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わらしべ長者のサバイバリズム

「いいな、それ」
俺は25口径のベビー・ブローニング拳銃を右手に握り、大男に歩み寄る。
仁王立ちする大男の手には、大砲みたいなリボルバーが銀色に輝いていた。
「ンいかにもォ! 俺の銃は577口径、ブランド・プライゼリボルバー!」
長髪髭もじゃのバイカーギャングめいた大男が、誇らしげに説明する。
「フニャチン野郎、貴様の銃は何だ……ヒヒヒ、それは本当に銃か?」
カチリ。俺は極小拳銃の安全装置を親指で弾き、苦笑いと共に歩み寄る。

大男は左手で拳を握り、ゴリラめいて自分の胸を打った。
「この俺の鋼の肉体を見ろ! 貴様の銃など全弾撃ち込まれても平気だ!」
鋲打ち革ジャンの下、裸の分厚い胸板で、極彩色のベイブの刺青が嘲った。
「かもな。正直、あんたにゃ素手でも勝てる気がしない」
俺は25オートを構えたまま、男との間合いをゆっくりと詰めていく。
「貴様は実に運の悪い男だ! 一撃で死ねるのが、せめてもの幸運か!」
10メートル……9……8……7メートル。
「この銃で死ねることを誇りに思え! 超火力をその目にしかと焼き付け」
パパパパパパンッ――カチリ!

「ヌッ……グウッ!?」
ガチャリ! 大男はリボルバーを落とすと、刺青に血の滲む胸を押さえた。
一歩後退り、踏み止まろうとして、仰向けに崩れ落ちる。
俺は弾切れの25オートを両手に握り、残心して鋭く息を吐いた。

極小拳銃を懐に収め、床に転がるハンドキャノンに歩み寄り、拾い上げる。
「あんた馬鹿だな、慢心し過ぎなんだよ。25口径だって銃は銃だ」
片手では取り落としそうなほど重い銃だ。俺はグリップに左手を添えた。
カチリ!
 ハンマーを起こし、流血してもがく髭もじゃ男に歩み寄る。
「ヌゥッ! 俺は鍛えているんだ……この程度の痛み、どうということは」
「それじゃあ、ご自慢の大砲の威力……あんたで試してみよう」
俺は大男の胸板を踏みつけ、ヘッドバンドを巻いた頭に銃口を構えた。
「おい止せ!」
ズドーンッ!

【続く】

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