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やはり君のWebtoon計画はまちがっている。

『大人の事情で立場上言えないことがあるから匿名で言っちゃうアカウント』でお馴染みになりたい、漫画家やったり脚本家やったり出版社にいたり、業界のすみっこで生きてるおじさんです。はい。

この記事は…
引き続きなんだか盛り上がっているWebtoon関連のお話について、おじさんが個人的な意見をつらつら書いて自己満足するというnoteです。どうか優しい気持ちで見守ってあげてください。

あと、勝手にパロディしてるので挟ませて頂きますが、みなさん俺ガイルはいいゾ。買ってたも。

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今までのnoteは、できるだけ客観的に事実ベースであれこれ話をして、そういった情報をもとにクリエイターの方々には意志決定をしてもらえたら嬉しいなという感じで、あくまで活動のサブオプション的なものを書いてきたのですが、

今回のnoteは、おじさんの個人的な主観満載の内容になる予定です。
何故かというと、さすがにちょっと色々な会社がWebtoonに参入し過ぎている状況で、盛り上がる事それ自体はまあ良いとしても、おいおいちょっとそれはどうなんだいっていう会社さんも多々お見受けしたり、

お金儲けを全面に出しつつ、Webtoonとか良く知らないけど儲かりそうだからやりますみたいな会社さんもいて、立場的にそういう会社さんとコミュニケーションする窓口になったりも増えてきたので、ストレスが凄くて、もう、おじさんの髪の毛がどんどん抜けていくみたいな日々なのです。
(そういう企業さんと協業しましたって話ではなくて、相談に乗らないとな事が増えてるっていう話)

なので、

お前ら、やりなおしだぁぁぁぁぁl!!!!!!

https://www.toei-video.co.jp/special/op_filmz/

って言いたくなったおじさんの、自己満足のnoteです。はい。
(偉そうな立場で業界にどうこう言えるような人間ではないので、ほんとに自己満足です。おじさん、最近仕事辛かったんだなあって優しく見守ってあげてください。)

ということで、以下、本文はじまります。
ざっくりな構成としては、「初歩的なIPビジネスの話」→「ちょっと踏み込んだ話」→「締め」みたいな感じです。

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WebtoonはWebtoonなんだと思うよ。

大前提として、Webtoonを過小評価をしたいわけではないですし、私も出版業界ですみっこぐらししている中でまさにWebtoon含めて色々とプロジェクトに関わらせてもらっているので、Webtoonについては相応に可能性がある市場だとはおもっていますが、

Webtoonは別に、それ自体がお金を無限に生み出す魔法の杖ではないわけですよ。TAMがあるんです。天井があるんです。ポジションがあるんです。

そもそもの話なんですが、漫画ってなんなんでしょう。
なんでこんなに長く続いている産業になっていると思いますか。

それは、IPビジネスという大きな経済圏の中で、「種」となるようなポジションの産業なので、これほどまでに投資が活発で、沢山のタイトルが生まれているという背景があるとおじさんは思ってます。(他にも理由は沢山あるけども)

以下の図は、ざっくり主要なマネタイズモデルを可視化したものですが、

0から作ったIPを、それぞれのセグメントと掛け合わせて「IPの価値を最大化していく」というのが、IPビジネスの本質だと思ってます。

つまり、漫画というのは、それで完結のビジネスではなくて、IPビジネスの経済圏における1つであり、漫画家というのは大きな経済圏の中の1つのポジションで生きているという話です。(別に優劣をつけたいわけではないよ)

それで、この経済圏の中で一番大きいのは何かというと、「ゲーム」です。

具体例として、これはバンダイさんのIP別売上データですが、

https://gamebiz.jp/news/295560

各IP凄い規模ですが、中でもドラゴンボールは、連載開始からこれだけの年数がたっても、年間1500-2000億円くらいの売上をたたき出しているわけで、ドラゴンボールの漫画の売上と比較するとケタ違いの売上規模です。
(ドラゴンボールの漫画の売上を揶揄する意図は全くないです)

