見出し画像

これからの漫画業界どうなるんです?

『大人の事情で立場上言えないことがあるから匿名で言っちゃうアカウント』でお馴染みになりたい、漫画家やったり脚本家やったり出版社にいたり、業界のすみっこで生きてるおじさんです。はい。

この記事は…
『なんか最近Webtoonやらなんやら聞くけどよくわからんなー』とか『電子漫画が紙より売れてるみたいだけどどういう状況なんです?』みたいな事を漠然と感じている漫画家さんとかアニメーターさんとか、そういったクリエイターさんに読んでもらえると嬉しいなーという気持ちで書いてます。

前回は『最近よくWebtoonって聞くけど、実際どんなもんなの?』とか『漫画とは違うの?』とか『クリエイターとしてどう向きあっていくべき?』みたいな話をしました。

まだ読んでない人や、忘れちゃった人は読み返してみてね。

ーーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーーー

漫画がヒットして、5000兆円欲しいんだゾ

なんか、今回の話は、油断するとすごい分かりにくい説明になってしまいそうなので、『分かりやすい話』➡『ちょっと深入りした話』➡『分かりやすい話』➡『ちょっと深入りした話』みたいな構成で書いていこうかなと思います。はい

ということで、これおじさんの若かりし頃の話なんですが、当時かけだしの漫画家としてふわっと思い描いていたのは、

作りたい漫画を描いて、ヒットして、
お金持ちになりたい

みたいな感じでして、結局漫画家とかでやっていくなら、この辺がなんか、みんな頭のどこかにあると思うんですよ。多分。(昭和の考えとか言われたら悲しいから優しくしてね)

それで、じゃあその夢を叶える為にどうするのかっていうと、

なんかめっちゃ売れてるらしい天下のジャンプで連載しようとか、全国の本屋さんに沢山並んで売り切れて、ばんばん重版かかってみたいな、アニメ化されてみたいな、口座に積みあがっていく印税みたいな、そういう夢をふわっともっているみたいな感じだったんですが、

おじさんがかけだしの漫画家だった時とかは、良くも悪くも『漫画家としてお金を稼ぐ選択肢』が少なくて、漫画家として生きていくっていうのはそういうのが王道みたいな感じだったんですよね。

それが今だと、日本の漫画っていうマーケットは、紙漫画よりも電子漫画の方が売上が大きい時代になったみたいな話もありまして、

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2202/25/news178.html

そうすると、『あれ…?紙の漫画を売るよりも電子漫画を頑張らないとワイの口座に5000兆円が入ってくることはないのかい…?』みたいな不安がよぎったり、そもそも出版社で連載するのがベストなのかい?どうなんだい?みたいなモヤモヤも出てきますよね。

それで、なるほどじゃあ電子漫画くんの事を調べてみようじゃないかと。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000086762.html

ありすぎてもうよく分からん…みたいな感じです。

例えば集英社で連載してたとして、『なあ担当くんよ。最近電子漫画がなにやらイケイケらしいじゃないか。ワイも配信をば…』って思っても

え…?集英社の漫画アプリですら沢山あるんですか??みたいな。

それで、もう面倒だから『なあ担当くんよ。なんかよく分からんけど、販売価格も印税も変わらないなら、YOU、日本の配信サービス全部に流しちゃいなYO』って言っても出版社からは『それは出来ません。』って言われるし。

おじさん困っちゃうなー…。

じゃあせめて、日本で一番人気の漫画アプリで配信してくれって思って調べてみると、なにやら『ピッコマ』ってのが盛り上がってるらしいぞと。

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00549/00010/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000369.000003707.html

いざ、『なあ担当くんよ。なんか君にも事情があるかもしれんが、YOU、ピッコマで配信しちゃいなYO』って言っても出版社からは『そんな簡単な話ではないです。』って言われるし。

おじさん困っちゃうなー…。

振り返ってみると、漫画家としてはやりたい事は、

作りたい漫画を描いて、ヒットして、
お金持ちになりたい

っていうところから何も変わってないんだけども、ただ、時代や環境が変わったっていうだけで、なにやら出版社の事情とかビジネス的などうこうとか、色んなことに気を配ったり勉強しておかないと、その夢が遠のいてしまうっていう面倒な時代なわけで、

話題のWebtoonやらなんやらにしても、
2021年時点ですでに『市場規模4400億円』と言われていて、2028年には『市場規模3兆円』にまで成長すると言われていたりするので、
(ドル円124円換算:2022年4月8日レート

そうすると、さっきは『電子漫画を頑張らないと』みたいな話だったのが、これから先は『なんやWebtoonっていうやつを頑張らないと、ワイの口座に5000兆円が入ってくる時代はこないのかい?』みたいな不安も出てくるし、

でも、今までの出版社で連載みたいな王道ビジネスが終わるわけではなくて、出版社で連載している作品の中から『呪術廻戦』とか『鬼滅の刃』みたいに国民的ヒット作が生まれているという事は変わらずあるので、それを否定するつもりもどうこう言うつもりも全くなくて、

