見出し画像

意識「他界」系 その41

時代の流れとともに組織も変わる。警察庁公安部がマークしている団体においてもそれは同じであった。極左暴力集団、右翼団体、政治組織、特殊組織、外国政府による工作活動などなど。中にはその活動が年々縮小している団体・組織もあり、それに応じて公安部も人員削減を行っている。

その余剰人員で新たに作られたのが「公安第一課 第五公安捜査:第8係」である。正式な名称は「いずれの団体にも属さない、危険人物及びグループの情報収集」という長ったらしい名前が付いているが、口さがない連中からは「何でも屋」などと蔑称で呼ばれていた。

新設された組織であり人員も流動的であることから、同じ部署にいながら交流の無い人間も相当数いた。橋爪真一にとって、今喫煙スペースで一緒に煙草を吸っている女も、殆ど話したことがなかった。

乱堂美姫---年齢不詳、アラサーくらい? 身長175センチ、刑事とは思えないほど胸元の開いた白のブラウス。色黒の肌と大きな濡れた瞳、大きな口元。この場違いな感じの派手すぎる美女には、公安内でも色々な噂があった。「対象人物から100%情報を引き出す、凄腕のハニー・トラップ要員」だとか「ボールペン1本あれば人を殺せる暗殺者」だとか「父親の分からない子供がいるシングルマザー」だとか。

橋爪は乱堂美姫の胸元が気になって仕方がなかったが、それでも何とか電話で移川民子に調べたことは伝えた。藪坂の自殺、彼の家に出入りしていた安西萌と、隣室の住人である細貝法子の奇行、それと禁書は無事回収されたことなど。

「仲がいいのね、相手は誰? あの田舎臭い処女っぽい女?」唇の端だけ上げて皮肉っぽさを5割増しにしながら、乱堂美姫が煙を吐き出した。

「色々噂は聞いてるけど、口の悪い女だってのは当たってるんだな」橋爪が精一杯の皮肉を返す。

「まあ他も大体当たってるけどね…彼女のために調べものして偉いのねボクちゃん」

「たまたま用があったから署に寄ってたところに電話があったってだけだ」

「でも、言いなりになって色々調べてあげた。あんな華の無い小娘に無駄な労力。バカみたい。まあ、そのうちお互いのオマタが舐められる仲になれるとイイわね」そう言って乱堂美姫は煙草を揉み消すと橋爪に背を向けた。

「お前な---」喫煙ルームのガラス扉を開ける彼女の後姿は、色んな意味で橋爪を絶句させた。一つはその傲慢過ぎる態度による怒り、もう一つは黒いタイトのミニスカートから伸びた美しすぎる足。細すぎるくびれに対して煽情的な腰回り。見られていることを意識してか、乱堂美姫は腰を一度振ってから止め、左手を腰に付け、小首を傾げてから橋爪を振り返った。

「あ、それとイイこと教えてあげる。その彼女が追いかけてる『怪物姿の通り魔事件』。今さっき渋谷の地下街でも起こったみたいよ」



※ 思い付いたまま書いているので、時間軸がおかしく成ってしまいました(特に24話あたりから)。ほぼ同時進行で起こっているエピソードということで時間のある時に修正していきます。読んで下さった方、誠にスミマセン。。。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?