(ドラゴンボールの漫画の売上を揶揄する意図は全くないです。大事なので2回言いました。)

他にも、話題の「原神」なんかは、累計4000億円とかになっている状況でして、

http://corp.mihoyo.co.jp/

ゲーム凄いですよね。はい。

ゲームの次点としては、映画とかアニメの興業・配信権ビジネスとかがあります。アメコミのスパイダーマンNWHとかは全世界興収2000億円超えてたりします。

「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」
(C)2021 CTMG. (C) & 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

規模で比較すると、ゲームがあって、その次に映画とかアニメとかの興業・配信権ビジネスがあって、その次に舞台・イベントとかがあって、みたいな感じで、IPビジネス経済圏全体として考えると、そもそも「漫画」というセグメントのは、IP経済圏からすると順位が1番高いわけではないんです。むしろ全体からすると低い方だと思ってます。
(何度も言いますが、”構造”の話であって、"優劣"の話ではないよ。)

お賃金が欲しい会社のおじさん達は思うわけです。
「ゲームやら映画やらが儲かるみたい」って。
「自社IPを開発してゲームやら映画やら立ち上げてみよう」って。

でもそんな簡単な話ではなくて、先述したIP経済圏におけるそれぞれのセグメントの中で、規模が一番大きい代わりに、開発の為のコストが一番大きいのも「ゲーム」だったりします。(タイトルによって変動あるけど)

さっきの原神で言えば、3年ちょっとで「100億円以上」かけて開発されています。

IPはどれも全て「確率」のビジネスなので、全てのコンテンツがヒットするわけではないです。当たり前ですが。
そして、リリースまでにかかるコストの重さというのは生み出される数に相関していて、結果として打ち手の数を決める要素になっているわけですね。

要するに、当たったらデカいけど、外したらダメージもすごくデカい。
みたいな感じです。

その点、漫画はどうでしょうか。
原稿料がだいたい1万円としましょう。週刊で19ページ描くとして計算しやすく20万円として、年間で52週間ありますから、1年間漫画を連載しようと思ったら必要なコストは「ざっくり1000万円」なんです。

漫画は、1年間のランニングコストが大体1000万円くらい。
ゲームは、1年間のランニングコストが数億~数十億くらい。

ヒットする確率が10%だとしたら、ゲーム10本立ち上げるのに下手すると何百億円とか何千億円の資金が必要になってくるわけですが、漫画は10タイトル連載するのでも1億円で済むんですね。

このコスト感でIPの創出ができるので、漫画というのはIPビジネスに関わる企業群の中で価値を見出されているというように私は考えています。
(なんども言いますが、漫画は素晴らしいし、漫画家も素晴らしいし、それを否定したり比べたりという話ではなくて、構造の話です。)

しかも、さっきのバンダイさんの売上でみれば、ドラゴンボールクラスのヒットが出たら年間1500億円とかの規模になるわけでして、天井が凄いんです。

ここまでの話を一旦、IP創出ビジネスのあれこれをビジュアル化してみるとこんな感じになります。

コンテンツによってふり幅はありますが、ざっくりのイメージ
カジュアルゲームとかもいれちゃうとあれなので、割愛

大きく稼ぎたいおじさん達は、売上規模が大きいセグメントとのIP掛け合わせを狙っていきたい訳ですが、必要コストも大きいので、外したらすごいダメージなので、それぞれの会社のお財布事情とかを鑑みて、どういった計画でIPを大きくしていくかみたいなのが各社さんの「戦略」だったりするわけですね。

IPを創出するにあたって一番必要コストが小さいのは「小説・ノベル系」ですね。まさに騰訊はグループでゲームから映像から手掛けられるメリットを最大限生かして、戦略を立ててます。

NaverとKAKAOも同様に「小説・ノベル系」の部分にはアクティブに買収・投資を行っていますね。韓国にはもう小説・ノベル原作が残ってないなんて嘆くスタジオの声も聞いています。

