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#フィクション
犬は死なない犬死にの歌
センパイは吠えた。低く短く、人間も本気で犬の吠え真似をするとこんなにも似るのだなあという迫真の『バウ』であった。そうして通りすがりの犬に怯えられていた姿を、僕は曲がり角の影で目撃していた。明るい満月の夜だった。犬に逃げられたセンパイの背中は、妙に物悲しそうに曲がっていた。しかし、センパイと犬にまつわる接点といって思いつくのはその程度だ。今夜、センパイから話しかけられるまでは。
「犬が死ぬ歌って
センパイは吠えた。低く短く、人間も本気で犬の吠え真似をするとこんなにも似るのだなあという迫真の『バウ』であった。そうして通りすがりの犬に怯えられていた姿を、僕は曲がり角の影で目撃していた。明るい満月の夜だった。犬に逃げられたセンパイの背中は、妙に物悲しそうに曲がっていた。しかし、センパイと犬にまつわる接点といって思いつくのはその程度だ。今夜、センパイから話しかけられるまでは。
「犬が死ぬ歌って