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特許事務を未経験者に教えるのは大変

特許事務所に16年間勤務していた時、何人もの新人教育をしました。
弁理士とか技術者ではなく、事務担当です。

私自身の特許事務経験は入所してから4年間だけです。
特許事務は事務方の先輩に基本中の基本を教えてもらい、あとは独学(ネット検索や本で調べたり、周りの人に聞いたり)で覚えたのと、システム担当など多岐にわたる仕事をしながら実践で覚えました。
独学なので深い知識はないかもしれませんが、新人さん(特に未経験者)に教えられるくらいの広い知識は身についたと思います。

私が実際に新人さんに教えていたのは、出願事務担当をやりながらではなく、所内のデータ整備をやりながら、新人教育担当として教えておりました。
(詳しいプロフィールはまたの機会に・・・)

さて新人さんが入所した時、特許事務経験がある方にはその事務所特有のルールだけ教えればよいので短時間ですみますが、特許事務未経験の方の場合はまず「特許とは」から始めるため、教えるのにも結構な時間がかかります。


特許の流れ

「出願~公開~審査請求~特許庁への応答~登録~年金」まで。
ものすごく簡単に書くとこんな感じですが、国内出願だけではなく、PCT国際出願、外国出願もあります。
個人的には配属されたグループのことだけを理解するのではなく、その後の流れもある程度は理解しておいた方がよいと思います。
米国のIDS提出などには国内出願も大いに関わってくるのですから。

特許未経験者にとっては一度にすべてを覚えるのは至難の業だと思いますし、あれこれ詰め込みすぎると嫌になってしまいがちです。
ですので、教えるにあたり、正確に教えるだけでなく、少しでも興味を持ってもらえるように説明することも重要かと思っています。

特許用語

大体の流れを理解できたとしても、未経験者(特に、法律に関わったことがない人)にとって、用語を理解することは大変だと思います。
私も初めはちんぷんかんぷんでした。

独特の用語がたくさん!

優先権主張、みなし取り下げ、包袋、引例、拒絶理由、書誌的事項、ファミリー・・・などなど。
(私が知らなかっただけなのかもしれませんが/笑)
「包袋」などはパソコンで普通に変換すると「包帯」と出てきますしね。
「拒絶理由」についても、初めて聞いた時は「”拒絶”とまで言う?!」と思いました。
でもこれらは覚えるしかないですね。

事務所のルール

特許事務所だけでなくどの企業でもその企業内のルールというものがあると思います。
ファイル(紙書類、電子ファイル)の保存場所は各グループによっても違うと思いますし、PDFファイル名の付け方など、細かいルールも存在するでしょう。

細かいルールと言えば、こんなものも。

整理番号の付け方

顧客から出願依頼を受けた(受任した)時、まずは事務所整理番号を付けると思いますが、その整理番号の付け方にもルールがあると思います。
国内出願、PCT国際出願、外国出願でそれぞれのルールがあり、さらに、顧客(出願人)ごとに略語となるアルファベットを付けたりします。

私が勤務していた事務所の先輩がこんなことをおっしゃっていました。
「このグループの整理番号は、その番号を見ただけでどんな出願かが分かる!」
”どんな出願か”というのは、出願ルート(パリ優先かPCT移行か)や担当弁理士、国などを意味します。

個人的には整理番号にはあまり意味を持たせない方がよいと思っていますが、それについてもまたの機会に書きたいと思います。

まとめ

私が勤務していた事務所では人の入れ替わりが激しかった時期がありました。
ベテランの先輩事務担当がご自身の仕事をしながら新人教育もされていたので、それはそれは大変だったのと、所内のルールがたくさんあって覚えきれない新人さんはミスも多くなり、いつしか辞めていく・・・という悪循環でした。
先輩事務にしてみたら「せっかく教えたのに、また一から・・・」となりますし、仕事のモチベーションもあがりませんね。

手前味噌ではありますが、私が新人教育していた時(3年ほど)は人は辞めずに定着していました。
私の教え方がよかった・・・というより、新人教育専任で教えていたので、ミスなく仕事をするための細かい説明ができていたのだと思います。

それだけ「教える」という作業は大変です。
私のように専任の新人教育担当者がいれば新人さんにとっても、先輩事務担当にとっても、楽になるかもしれませんね。