話を戻すと、IP創出のセグメントにおいて、Webtoonはどこのポジションになるんだっていうところですが、各タイトルで制作コストのふり幅はあるものの、1話20-100万円の間くらいに収まるので、横軸としては「マンガ系」と「映像系」の間くらい
(ふり幅がでかいのは、ゲーム会社のWebtoon予算とかになってくるとあれなんです察してください)

売上規模については、右上がりで拡大中で、TAMもデカいのではないかっていう話もあるので、期待値が高そうな肌感もありますが、まあ後々定まってくるとして。
当て込むと、現状は下記の感じになります。

漫画を中心に展開している出版社として、正直怖いのは、売上規模の天井がどこなのかっていう読みがまだ確度低いので、上振れしたらまくられちゃう懸念があるんですよね。(それだけではないし、そもそも全社全員が同じ考えではないと思いますが)

ただ、日本のマーケットは世界で1番大きくて、その中でイケイケでやっている日本の漫画に対して、いくらグローバルマーケットとの相性がとはいえ、Webtoonの規模が何倍、何十倍とかにはならないのでは、と思うわけです。

話を戻すと、コンテンツビジネスにおいてIPの創出というのは確率ビジネスなので、数がより多く打てるほうが良いわけでして、小説や漫画というコンテンツは、後々映像化したい、ゲーム化しててでかく稼ぎたいというIPビジネス経済圏に生息している企業群にとっては、そういった「種」が生まれるポジションだと捉えて、その中で生まれた種を育てて「実」にしていこうみたいなイメージでいるという感じです。

なので、Webtoonというのは、別にそれ以上でもそれ以下でもなくて、必要コストが漫画以上で映像系以下のポジションで、売上の規模はまだ不透明な部分が大きいという、IP経済圏におけるセグメントの1つなんだと、おじさんは思います。

それで、ちょっと感情的な事を言いますが、クリエイターを引き込む為に過剰な表現を使っているみたいなのを時々聞いたり、儲かるんでしょうっておでこに書いて乗り込んできたりみたいな企業さんがいたりで、おじさん辛いです。

あと、Webtoonに沢山の会社が次々に参入している中で「どこの会社が成功/失敗するのか」とか二項対立で言いがちな人は多いですが、「成功」ってなんでしょう。「失敗」ってなんでしょう。黒字化したタイトルが1本でたら成功ですか?10本でたら成功ですか?月1億円の売上が出たら成功ですか?10億円なら成功ですか?

すごく大きな表現をされる方もいますね。あえて言わないですが。
夢が大きいのはそれはそれとして、出版社のフッ軽な編集者さんが中国やら韓国に出張してあーだこーだ言っていた3-5年前とかを1次Webtoonブームとすると、今の2次Webtoonブームで国内の関連各社さんが動き始めて1年弱くらい経ちますが、既に大きなトラブルになったり、コンフリクトが起きている制作会社さんや出資企業も結構出てきてますよね。

本当に、今の進め方や産業への向き合い方って正しいんでしょうか。おじさん、そわそわしてまた髪の毛が抜けてしまいそうです。
(自分の方が理解度が高いとか、正しいとかいう話ではなくて、少なくとも今は、孤独と向き合うことに耐えないといけないタイミングではないのかい?みたいな話をしてます)

大手出版社さんとかは、100年とか経営しているわけですが、やはりこういった「産業」的な文脈においては短期的な「成功/失敗」とかで語れるものではなくて、色々と土壌が積みあがっていってみたいなものだと思うんです。

別な視点でみれば、さっきのバンダイさんみたいに、IPがあればゲームやホビーでビジネスを拡大できる基盤があって、その上に次のガンダムのようなIPが生まれれば、その先10年20年の収益の柱になるとして、IP創出にWebtoonで取り組む事も理解できます。

