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カミ様少女を殺陣祀れ!/2話

警告:刺激的なコンテンツ/内容:人体損壊など激しい残虐描写⚠
⚠気分が悪くなった場合は、速やかに閲覧をお止めください⚠
対象年齢:18歳以上/自己責任でお楽しみください⚠

【目次】 / 前回⇒【1話】

武装神主。闖入者たちの風体を一言で表せば、それに尽きる。
優雅な白服と、鈍色の対物ライフル。併存を許されない組み合わせ。
余りに突拍子もない、チンドン屋めいた姿の彼らに、僕は言葉を無くした。
ヤツらは『祝詞』を終えると、もはや問答は無用と対物ライフルを構えた。
どでかい弾を握る『荒神様』……ついでに、僕と爺ちゃんにも。
余りにも呆気なかった。所作はいかにも当然で迷いなく、躊躇がなかった。
イヤちょっと待てよ。本当に、そんなもんで撃――

炸裂音。絨毯爆撃めいた轟音の連続。
僕は咄嗟に爺ちゃんを見つめ、爺ちゃんも僕を見つめていた。
いや僕じゃない。そのスケベに歪んだ顔、もしかして荒神様を見ていた――
爺ちゃんの五体が勢いよく爆散し、僕は勢い良く天井に叩きつけられた。
視界はボールめいて360度回り巡り、次第に重力に曳かれて墜ちる。
一瞬、足元の風景が映って僕は瞠目した。身体が、無い。
時ここに及んで、僕は理解した。
天井まで吹き飛んだのは身体じゃない――正確には、僕の首から上だけだ。

――――――――――

雷鳴めいた銃声の七重奏が古民家を貫き、周囲数km四方まで轟き渡った。
マズルブレーキから噴き出した高圧ガスが、慎ましやかな居間を蹂躙する。
50口径機関銃弾の1発が臨を、1発が丑寅を直撃し、5発が『カミ』に殺到。
血肉の花が咲いて壁や畳を彩り、貫通弾は穴を穿って屋外まで突き抜ける。
バレット・M107CQライフルの銃身が一斉に後退し、空薬莢を吐き出した。

臨の物とも丑寅の物とも知れぬ、天井に貼りついた血と臓物が滴り落ちる。
そして、八頭身黒髪ロング縦ロール少女めいた『カミ』はそこに居た。
腰でまとった衣服は吹き飛び、全き全裸となったほかは変わりない姿で。
アフリカ大型四足獣すら一撃即死の弾頭が、潰れた金属片と化して転がる。
武装神主たちは息を呑み、何食わぬ顔で彼らを見返す『カミ』と対峙した。
「どうした。それで終わりか?」
一瞬の沈黙と、爆音の七重奏。今度は機銃掃射めいて何十発も念入りに。
流れ弾が卓袱台を吹き飛ばし、畳に大穴を開け、壁を砕き柱を穿った。
647グレインFMJ弾が、カミと衝突する度にコインめいて平たく潰れて落下。
雅やかな白服が揺れ、熱く焼けた大量の空薬莢が浜砂のように舞い散る。
そして静寂。弾切れの銃がホールドオープンし、銃口から水蒸気が棚引く。

カミの背後で、弾痕と亀裂塗れの壁が千切れて落ち、甲高い音を立てた。
カミは無傷で欠伸をこぼし、卓袱台の残骸を掻き分けて酒瓶を取り出した。
サントリー・ローヤル60の栓を口で咥えて抜くと、豪快にラッパ飲み。
「げーっぷ。やれやれ、五月蠅いヤツらよのう……騒々しくて敵わんわい」
カミは弾片の山に酒瓶を立て、パチンと左手の指を弾いた。
臨と丑寅。原型を留めない2人の残骸が、ビデオの逆再生めいて復元する。
「ハッ、生きてる!? ……ってうわぁぁぁ! 僕らの家がぁぁぁ!」
「こりゃ~また派手にブッ壊れてるのォ! 修理代が高くつきそうじゃ!」
武装神主たちは、鼻から下を覆う白布の覆面の下で青褪め、総毛立った。

「何ぞ驚くことか。人の命の1つや2つ、生かすも殺すも造作もなし」
カミは手にした酒瓶を呷り鼻を鳴らすと、右手に握った弾頭を指で弾いた。
機銃弾が不規則回転飛翔。武装神主の顔面に横転着弾し、頭部ごと爆砕。
左手のウィスキーを飲み干すと、空の酒瓶を投げ斧めいて投擲。
二人目の武装神主の頭部が爆裂し、空き瓶の破片が散弾めいて飛び散った。
「丁度退屈していたところじゃ。余興を見せよ。わしを楽しませろ」
カミは武装神主たちへ気怠そうに告げると、大儀そうに腰を上げた。
一歩踏み出すと、威圧感が風めいて吹きつけ、武装神主たちは後退った。

