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[Food for Well-being Survey解説シリーズ] vol1. 今なぜFood for Well-beingなのか

はじめに

私たちは2019年から「Food for Well-being Survey」という生活者調査を実施しています。初年度は日本、米国、イタリアの3か国、翌2020年にはアジア3か国(中国、タイ、インドネシア)を加えて6か国を対象に調査を実施。その後も定点観測を続けています。まさにCOVID-19パンデミック前、パンデミックのピーク時、パンデミック終息期、という激動の3年間だったわけですが、かなり面白いシグナルが浮かび上がってきています。
[Food for Well-being Survey解説シリーズ]では、この調査について、これまで何が分かってきたのかについて解説していきます。

今なぜFood for Well-beingなのか 

そもそも「Food for Well-being」とはどういうことでしょうか。
「ウェルビーイングを実現する食」と言い換えることもできますが、今なぜこの概念が注目されているのでしょうか。

2017年、私たちがSKS JAPAN(食xテクノロジーをテーマにしたカンファレンス)を日本初開催した際、予防医学者の石川善樹氏は食領域において「料理や買い物など、時短や効率を追究した結果、人々はどういう状態に陥ったか。それは肥満だ。」と述べました。加工食品が増え、調理家電が普及し、技術が「時短」や「効率性」を実現した結果、人々が時間を費やしたのは「おやつを食べながらテレビを見ること」であったと。米国は1980年以降、肥満人口が増え、生活習慣病に苦しむことになっていきます。今後フードテックが進化すればするほど、生活習慣病患者が増えることになってしまったとしたら、こんなに本末転倒なことはありません。

こんな話もあります。SKS JAPANの参加者で冷凍食品事業に関わっていた方がおっしゃっていました。「メーカーとしては凄まじい味の追求と徹底した安全安心の品質管理の元に冷凍食品を製造しているが、冷凍食品って使うとお客様自身が罪悪感を感じる商品なんです」確かに、冷凍食品に紐づく印象として、「手作りではない」「超加工品」「添加物が多そう」といったものがあり、冷凍食品=料理をさぼっているといった印象があることは否めません。冷凍食品に限らず、レトルト食品等様々な加工食品には、個人・家庭によってポジティブもネガティブも両方の価値観が存在していると言えるでしょう。
その瞬間においては出来るだけ短時間で美味しいものを食べたいというニーズがある。その裏側で、時間をかけて料理をちゃんとしたいというニーズもある。フードテックを考えるときには「その瞬間のニーズを満たすこと」だけではなく、例えば長期で見たときの健康面での価値や、体験として自身が納得できるかどうかなど、多面的なニーズを捉える必要があるわけです。

テクノロジーは往々にして、「効率性」を実現することは得意ですが、「自動化」することによって、人間側が考えなくなったり、「時間をかける」ことの楽しさが奪われたりもしてしまう。食の多面的な価値を捉えなければ、「フードテック」は意味のないものになってしまう。

では、食にはどのような価値があって、人々はどのような価値観を持っていて、テクノロジーはどのように寄与していくべきなのか。そんなことを捉えようとして始めたのが「Food for Well-being Survey」です。

次号では、この調査がどういう調査なのか見ていきたいと思います。


(Written by Akiko Okada)


参考リンク

SKS JAPAN2022セッションアーカイブ
Day2 ”Food for Well-being”をどう理解すべきか/The State of Food for Well-being

フードイノベーションの目的として重要な、ウェルビーイングの概念。食に限らず、ウェルビーイングは様々な領域で語られるようになった。私たちはこの概念をどのように理解し、ビジネスに実装することができるのか。ウェルビーイングの研究に取り組む石川善樹氏に話を伺う。