他にも、TV局さんやVODの企業が、独占配信の映像コンテンツが欲しいとかの理由で、NetflixのWebtoon原作ヒットを羨んでIP創出にWebtoonで取り組んでいくのも理解できます。

逆に、それは大丈夫なのかい…っていう企業さんもちらほら見かけてます。

私が一番怖いのは、良くも悪くもこの市場にファンドなどの投資マネーが入り込んできているので、過去のnoteとかでも言及してきましたが投資マネーの特性上、日本のWebtoon産業というものがクリエイターにとって過酷な環境になってしまったり、Appleのようなポジショニングを韓国・中国に握られたらもう取り返しがつかないという事で、ただ悲しいかな韓国・中国はそういった戦略が非常に上手いという現実です。
(GAFAMがどうこうではなくて、プラットフォーム戦略であったり、カウンターポジショニングとかの話です)

広い話をすると、混沌としている世界経済の情勢で、ますます円は弱くなっている状況で、外貨を稼ぐ必要性が高くなっている中、日本が海外に攻め出れる産業っていうのは凄く限られていると思っていまして、その中で、外貨を稼げる数少ない産業の1つであるコンテンツ産業の根幹が海外に取られてしまったら、おじさんの頭はもう禿げきっているでしょう。悲しい。

ということで、ここまでの話は、Webtoonというものを「初歩的なIPビジネスの構造的な視点」で再認識してみたという話です。

次章からは、せっかく主観的な文章を書こうという機会なので、おじさん的にこういうWebtoon事業への取組み方っていうのは先がないのではないかい?っていう話をしていこうと思います。簡単に言うと潰れそう・撤退しそうなロードマップについてという話です。はい。

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その先に道はあるのかい?

Webtoonの本丸はどこでしょうか。韓国ですね。
ここからの話は、韓国のWebtoonについての経緯が前提として必要だったりするので、Webtoonの歴史だったりnoteでまとめてるので、よければ読んでみてください。

重要なポイントとしては、韓国のクリエイターは「Webtoon」というものに向き合う理由がある状況で、それは少なくとも日本とは全然違う状況なわけです。

ちょっと分かりやすく、
「Webtoon」を「いちご」に、「マンガ」を「みかん」に例えて考えてみましょう。(実際のいちごとかみかん農業の話とは無関係だよ)

韓国では、いちごの品種改良に何年も頑張って取り組んできて、美味しいいちごが作れるようになりました。そして、その美味しいいちごを買いたいお客さんも沢山増えて、いちごを作る農家さんも沢山増えました。

世はまさに、いちごドリーム

韓国で大きな産業になったので、次に海外で韓国のいちごを売ってみようと思いました。

結果として、韓国のいちごは日本や中国だけでなく、東南アジアや北米でも人気が出てきていて、これからもどんどん売れそうな状況です。イケイケムードです。

世はまさに、空前のいちごブーム

韓国のいちごが沢山売れているのを見て、日本のビジネスマンは思いました。

日本のビジネスマンの妄想

しかし、簡単にはいきませんでした。
この日本のビジネスマンはいちごを作った経験がないだけでなく、韓国のいちごは長年の品種改良や農家さんの頑張りで「美味しいいちご」が作れるようになったので、いきなり同じレベルの「美味しいいちご」は作れなかったのです。

困った日本のビジネスマン

そして、ひらめいたのです。
私は、これまで自分でいちごを作った経験がなかった。だから上手くいかなかったのかもしれない。そうだ、

日本のビジネスマンの妄想2

そして、農家さんに相談をしにいきました。

ですが、日本の農家さんを訪ねてみると、大変なことが分かったのです。

ガガーーーーーンって感じです。

何故、沢山の農家さんは、みかんを作っていたのか。
韓国のいちごが人気で、日本でも韓国のいちごが売れているのは事実でした。売上は右肩上がりで、これから益々人気になりそうなのもみんな知っています。

しかし、日本という国においては、いちごの市場規模よりも、みかんの方が何倍も市場規模が大きかったのです・・・!

