見出し画像

【不定期雑記 #32】『カオクズレ』ライナーノーツと、#空色杯 に参加してみてのまとめ

 どうも、透々実生です。

 自作のライナーノーツを書くのが最近楽しいんですよね。そんな訳で、VTuber・天野蒼空さんの個人企画、空色杯に投稿した『カオクズレ』のライナーノーツを書こうと思います。
 まだお読みでない方はまず下記リンクよりどうぞ。面白いと評判です。主にB級的な意味で

 ではいきます。ネタバレ上等という型破りな方も迎え入れてやりますとも。



・発想元
→元々企画の内容が、示されたAI生成の絵から物語を5,000字以内で作る、というものです。で、お題が下記のイラストでした。

 夕暮れの生まれ育った街を笑いながら駆けていく3人の女の子。エモいですね。ここから物語を作る、というのが主眼なのですが、私は一番後ろの女の子がAI生成絵ゆえに崩れているのに着目しました。
 そういう怪異と女の子が仲良くする話でも書こう! それが全ての始まりでした。それがどうしてあんな結末に……!(作者は私)
 なお、他の方は真正面からこのエモさと尊さを書かれた方が多かったですが、私は「こんな風景だってあったのにね……どうしてあんな事に……」みたいな書き方をしました。ひねくれすぎ

・カオクズレの元ネタ
→このお題にもあるカオクズレは、言わばドッペルゲンガーを翻案したものです。福笑いのように顔のパーツがバラバラに崩れている怪異で、ある標的を定めてその顔になり代わり、その元となる標的を殺す。その理由は友だちが欲しいから。そのために、素性を隠して人間に近寄り、油断した所を襲って殺し、友達を増やす。
 この設定については、この小説を書く直近に読んだ『異類婚姻譚』の影響を多大に受けています。元となるこちらの小説(芥川賞受賞作!)は夫婦関係の妙を、怪異を交えて切り込んだ斬新な小説なのですが、その中に出てくる「気を抜くと顔が崩れる怪異」というものだけをそのまま引っ張ってきました。なお、こちらの本、斬新さで言うと結構面白いので、気になる方は是非。

・全編通して意識したこと
 上記のカオクズレの性質――即ち、成り代わった表の顔と怪異という裏の顔という二面性を目一杯活かそうと思い、セリフや展開に対して表の意味と裏の意味の二面性を持たせることを意識しました。
 本編でも言及しましたが、日記は女の子が書いたものとも怪異が書いたものとも捉えられますし、主人公の行動もそうですし、登場者のセリフ一つ一つにも同じ仕掛けを施しています。それも含めて一部は解説しようと思いますが、他にも色々混ぜているので、気になる方は是非探ってみて下さい!

・日記
2通りに読める日記なんてめちゃくちゃ書くの大変でした。2度と書かねえ! と思いながらやってましたがとても楽しかったのは事実です。
 小学生が書いているので、小学生が習うであろう漢字以外はひらがな表記にしています。もし指導要領が変わっていたりして範囲外の漢字がありましたら、まあ、そこはご愛嬌ってことで……!

・「あ、お母さんが下で呼んでる。」
→「ごはんよー!」と母親によく呼ばれていた……なんて情景を思い起こしながら書いていました。皆さんにも経験はありますでしょうか?

・「相手が誰であれ、仕事はキチンとこなす。」
→そう、相手が誰であれ……。
 これを書いた時は大体どうするか最後の展開は決め切った様に思います。が、短い文字数でかつ面白く物語をまとめ上げるのには苦労しました。が、空色杯で少しはそういう癖といいますか、ちゃんとした意識はついたかな、と思います。

・「相手が怪異であれ、結果的に楽しく遊べれば友達同然――そしていつの間にか怪異に呑まれ、周りを混沌に陥れる。ホラーでは良くある話だし、危機感の欠如した子供にもまた、よくある話だ。」
→これが割と根幹であり、そして話の最後にも繋がってくる部分になります。

・「おじさんもお友だちになろうよ! そしたらクズレちゃんのさいしょの大きいお友だちだよ!」
→「大きいお友だち」は普通は蔑称の意味合いが強いですが、本当の意味を知ってか知らずか、この文脈で少女本人が純粋に言うと少し和らぐ……のだろうか? ちなみに本来的な意味は下記参照のこと。

・蒼空蓋羽
→しげぞらふたば。フタちゃん。画像の中の2番目の女の子です。真面目な優しい子――なはずなのですが、登場シーンは日記の中の回想シーンのみ。なお苗字の「蒼空」は勿論狙ってやってますが、割といい名前になった気がします。

・「十字唇は回転する。」
勿論狙って書きました。笑えよ!(当の本人は命の危機なので全く笑えません)

