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規制緩和 レベル3.5 新設へ ~ドローン配送等の事業化に向けて~

こんにちは。
スカイピーク代表の高野です。
先日、ドローン業界で注目すべきニュースが発表されました。

ドローン「レベル3.5」新設 政府、山間地の物流促す』(出典:日経新聞)

本日は上記ニュースについて、noteで触れたいと思います。


飛行レベルについて

レベル3、レベル4とは

まずおさらいとして、現在存在しているレベル3飛行とレベル4飛行について確認していきましょう。

●レベル3飛行について
「無人地帯における補助者なし目視外飛行」のことを指しており、一般的には海の上や山間部など原則的に第三者が立ち入らない環境下における目視外飛行のことを言います。

レベル3における目視外飛行について、かみ砕いて説明するならば、離陸地点から目で見える範囲を超えて遠くまで自動で物流等の用途で飛行することをイメージしています。(本noteではわかりやすい表現で記載します)なお、その際の飛行航路下には、リスク管理上、第三者といわれる関係者以外の人が立ち入る可能性がない状態になっている場所を想定しています。

●レベル4飛行について
「有人地帯における補助者なし目視外飛行」のことを指しており、都市部を含む、人がいる場所(第三者がいる場所)の上空で、目視外飛行を行うことを言います。

目視外飛行については同じですが、「無人地帯」と「有人地帯」という飛行させる場所のリスクが主に異なるということで、安全管理上より厳格に様々な手続きや、飛行計画や機体、また運航者のスキルなどが求められます。

出典:『無人航空機に係る取組の方向性について(令和5年11月17日)』国土交通省
出典:『無人航空機に係る取組の方向性について(令和5年11月17日)』国土交通省

2023年3月に国内初のレベル4飛行が実現されたことは記憶に新しいかと思いますが、レベル4飛行に限らず、レベル3飛行においても、特に法規制における高いハードル、手続きの煩雑さなどは、事業者の悩みの種として当時から多方面で話題にあがっていました。

新設予定のレベル3.5とは

物流クライシス等の社会課題が迫りくる中で、ドローン物流の社会実装のスピードがなかなか上がりきらない中、先日11月17日に「規制改革推進会議」が開催され、国土交通省がドローンに関する規制緩和に触れ、新たに「レベル3.5の新設」の改革案が年内実施を目標に発表されました。

出典:『無人航空機に係る取組の方向性について(令和5年11月17日)』国土交通省
出典:『無人航空機に係る取組の方向性について(令和5年11月17日)』国土交通省

今回新設予定のレベル3.5は、上記に記載のあるように「飛行ルートに人がいないか監視する補助者等の配置による立入監視措置を一定条件で不要」とするものであり、それによりレベル3飛行における、ドローン物流を中心とした申請等を含む業務実施のハードルが下がることになります。

まさに、全国の関連事業者からの声(要望)が反映された一つの成果であるとともに、「ドローンの社会実装、事業化への加速」への流れといえます。

レベル3.5新設がもつ意味

法的ハードル低下と国家資格の価値向上

この新制度新設の意味について、以下の2点に注目したいと思います。

一つ目は、「法律的なハードルを下げたこと」です。これにより事業化や技術検証の敷居が下がり、事業者の取り組みの加速も見込まれます。

二つ目は「国家資格の有効性の高まり」という点です。

法律的なハードルが下がった部分については、各メディアの報道のとおりですので、今回は国家資格の推進について着目したいと思います。

「国家資格」については、比較対象として、自動車免許を想像いただくとわかりやすいかもしれません。自動車は免許を取得することで、適切な知識と運転技量がある証明となるとともに、車検を通った車体を用いて、交通ルールに則り安全を担保していると考えられます。

一方ドローンは、現時点においては(レベル4飛行を除き)国家資格を保持していなくても航空局等の許可申請を取得することで、多くのケースで運用が可能です。

また、車でいう車検にあたる、機体認証制度も未だ対応している機体はほとんどない現状です。交通ルールについても、法整備が進んでいますが、いまだ発展途上といえるでしょう。

そういった現状においては、国家資格はドローン運用する上で必要ではない、というような声を聞くことも少なくはありません。

実際に、国家資格取得理由の声として、社会的な操縦者の技量の信用面、またドローン業務における営業機会損失の回避(入札等の案件において国家資格保有が操縦者に求められるケースがあるため)ということが、弊社でもお話を聞くケースが多いです。
民間ビジネスにおいて国家資格に対する様々な見解や意向はあって当然だと思います。一方でドローンが新たな産業として社会受容性向上に貢献していく意味において、そして更に社会で一般化していくためには、飛ばす側の目線だけでなく、飛ばされる側の目線も一つ重要であるといえるでしょう。

もしも、
運航責任者が一定の技量があることを証明されておらず、
飛行している機体が、いわゆる“車検”を通過しておらず、
飛行ルールも整備途中の中で、
(すでに対応はじまりましたが)機体の所有者も不明確な中で、

自分の身近を多数のドローンが縦横無尽に飛行していると考えると、皆様も多少なりとも(安全面において)不安な気持ちになるのではないでしょうか。

もちろん趣味利用の範囲での飛行と、いわゆる産業用途は一概に一括りで考えられるとも言えませんし、多くの一般ユーザーにとって厳格化が進むことで、ドローンに関わるハードルがあがることが、利用者拡大に向けてマイナスに働くのではないか、という意見も認識はしています。

それでもなお、産業実装を促進するうえで、
国家資格の担う役割は大きいと考えますし、

だからこそ国家資格自体の価値を高めていくことは、
より多くの方の取得意欲を高め、そして社会受容性向上にも貢献していくでしょう。

今回の新設予定のレベル3.5 については、要件の一つとして『操縦ライセンスの保有』が記載されています。これにより、国家資格を取得する具体的なメリットが新たに追加されることとなり、まさに『国家資格の価値が高まった』と考えられます。

物流など社会実装に向けた期待も

主にドローン物流を想定されていますが、レベル3飛行は必ずしも物流用途のみがあてはまるわけではありません。点検調査・警部監視など、様々な産業分野での自動航行におけるドローン業務利用が加速することが想像されます。

そのような中で、国家資格の価値が今回のレベル3.5をきっかけに高まると同時に、引き続き推進することは、“空の安全を担保”しつつ、実装に向けたスピードも加速することになるといえるでしょう。

必ずしも国家資格がないと飛行ができない現状ではありませんが、次第にルールが確立していき、大手企業を中心とした市場への参入プレイヤーも増え、

その結果で新たな技術や製品、そしてサービスがうまれ、ビジネスも更に活性化することで、ドローンを取り巻く市場にポジティブな変化が起きることを願っています。

産業分野で、安全かつ適切にドローン運用し続けている事業者にとっては、次第に緩和や整備も進み、少しずつですが、前へ進んでいる手応えを感じているのではないでしょうか。

スカイピークとしても、変化の早い業界の流れに適切に対応できるよう、新たなルールを皆さんと正しく理解し、共に活用して社会実装を推進していきたいと考えています。

参考)「無人航空機に係る取組の方向性について」(国土交通省)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_02startup/231117/startup06.pdf