実際のみかんとかいちごの話じゃないよ

みかんしか、勝たん。
そうなんです、日本の農家さんにとっては、みかんしか勝たんのです。

そもそも、韓国でいちごの品種改良などを長年頑張ってきたのには理由があったんです。

昔はみかんを作っていたけど、「みかんが大好きで沢山食べちゃう虫」が大量発生して、みかん以外を作らないといけないみたいな経緯があり、結果としていちごというものの可能性が見いだされて、あれやこれやあって今の勢いに至るという。

なので、韓国の農家さんは、みかん作ってもみかん大好き虫に食べられちゃうから、いちごを作ってきたわけで、日本の農家さんは、普通に儲かるみかんをどんどん作っているという状況なんですね。

はい。ということで、
「Webtoon」を「いちご」に、「マンガ」を「みかん」に例えて説明してきたわけですが、もしもあなたが、いちご作りがうまくいかなくて困ったビジネスマンの立場だったらどうしますか?

どうしたら韓国みたいな美味しいいちごが作れるでしょうか。

ぼく、美味しいいちご、作りたい。

こういうケースは、全く同じではないにしても、「Webtoonとマンガ」に限らず色んな市場で起きてきたわけです。

例えば、携帯電話がスマートフォンに変わっていったように、VHSがDVDやBDに変わっていったように、TSUTAYAやGEOなどのレンタルビジネスからNetflixなどのVODに変わっていったように、市場環境が変化するというのはあるあるなんです。

ただ、難しいのが、上記に挙げた例は「結果」の話であって、当時の人にとってはどんな結果が待っているのかわからないわけです。まして、自分たちの方が優位に立っていたりすると、そこまで脅威に感じていなかったりします。

例えば、今やっているビジネスが1000億円の売上があるとして、これからきそう!って言われているビジネスが10億円の売上だとして、1000億円の売上を手放して10億円のビジネスに切り替えますか?中々難しいですよね。

しかも、「必ず大きくなる市場」なんて保証はなにもないわけです。
10年20年たっても、全然今のマンガの市場の方が大きいかもしれないし、Webtoonの方が大きくなっちゃうかもしれない。

分からないんです。

だがしかし、今回のnoteでは、これからくるかもしれないWebtoonの事を考えてみたいので、あなたが「日本でいちご農業をやらないといけない人」、つまり「Webtoonをこれから日本でやらないといけないマン」になったとして考えてみましょう。

「賢者は歴史から学ぶ」という言葉もありますし、過去の似たような事例を探してどうなってどうなったのか、ちょっと調べてみるのを、次の章からやっていきます。

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日本でWebtoon産業が形になるには

過去の似たような事例を探していくわけですが、実際にどういう条件で絞っていくのが良さそうでしょうか。

日本では、漫画を描いているクリエイターは沢山いますが、Webtoonを描いている(又は過去に描いたことがある)クリエイターは非常に少ないです。みんなみかん作ってますから。

という事で、こういう「やっている人が非常に少ない」みたいなのを「新興市場」という感じで名前つけて考えてみましょう。

また、今回のケースは、VHSからDVDにシフトしてどうこうとか、携帯電話からスマホにどうこうみたいな「製造業」とかの話ともちょっと違うので、「コンテンツビジネス」という所も条件に入れて考えてみましょう。

こんな図を作ってみました。

いわゆる4象限マトリクス的なあれですね。はい。
予め解説しておくと、「縦軸」は「コンテンツを提供した人が”運営側”なのか”ユーザー側”なのか」としていて、(以下図)

「横軸」は「コンテンツの制作体制が”個人規模”なのか”法人規模”なのか」として作っています。(以下図)

(注意点としては、日本のほとんどの漫画家さんのみたいに、数人だけど法人化しているとかは”個人規模”の方に入れてます。アニメスタジオとかを”法人規模”の方にいれているので、直観的な人数のイメージを個人規模・法人規模として理解してもらえると嬉しいですね)

