黒野伸一

2005年に小学館きらら文学賞を受賞し、小説家デビューしました。「限界集落株式会社」「…

黒野伸一

2005年に小学館きらら文学賞を受賞し、小説家デビューしました。「限界集落株式会社」「長生き競争!」「万寿子さんの庭」(すべて小学館)「AIのある家族計画」(早川書房)「底辺キャバ嬢家を買う」(光文社)など。近著は「あした、この国は崩壊する」(Live Publishing)

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  • 新人賞を取って小説家デビューするまで

最近の記事

マインドフルネスと猫のいる生活 24

年を取れば取るほど、時間が早く過ぎるような気がするのはなぜでしょうか? わたしが「もう年だな」と感じ始めたのは、23歳の時からでした。22歳はギリギリ若者(子ども)で、これからは社会人(大人)として生きていかねばならんのだ、と、ちょっと嬉しいような、怖いような、寂しいような気分になったことを、よく覚えています。 そして、あれよあれよという間に25歳になり、巷では「25歳は女の肌の曲がり角」などというコスメの宣伝文句が流れていて、女ではないのですが、何やら焦った気分になりま

    • マインドフルネスと猫のいる生活 23

      マインドフルネス瞑想を始めてから、様々な関連本を読みました。初心者向けの本は、やはり「俗」な発想から書かれていますね。 別に俗が悪いと言っているわけではありません。「うつな気分を何とかさせたい」「心身ともに健康でいたい」「物忘れを無くしたい」「頭がよくなりたい」……。 これらは、人として自然に湧いてくる願望です。しかし瞑想をしているうちに、だんだん自分という存在がちっぽけなものに思えてきます。「我欲」は無論必要ですが、もっと大きく大切なものがあることに気づくからです。

      • マインドフルネスと猫のいる生活 22

        知り合いの住職によれば、瞑想をやり過ぎると統合失調症や自律神経失調症に罹患するリスクがあるとのこと。これは俗に禅病と呼ばれています。 もうひとつの弊害は、魔境に入ってしまうことだそうです。瞑想をやり続け、恍惚状態になると、何かを見ることがあるらしいですね。それが仏だったり、宇宙と一体化した自分だったりすると、「悟りを開いた!」と勘違いし、カルトなどに走ってしまう行為のことを、「魔境に入った」と表現しています。 臨済宗の開祖は、修行僧たちが魔境に踏み込んでいくことを防ぐため

        • マインドフルネスと猫のいる生活 21

          ところで瞑想には二段階があるそうです。 第一段階は、雑念をひたすら俯瞰している、実践瞑想。これは、まだ深い変性意識に入り込む前の状態ですね。そして、第二段階が雑念が取り払われ、深い変性意識状態にいる境地瞑想。 境地瞑想に入ってからも、雑念は起きますから、げに人間というのは下らん考えから逃れられん生き物なんやなー、と思います。 瞑想のやり方もたくさんあるようです。最初にやってた、ひたすらマントラを唱える「サマタ瞑想」をそろそろ卒業したいと思っていたわたしは、程なく、レッテ

        マインドフルネスと猫のいる生活 24

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        • 新人賞を取って小説家デビューするまで
          7本

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          マインドフルネスと猫のいる生活 20

          普段ですと、夜明け前、朝の四時ごろになると、強烈なうつに苛まれます。経験者なら、わたしの言っていることがわかるでしょう。一日のうちで、一番暗い気分になるのは、朝でも夜中でもなく、太陽が昇る少し前の時刻です。 それが、瞑想を僅か7~8分やっただけで、みごとに払拭されました。 単なる気分の問題と言ってはそれまでですが、たとえ自己催眠的なものだったとしても、うつを引きずらず、スッキリと起床できたことは嬉しかったです。 瞑想をすると幸福ホルモン・セロトニンの分泌が盛んになるそう

          マインドフルネスと猫のいる生活 20

          マインドフルネスと猫のいる生活 19

          きっかけはよく覚えていないのですが、おそらくネットの記事だったと思います。 「マインドフルネス」という単語が目につき、いったいナンだろうか? と調べてみたのです。平たく言えば瞑想でした。瞑想は「メディテーション」だとばかり思っていたのですが、西洋的に本質を表そうとすると、マインドフルネスという言葉のほうが、しっくり来るようですね。 その頃ちょうど「ファクトフルネス」という本を読んで感銘を受けていたこともあり(あまり関係はないのですが)こっちのフルネスのほうも、もう少し調べ

          マインドフルネスと猫のいる生活 19

          マインドフルネスと猫のいる生活 18

          17で父の脳梗塞に触れましたが、別にぶっ倒れて救急車、というわけではなかったのです。ある朝、言葉が少しおかしいことに気づいて、「とにかく医者に行こう」と言ったのですが、本人は大丈夫と譲りませんでした。 しかし、午後になって益々言語が不明瞭になりました。ろれつが回らないというより、単語が出てこないようで、会話が成り立たないのです。もう、強制的にかかりつけの診療所に連れて行きました。89歳ですから、何があってもおかしくない。 父は、待合室で雑誌を読もうとしていたのですが、内容

          マインドフルネスと猫のいる生活 18

          マインドフルネスと猫のいる生活 17

          16で、わたしの身にも何か起きるような書き方しましたけど、まあ起きましたね。でもそれを細かく書く勇気はまだないことに、気づきました。(-_-;) 一つだけ言えるのは「死を覚悟した」ということですかね。 とはいえ、今から思えば、自分の人生の中で一番おだやかな時期でした。だって、じたばたしたってしょうがないし、細かいことは考えず、一日一日を大切に生きてました。不思議なことに、不安はなかったです。瞑想こそしていなかったものの、今から思えば、正にマインドフルな生活を無意識に行って

