますが、大抵の場合は「良い」「悪い」意外の思考が働いていると思います。というのも、単純な二元論的思考しかしないユーザーがシェアをしたいと思ったときに使う機能は、引用のないただのリツイート機能がほとんどだからです。引用リツイートをするために払うコストと、リツイートをするためにかかるコストを比較した時、断然リツイートのほうが安くすむのです。ただシェアしたいと思ったときに、わざわざコストの高い引用リツイートを使うとは考えにくいのです。

余談になりますが、リツイート機能に関して少し面白いことがあったので、恐らく知っている人も多いと思うのですが、ここで振り返ってみたいと思います。
米Twitter社が2020年10月9日、リツイートをしようとすると標準で引用リツイートが選択されるように仕様を変更しました。ただシェアするだけでなく、自分の意見を添えることでデマの拡散を防止しようとしたのです。(詳細は以下記事参照)

もちろん普通のリツイート機能がなくなったわけではないので、引用リツイート画面になった際に、文字を入力しないでリツイートボタンを押せば普通のリツイートが可能です。この仕様変更によって普通のリツイートと引用リツイートのコストが同等になりました。結果は、Twitter全体のリツイート数が20%減少し、引用リツイートの絶対数は増加したが、引用リツイート全体の45%が賛意を示す一語だけが書かれており、70%は25文字未満だったと発表されました。米Twitter社の狙い通りとはいかなかったため、現在はこの仕様は元に戻されています。(こちらも詳細は以下記事参照)

先ほど余談と言いましたが、これが二元論的思考から抜け出す大きなヒントになっていると思います。「良い」と「悪い」以外の思考が働くコストの高い引用リツイートを積極的に用いることで、物事に対してしっかりと考え自分の意見を持つことができます。これを習慣かすることができれば、日常生活で二元論的思考に陥ることはなくなるでしょう。

おわりに

今回扱ったSNSのような便利なツールには、様々な功罪があります。18世紀後半から19世紀にかけて起こった産業革命以降、地球温暖化が急激に進行しています。朝鮮戦争がもたらした特需景気から日本は高度経済成長を遂げますが、その陰では公害が深刻化していきました。光あるところには影があるとは上手くいったもので、何かが成長を遂げた裏には何かが問題として立っています。特に今回は個人をターゲットにしやすかったために、一見関係ある人と関係ない人に分かれているように思える事例でした。そしてこれからは、そういう事例が増えていくと考えています。便利な時代になったからこそ、1人1人の意識が大事になってきます。自分の行動は大丈夫だろうかと考える視点を常に持っておくことが、日頃からできる予防になると思います。これからの世の中がすこしでも良い方向に向きますように。

編集後記(自分)

最初に書いたように、プロット等は書かずに思いついたまま書いた結果、5500字に迫る超大作になってしまいました。長いなと思ったみなさん大変失礼いたしました。おそらくここまで読んでくれている人はほとんどいないんじゃないかと思っています。もし読んでるよという人がいましたら「いいね!」をよろしくお願いします。
ただ僕自身も驚いています。というのも、今までも思いついたまま書いたことは何度もあるのですが、ここまで長く書けたことがなかったんです。書けても2000字だったり、途中で辞めたりしてたのですが、なぜか今回はここまで書けてしまいました。しかも書こうと思ったときに一気に書かないと書けなくなるこの僕が、書き上げるのに何日もかけているということにさらに驚いています。なんか新しい自分に出会った気分になりました。
となんだかんだ追加で書いているうちに6000字になりそうなので、ここら辺で終わりにしたいと思います。SLDでは様々なライターが多岐にわたる分野のファンタスティックな記事を書いています。他の記事も面白いと思いますので、読んでいただけるととてもうれしいです。ここまで読んでいただきありがとうございました。それではまた。(キャベツ)

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