はい。という事で、これから色々と過去の事例を当てはめていきたいと思いますが、再度確認しますね。

Webtoonみたいに、日本でやったことがある人が非常に少ない市場を「新興市場」として考えて、カテゴリとしては製造業とかだとイメージ湧かないので、エンタメ関連にしてみようという感じでした。

それを踏まえて、とりあえずエンタメ関連で成功した事例を見てみましょう。まず1例として挙げたいのがYouTubeやTikTokです。

10-15年前とかに時計を戻してみると、「自分で企画を考えて、自分で動画を撮影して、自分で投稿します」なんていうクリエイターは日本にほぼいなかった訳でして、それが今だと沢山沢山いらっしゃいますよね。

さっきの4象限にいれるとこんな感じです。

マンガ系はこんな感じになりそうですよね。

私が今投稿をしているnoteであったり、ひいてはTwitterとかInstagramとかもこうなりますね。

法人アカウントとかもまあありますが…ご愛嬌

この図をなんで作って説明しているかというと、その市場の「適正」がわかりやすいなと思って作っているわけでして、

例えばさっきのYoutubeの事例で言えば、Youtubeの適正が右下なんです。つまり「ユーザー投稿×個人規模」が最適という感じ。最適な象限の掛け合わせから外れると、難易度が高くなってしまうみたいな話です。

これを、別象限から取り組んで失敗してしまったのが「Youtube Originals」などに代表される「運営投稿×法人規模」のパターンですね。

YouTube Originalsについては、知人が何人かアメリカで関わっていたのであんまり言いたくないのですが、まあ凄い頑張ってました。ただ、やはり最適なスキームというのはそれだけ難易度に関わってくるよなという事を実感したという感じです。

他にも、TikTokのような短尺コンテンツをスタジオで作成しようと試みた「Quibi」っていう巨大スタートアップ企業がありまして、それはそれはすごく期待されてたんです。

まず、社長が「Jeffrey Katzenberg」という方で、アメリカのドリームワークス共同設立者で、アメリカのウォルト ディズニー社の元会長でもある方です。(まさに大御所)

Quibiに投資した会社も凄いです。まず21世紀フォックス、そしてディズニー、ソニーピクチャーズ、ワーナーブラザーズなどなど、それはそれは凄い座組みで1000億円もの資金を集めて、いざ始まったQuibiでした。

しかし、半年で撤退してしまうという結果になりました。

TikTokの最適分布というか、短尺コンテンツというか

Youtube Originals然り、Quibi然り、別にお金がなかったわけではないですし、データなどもどこよりも持っていた状況で、非常に優秀なチームが構成されていた環境であっても、やはり「適正象限」ではないポジショニングからの参入は難しかったという印象を受けます。

なにやら、ここまで見てみると右側か右下ばっかりで、そこしか成功事例ないのかい?みたいな感じになってしまいますが、左側の成功事例も挙げていきましょう。

Netflixとかがそうですね。

という事で、エンタメ系のコンテンツプラットフォームの成功事例においては、左もあれば右もあるみたいな感じなんですが、

ここで言いたいのは「それぞれの象限における適正を決める要素はなにかという話」です。
冒頭の定義をもう一度振り返ってみましょう。

Webtoonみたいに、日本でやったことがある人が非常に少ない市場を「新興市場」として考えて、カテゴリとしては製造業とかだとイメージ湧かないので、エンタメ関連にしてみようという感じでしたね。

Netflixがやっているビジネスは、定額で映画やドラマの映像コンテンツをインターネット経由でスマホやTVで視聴できますよっていうVODなどと言われるものですが、Netflixが初めて「映画」というコンテンツを作った訳ではなく、Netflixが設立される前から映画というコンテンツは既に産業として存在していた「既存市場」だったわけです。

では、YoutubeやTikTokはどうでしょうか。それまで「自分で企画を考えて、自分で動画を撮影して、自分で投稿します」なんていうクリエイターは日本にほぼいなかった訳でして、「新興市場」と言っても良さそうです。既にあったのはTVなどの映像番組があって、出演している芸能人やタレントが存在していました。