          マインドフルネスと猫のいる生活 17

          マインドフルネスと猫のいる生活 16

          15で、何か作家志望者を暗い気持ちにさせるようなこと、書いてしまったような気がしますので、加筆しますね。 兼業と言っても、スクールで小説技法を教えるとか、テレビやラジオに出演するとか、講演で稼ぐとか、そういうのもありますから(わたしはあまりやっていませんが)。つまり、作家ならではの兼業ができるってことですね! さて、このように作家生活を始めましたが、会社員時代と違い、金銭的には不安定な時期が続きました。 相当力を込めて書いた作品がまるで話題にならず、肩の力を抜いて、てき

          マインドフルネスと猫のいる生活 16

          マインドフルネスと猫のいる生活 15

          文学新人賞受賞は末期がんの告知と同じ、と言った作家がいました。5年後の生存率が、10%くらいだからだそうです。 生き残りのパーセンテージには諸説ありますが、実際のところ、受賞作しか書けず、ドロップアウトしてしまう作家は結構いるみたいですね。 三作目にギブアップ、という人も多いようです。処女作は自分の体験を題材にし、二作目も別の体験をテーマに書き、三作目にはもう体験が尽きたから、0からフィクションを書こうとするも、これが案外難しいことに気づくといいます。二作目までは、主人公

          マインドフルネスと猫のいる生活 15

          マインドフルネスと猫のいる生活 14

          ノンプロット小説。最初は怖かったけど、慣れたら「案外この方法、自分に合ってるかも」と思うようになりました。 ノンプロットが怖いと思うのは、「面白いもの、書かなくちゃいけない! (; ・`д・´)」ってプレッシャーを自らに与えているからだと思います。 「こんな、場当たり的に書いたものが、本当に面白いのか?」「起承転結ができているか?」「ちゃんと着地してくれるのか?」等々。様々な不安がありました。 暗く長いトンネルに、懐中電灯も持たず、裸で放り込まれたような感じで、頼れるの

          マインドフルネスと猫のいる生活 14

          マインドフルネスと猫のいる生活 13

          12の続きです。 そもそも、作家って、うつっぽくなきゃ続かない職業じゃないんですかね? もしあなたが、友だちがたくさんいて、アウトドア派で、悩みなんてビール一杯飲んだらカラッと忘れてしまうタイプなら、作家なんて仕事はお勧めしません。 何しろ一日中引きこもって、空想の世界をさ迷わなければならんのですから。その空想世界も、すべてバラ色じゃマズいわけで、意地悪なやつとか、挫折したやつとか、この世に希望を見い出せず、無理心中を図るやつとか……(-_-;) こういう人たちがいないと

          マインドフルネスと猫のいる生活 13

          マインドフルネスと猫のいる生活 12

          11の続きです。 本屋で、賞を募集している文芸誌の隅から隅まで確認しましたが、「一次通過者」の中に自分の名前はありませんでした。 大きくて冷たい鉛をのみ込んだように、胃が重くなりましたね。その日の晩は、ほとんど眠れなかったことを覚えています。 それから三日ぐらいはグダグダしていたのですが、突然「下読みの人がセンスなかったんじゃね? 別の出版社に送ってみよう」と思いつきました。 同時期に一作品を複数の賞に応募するのはNGですが、落選の通知を受けた後で別の賞に応募するのは

          マインドフルネスと猫のいる生活 12

          マインドフルネスと猫のいる生活 11

          10の続きです。 作家になるためにはどうしたらいいか? 調べてみました。当時はネット発の書籍など、まだ稀な時代。名の知れた出版社の文学新人賞を取って、デビューするのが一般的でした。文学新人賞は小説に対して与えられますから、わたしにとって、作家デビュー=小説家デビューということでしたね。 ノンフィクションやルポに興味がなかったわけではありませんが、そういったものは、ジャーナリストとして経験を積んだ人が書くのだと思ってました。 ものの本によれば、作家デビューするためには、新

          マインドフルネスと猫のいる生活 11

          マインドフルネスと猫のいる生活 10

          さて、そろそろ何でマインドフルネスを始めたか、書きたいと思います。 まあ一言でいえば、うつが原因ですね。( 一一) ティーンの頃、うつだったのですが、それは学校が面白くない、クラスメートと馴染めない、将来が不安といった「極めて典型的な思春期の悩み」が原因で、ホント自殺なんかしなくてよかったと思ってます。( `ー´)ノ だって、友人関係なんてどうとでもなるし、学校なんて何十年も行くわけではないし、将来が不安なのはみんな一緒ですものね。 若い大人(表現変ですか?)の頃は、結

          マインドフルネスと猫のいる生活 10

          マインドフルネスと猫のいる生活 9

          そろそろ、わたしがなぜマインドフルネスを始めたか書こうと思っていた(おせーよ)のですが、今朝いきなり気になることが頭に上ったので、忘れないうちに記しておこうと思います。 男女平等について。例えば政治家や管理職を選ぶ際、性差に関係なく実力で選ぶことだと思っていました。 この考え方ですと、優秀であれば政治家や管理職全員が女性だってかまわないし、逆もしかりです。 ところがフランスのパリテ法などを見ると、選挙の候補者は男女同数でなければいけない。政治だけに限らず、一般企業の管理

          マインドフルネスと猫のいる生活 9