・「何で、僕がオカルト記者か何かだと思ったんだい?」
→二面性を持たせる、というより、「今まで記者だと匂わせておいて実は……!」というのをやりたかっただけです。ここを皮切りに、これでもかとどんでん返しをやりまくります
 どんでん返しがかなり多くなったな、と思いつつ、うまく話として接続させ、読者を置いてきぼりにしない様、意識しました。それが結果的に皆さんに楽しんで頂ける事に繋がったのかな、と思います。

・「お前、退魔師か!
→怪異とのほのぼのハートフルストーリー→ホラー、と続いていたのに、突如祓師バトルが始まります。展開にもどんでん返し的な要素を含めてます。
どうしてこうなった!?」「今まで読んでいたハートフル(orホラー)ストーリーはッ!?」という声をかなり頂きましたので、私としては大成功です。いえい。
 あと、ここから連戦が続く訳ですが、5,000文字にここまで詰め込んだのも頭がおかしいと褒めて頂きました。……褒められてますよね?

・「顔のパーツが全て沈んで消える。のっぺらぼうの中央を横切る様に亀裂が入り、上下に大きく開かれた。中には鋭利な牙が生え揃う。」
→多分これ、実際に目の前にしたらめちゃくちゃ怖いと思います。ちゃんとしたホラーもやっています。

・「夕陽を逆光に、無数にも思える人影が立っていた。あまりに多いので影が溶け合い1つの生命体になっているかの様だ。」
→このラストシーンはイメージした映像があります。カオティックメタルバンド、アイリフドーパの『White Sun』のMVラストシーン(というかサムネイルのそれ)です。どっから着想得てるんだ。ちなみに曲は、この小説同様はちゃめちゃな展開で聴くものを楽しませてくれます。ぜひ。

 というより、こういう系統の音楽を沢山聴くから複数要素を纏める作品を幾つも作ってるんだろうなと思います。これがバチッとハマったときは滅茶苦茶気持ち良いです。ええ。


 ライナーノーツは以上で、以降は後日談的な話。
 空色杯では無事に視聴者投票賞を獲得しました! わーい! 投票頂いた皆様、ありがとうございました!

 更にこうした嬉しい感想も頂きました。ありがとうございました!

 ちなみにこれで、空色杯全8回の内参加した3回全てにて、何かしらの賞を頂けた(内2回は大賞!)ことになります。快挙! まさかここまでになるとは思いもしませんでしたので、自分が一番ビックリしてます。
 実際、この企画に参加させて頂きまして、与えられたお題をいかに面白く(エンタメとして)、そしてコンパクトに書くか、というところが少し鍛えられたと感じています。
 これは割と確かな実感で、5,000文字という枠内で物語を綺麗に収める、というのは中々に難しい。しかもその中で楽しませなくてはならないとなると、核となる部分を定めて、そこに集約する様に周りの情報を制御する、ということが必要になると感じます。この制御というのが、「必要な情報は残し、不要な情報を捨てる見極め力」みたいなものが必要になると思います。その中で特に意識した軸は、きちんと言語化すると、「今書いている情報は、後の展開でちゃんと活かされるか?」と、「その情報を切り捨てると、最後に迎える面白さが半減することはないか?」ということです。
 特に二つ目は、情報の積み上げが上手くいっているか? とも言い換えられると思っています。例えば「積み木でお城を作ろう!」となった時に、土台となるべきピースがないまま積み上げ続けると、きちんと城として完成せずガラガラと崩れ落ちてしまう、というようなイメージです。奇跡的なバランスを取って上手く崩れずに済む場合もありますが、そのやり方がいつも上手くいくとは限りません。きちんと、「後の面白さに繋がるための情報か?」ということを精査しながら書いていくことが大事なのだと思います。まあそれが毎回できれば苦労はないんですけどね!
 これについては、私は『株式会社マジルミエ』という漫画で学びました。マジで面白いですし、情報の積み上げ方、という意味ではお手本のような作品だと思いますので、皆さん一度は読みましょう。怪異を倒す魔法少女が職業の一つなった世界で、就活がうまくいかない少女がある才能を買われて魔法少女として成長していく――という、お仕事×ファンタジー作品です。
 下のリンクから冒頭を試し読みできますので、気になる方は是非。

 そんなこんなを血肉にし、過去の空色杯で大賞を獲った私の作品も載せておきます。テイストが全く違うので、気になる方は是非。


 では、こんなところにしておきましょう。
 空色杯は、私生活が忙しいのと、書きたい連載小説の続きがあるのと、物理書籍の推敲作業とがあるので、暫く私は参加できそうにありません。
 が、この記事を読んで下さっているそこのあなた! ぜひチャレンジしてみませんか!
 間口は広いのでどなたも参加頂けますし、全作品必ず感想を貰えます。更に腕試しにもなるし、で良いことづくめです。下記に募集ツイート(ポスト)を載せておくので、ぜひお気軽にご参加頂ければ……!(下の第9回は9/20締切です!)

 では、以上です。
 また縁が合ったらお会いしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?