前者と後者を分かりやすく比較できるように定義付けしてみると、

■Netflixなどは「既にあったコンテンツの体験場所を変えたビジネスモデル」
■YoutubeやTikTokは「これまでなかったコンテンツが体験できる場所を提供したビジネスモデル」

と言うことができそうです。
(TikTokの前にVineがあったよとかの話ではなくて、市場としての話で理解してくださいね)

Netflixとかのパターン
YoutubeとかTikTokとかのパターン

さて、長々と説明してきましたが、本題となるWebtoonで考えてみましょう。

先の説明で話した通り、韓国では「いちご農業(Webtoon)」がなんだかイケイケムードな中で、

世はまさに、いちごドリーム

日本では、「いちご農業(Webtoon)」をやりたいけど「いちご農家(Webtoon作家)」がいないという困った状況でしたね。

まさにこれから頑張らないといけない「新興市場」なわけです。

では、さっきの4象限で「新興市場」が成功している事例が多い象限はどこでしょうか。

右下になりそうですよね。

Webtoonの本丸である韓国もまさに、Webtoonの市場が勃興した時からここまでの成長に非常に貢献してきたのが右下に位置する「ユーザー投稿×個人規模」の「Webtoonのユーザー投稿プラットフォーム」だったわけです。

(細かい経緯とかは過去のnoteを見てね。)

例えていうなら、「小説家になろう」みたいなのがあって、そこの人気作が書籍化されたり、漫画化されたり、アニメ化されたり映像化されたりみたいになってきているという感じです。

それでですよ。おじさん怖いのが、日本で沢山参入しているWebtoonの関連企業さんたち、どういう座組みでやってるでしょうか。

全部の企業がとは言わないですが、左上の会社が多くないですか?

左上って何がありました?Youtube Originalsとか、Quibiとかでしたよね。

そして、左上の象限で成功したNetflixとかみたいに「既にあったコンテンツの体験場所を変えた」ものでもないですよね。

日本においては、いちご農家(Webtoon作家)がいない環境ですから。

別に「事例があっても例外になるかもしれないじゃないか」とか、色んな意見があるかもしれませんが、

事例のあるなしは客観的なエビデンスとして挙げた経緯でして、むしろ何故こういう「適正象限」みたいなのが発生するのかっていうのが、実はすごく合理的に説明できるという事の方が重要だと思います。

何故失敗しやすいのか、適正象限の座組みだと何故成功しやすいのか。理解した上で、それに対してソリューションがあって取り組んでいるなら良いんですが、どうでしょうか。おじさん胸に手をあてて振り返ってます。

そういうのを鑑みても、今の日本のWebtoon市場の未来を考えると、おじさんちょっとそわそわしてしまっているという状況です。不安で抜け毛がやばい。

しかも、ここ数か月でWebtoon関連のプロジェクトに関わったクリエイターさんから相談を受けたりして聞いていると、すごいトラブルになってしまって「もう二度とこの会社と関わりたくない」といった感情になってしまっている方が結構います。

勿論、各社さん考え方や大義みたいなものはあると思いますので、ご判断にどうこう関わりはしないですが、エレンみたいになってしまっている人が増えているというのはちょっと悲しいです。

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肝心なところを言わないおじさん

ここまであーだこーだ言ってきたわけですが、おかげさまで少し気持ちが楽になりました。

いや、冒頭にちょっと言及したように、お金儲けを掲げてアドバイス求めるみたいな企業さんがいたり、最近胸が締め付けられるような出来事が多かったので、辛かったんです。はい。取り乱しnoteですね。

それで、長々と偉そうに「こうなると失敗しちゃうんじゃないの」みたいな話をしてきたんですが、じゃあ「どうやると成功するんですかい?」っていう部分を説明しろよという感じですよね。

