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伊藤映雪
2019年9月3日 19:44
束ねた髪をほどいて空港に降り立ちメール画面をひらいて息災をつたえる入り江に風がわたり青いガラスのように湖も冴えている水辺のコテージで半年の空白をなぞるように斜めの角度で笑ってみせる未明に目を覚まし窓を開けたら風が潮をいざなって素肌へしみこむ小火のような痛みがやがて燎原の火となりわたしを滅ぼすまでオルゴールは鳴りつづける
2019年9月2日 09:37
なくなった会話の隙間を埋めるように比喩だけを頼りに横断歩道の白を選んで歩くあなたの猫背に急かされて嵩張った髪を間引いてわたしは低空飛行をはじめるたくさん失うわたしの星を数えて(遠くで踏切の鳴る)、だから二日ぶりの雨が 慰めにすらならないと知る息絶える夜を見送って出口に逆らって電車が夏を産む枯れ草のように乾いた髪を梳くたびいとおしく思う春が滅んでいく*『現