クラバート ユーローの生存戦略

プロイスラ―作の長編小説、「クラバート」。
かなり面白かった。
小学生の時にはまった「大どろぼうホッツェンプロッツ」シリーズと同じ作者ですが、こちらは大人が読んでも普通に相当面白い。

魔法も出てくるダークファンタジー的なお話で、死のイメージがつきまといつつ話が進みますが、最後はとっても気持ちよく終わるので、そこも良かったです。表紙も、絵もおしゃれで素敵。

本筋も申し分なく面白いですが、私が特に気になったのがユーロ―の存在。
「まぬけのユーロ―」として最初は描かれていたものの、実はそれは全部演技。本当はびっくりするほど賢い。能ある鷹は爪を隠す。
クラバートは「まぬけのユーロ―」の仮面の下の知略家ユーロ―に助けられていたのね。

物語の舞台の水車場では、毎年誰かが死ぬ。
死と隣り合わせの日々の中で、「まぬけ」の仮面をかぶることが、ユーロ―の生存戦略。

周囲にバカにされ、あらゆる相手を油断させる。
その「まぬけ」の仮面の下では、親方に不利になるような魔法が記された魔法典を読んでいる。水車場の独裁者である親方以外は、誰一人読めないはずの魔法典。それを読むことができる環境を、自ら作り出している。

「まぬけ」のユーロ―のなんと知略に長けたことか!
感銘を受けました。

児童文学として、思春期の小中学生が読むならば、
同調圧力の強い画一的な日本の学校社会を生き抜く
生存戦略としても機能しそう。

我が子には、クラバートのように真っすぐ生きてほしい。
一方で、ユーロ―のような生存戦略もあるのだよ、という示唆も含ませ、
子が小学校高学年になったら買い与えたい本だな、と思うのでした。

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