ですが、その部分は言わずにこのnoteは終わります。ごめんなさい。

何故かと言うと、まさにその部分をおじさん頑張って取り組んでいる所でして、喋れないことが沢山あります。そして、尊敬する方々であったり、出版社さんとかと組んで取り組ませてもらっている状況でして、未来の日本のWebtoon産業に少しでも貢献できると本望だなという感じです。

よく、日本の大手企業は動きが遅いとか色々言われますが、伴走させてもらっていると思うんです。色々と抱えている大切なものが多いし、沢山の関係各所にも気を配って進めていかないといけないし、

まして、エレンよろしく既にWebtoonというものに否定的になってしまっているクリエイターさんもいるので、「スピードこそ命」ということが絶対正義というわけじゃないと思うんです。「スピード感に欠ける」というのは、それはそれでデメリットも勿論あると思いますが。

あと、念の為触れておくと、今Webtoonに取り組んでいる方ですごく尊敬している人も沢山います。

例えば、韓国で活動しているWebtoonのクリエイターが日本で活動したいという時に、そういう事をサポートしていたりとか、そもそも韓国でWebtoonのクリエイティブを教えていて、沢山の才能を世に送り出している方であったりとか、

日本のクリエイターがWebtoonをやりたいという時に、Webtoonのクリエイティブを教えていて、そういう事をサポートしていたり、そして同様に沢山の才能を世に送り出している方であったり、

凄く大切な取組みだと思いますし、クリエイターの為、業界の為に身を削らないといけないので、とても大変なことだと思っています。凄いです。

一方で、途中でもちらっと言いましたが、おじさんが怖いと思っているのは根幹を韓国・中国に抑えられてしまう事です。

過剰にスタジオが乱立している状況で、このままいくと誰が一番メリットあるのかという話なわけですが、「美味しいいちごを取り扱いたいプラットフォーマー」の立場の企業さんとかは、嬉しいですよね。

おじさんとしては、これまでのnoteでも結構言及してきましたが、そこを結構懸念しています。

韓国や中国の企業は、先述したように「プラットフォーム戦略」や「カウンターポジショニング」とかの事業の進め方が凄く上手いので、そこが怖いんですね。

なんで不安なのかとか、こうなったらこうなっちゃうんじゃないかいみたいな話は、このnoteにまとまっているので見てみてね。

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さいごに

ちょっと感情にまかせて書きなぐってしまい、非常に読み辛い構成になってしまったなあと反省しているのですが、

これ以上手を加えようとすると深みにはまってお蔵入りしてしまいそうなので、自戒もこめてとりあえず出してみようと思ったりしてます。(あと流石に時間もない)

あと、ここまであーだこーだ言ったんですが、産業が興って成長していくのってやはり色々あって清濁飲み込んで、長い時間軸の中で形成されていくものだと思うので、自分の信念をぶらさずに粛々と孤独にやるしかないという事は自分が一番わかっているのかなとか思ったりして、

今だとBTSとかTWICEとかaespaとかをはじめとするK-POPだったり、韓国のコスメ・美容だったり、梨泰院クラスとかイカゲームとかの映像産業だったり、凄い勢いになっていますが、

おじさん知ってるんです。K-POPだって最初はBoAさんとかが日本で、タイトなジーンズに戦うボディをねじこんで、紅白とか出たり頑張ってきたからこそ、そういった経験とかが培われて重なって重なって、花開いて沢山のK-POPアーティストが世に羽ばたいているわけじゃないですか。
(若い人はもうValentiとか聴いたことないかもしれないけれど)

Webtoonだって、日本にとってはまだまだこれから育てていくフェーズだと思ってるんです。

なので、色々あって時々辛くなったりもしますが、ちっぽけなおじさんの戦うボディで何か少しでも良くなることがあったら嬉しいし、何も変わらなくても自分の信念をもって粛々とやっていくしかないんだなという気持ちです。

以上、自己満足のnoteでした。

明日からも、戦うおじさんのボディ。がんばるます。

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