カミは首なし死体の銃を掴むと、前蹴りで上半身を血飛沫に変えた。
臓物が飛び散る中、カミは熱く焼けた銃身を素手で握って歩みを進める。
大剣めいて銃の機関部を振るえば、武装神主の上半身と下半身を寸断。
左手で上半身から頭をもぎ取りつつ、くの字にひしゃげた銃を右手で投擲。
対物ライフルがブーメランめいて宙を舞い、武装神主の胸を銃身が貫く。
ドッヂボールめいて首級を投げ、他の武装神主の頭に当てて砕け散らせた。
今一人の武装神主の眼前に駆け寄ると、頭に空手チョップを打ち下ろす。
緩慢な掌は等速を保ちつつ、ジッパーを開くように人体を縦に二分割した。

「うぎゃあああああ!」
最後の一人となった武装神主が絶叫し、銃を放り捨てて縁側から飛び出す。
カミは血塗れで残忍な笑みを浮かべ、足元の対物ライフルを拾い上げた。
宵闇の庭に飛び降り、背を向けて一目散に遁走する武装神主。
カミは鋼鉄の塊めいた銃を抱えると、投げ槍めいて勢いをつけ、投擲。
「ぐぼッ!」
十数メートル先で、武装神主の胸を銃身が貫き、彼はよろめいて倒れた。
「クッハハハ! その程度でわしを殺そうと思うてか……片腹痛いわ!」
カミは縦ロールの黒髪を振り乱し、血塗れの八頭身で誇らしげに叫ぶ。

次の瞬間、闇の森に閃光が迸り、次いで爆発音。何かが高速で迫り来る。
カミはおもむろに両手を伸ばすと、人の腕ほどの飛翔体を掴み取った。
対戦車榴弾が尾部から推進薬の炎を噴き、水揚げされた魚めいてのたうつ。
「ギャーッ! ロケット、ロケット弾!」
臨が叫んで畳に伏せ、丑寅は老人らしからぬ素早さで惨殺死体を被った。
カミが弾頭を裏返して手を放すと、送り主めがけてすっ飛んでいく。
顔面が爛れ落ちるような炎を浴びてなお、少女の美貌は事も無げだった。
視界の前方、森の中で叫び声が轟き、爆音と閃光の後に静けさを取り戻す。

――――――――――

襲撃は始まった時と同じくらい、唐突に終わりを迎えた。
僕らは殺され、生き返らされ。無数の惨殺死体と、荒神様の一方的な勝利。
そして無駄に半壊させられ、血と臓物に塗れた我が家という結果を残し。
「ヒッヒッヒ! 神社本庁特殊部隊のヤツらめ、ザマァ見ろじゃ!」
爺ちゃんは被っていた死体を放り、立ち上がって勝ち誇る。元気だな。
僕も体を起こすと、変わり果てた我が家を見渡して溜め息をついた。
本物の銃に、本物の死体。壊れた家も本物だよな。どうすんだよ、色々と。
「神社本庁? 特殊部隊? こいつら一体何なの? もう死んでるけど」
僕は対物ライフルを拾い上げ、余りの重さに辟易して直ぐに放り出した。

「ノゾムよ。神社の鳥居が、どうして赤く塗られているか知っておるか」
血塗れ全裸の荒神様が、唐突にぐるりと振り返り、凄まじい顔で笑った。
「赤い色は血の色じゃ。殺した生贄の血を塗りたくり、力を誇るのじゃ」
「絶対ウソだ……」
「フン、嘘じゃ」
荒神様は生き血を滴らせ、誇らしげに胸を反らせた。やっぱり嘘かい。
「じゃが面倒ですぞ、荒神様。彼奴等、一度の失敗で引き下がるとは」
爺ちゃんは荒神様に歩み寄ってパイタッチを試み、雑に殺され雑に蘇った。
「退屈しのぎが向こうからやって来てくれるとは、願ったり叶ったりよ」
荒神様は拳を振り抜いて残忍に笑い、武装神主の下半身の残骸を蹴った。
頼むから、これ以上家を汚さないでくれ……掃除するのは僕なんだよ!
この地に住んでいた神様とやらは、どうやらとんだ疫病神だったらしい。
僕は目の前の惨状と、これからの展望に思いを馳せ、途方に暮れた。


【カミ様少女を殺陣祀れ!/2話 おわり】
【次回に続く】

From: slaughtercult
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