作りたい漫画を描いて、ヒットして、
お金持ちになりたい

この目標を叶える為にというか、結局漫画家の仕事は作品を世に出して、お金を稼いでという仕事なものの、最近は、これから先はもしかするともっと、複雑で面倒な環境になってしまいそうなので、心構えというかなんというか、その辺としては、

大きな視野をもって、全体的な流れを把握しておいて、その上で自分は漫画家としてクリエイターとして、どうなりたいのかをぶれずに持っておく。

みたいなのが良いのかなと思っていて、あえて難しく言うと、

大局的に、各社が中長期どういうビジネスをしようとしているのかという部分を理解しておいて、その上で、短期中期どういうアクションを各社が進めていき、その影響で徐々に変わっていく環境の中で、自分は漫画家としてクリエイターとして、どういったキャリアやポジショニングを目指していこうかなーという事を考えながら、時代に適応していく

という事が大事なんじゃないかと思うわけです。はい。(なんで敢えて難しく言ったんですかね)

なので、電子漫画がイケイケだとか、Webtoonやらなんやらがどうとか、色んな情報に一喜一憂したり慌てたりせず、『あぁ、●●社はこういう計画だもんね』みたいにどしっと待ち構えていきたいよねみたいな感じの話でして、

例えば、昨日とかに小学館と集英社が出しているプレスリリースとかもですが、

こういうのは、自然災害みたいに急にボンッて出てくるものではなくて、これ自体もここ2-3年くらいずーっと色んな調整やら検証やらをやっていて、社内のアライアンスとかどうこうしていた状況で、やっとまとまってきたから段階的に情報をオープンにしていこうっていうものなので、

小学館とかがどういう思想で、中長期どういう事を目指しているのかっていうのが把握できていれば、全然動揺しないみたいな話です。

(あと、余談ですがビジネスサイドにいる方で、記事に添付されてる画像について、白黒漫画を並び替えただけじゃあダメなんだみたいなツッコミがちらほらされてますが、そういう話はもうかなり前から出版社内で議題に挙がっていて重々理解してるので、同じ轍は踏まないように頑張ってます。記事がなんでなのかっていうのは察して欲しいなっていう感じだったりします)

その為にも、勿論漫画を作るためのクリエイティブな時間と向き合うというのは凄い大事なんだけれども、悲しいかなこれからの時代はすこし肩が凝りそうなので、色んな情報をキャッチアップしていく癖をつけて欲しいなというおじさんのお節介です。(別にその為におじさんのnoteを読んでねっていう話ではなくて、色んな情報源からキャッチアップして、自分なりの考えをもっておくとかが大事なんじゃないかなと思うよという話です)

重ね重ね言いますが、出版社で連載するとか、韓国の企業で作品を出すとか、韓国の企業でコンテンツに携わるとか、日本のスタジオでコンテンツに携わるとか、どれが良いよとか悪いよという主張をするつもりはなくて、クリエイターさんの選択肢はこれからもっと増えていくし環境も変わるので、それを判断するときにしっかり情報を精査して選べるようになって欲しいなという話です。

ーーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーーー

付き合う相手の会社の事を、ちゃんと知ろうという話

ということで、前置きが長くなってしまってあれなんですが、ここまでの話としては、これからもっと環境の変化がおこってくるので、クリエイターとして生きていくなら、情報のキャッチアップをするのって大事だよねみたいな話をしてきたわけでして、

その上で、これからどんな環境に変わっていきそうみたいな話をしたいのですが、とはいえ沢山の企業が沢山の目的で市場に流れ込んでいるので、まあ複雑な状況なんです。

それを簡潔に1回のnoteにまとめるほどの腕がないもんでして、とりあえず今回のnoteでは、『パワーバランスが変わっちゃいそう』という話をしたいと思っています。

そこにもっていく為に、同じ『出版業界の会社』であっても『状況や立場によって意思決定とかは全然違うことが多いよ』っていう話をしていきたいと思います。

どうしてもちょっと不安を煽るような話になっちゃうんですが、これは別に出版社のおじさん達はとっくに理解していて、(一部の悪いおじさんを除いて)悪い環境にならないように頑張っているので、そこは『ほーん』って頭に入れてもらえればと思います。

(あと、良い悪いっていうのはどうしても立場によって変わってくるので、そこは前提として客観的に判断してほしいなという感じです。)

漫画家にとっては、電子漫画が盛り上がってきた事によってこれまでの『THE 出版社』だけでなく『IT企業』だったりが漫画市場に参入してきて、そこで連載をしてたりという作家も増えている状況なわけですが、

あのー…、うち、漫画事業やめることになりましたんで』

なんて言われて、急に仕事なくなっちゃうなんて作家さんもいるわけじゃないですか。どこの会社がとは言わないけど。

別におじさんとしては、その会社の経営をなんとか立て直したりとか、資金提供ができるわけでもないので、倒産する前に経営判断として撤退しましたっていうのに批判するつもりはないんだけれども、漫画家としては、連載する為に準備をしてきて、生活かかってるのに、急にそんなこと言われましても…みたいな状況になっちゃうと困るわけで、

どこで連載するのが良いのか悪いのかっていう判断をする時にちょっと頭に入れておいた方がよいかなと思うのは、

『上場企業(上場しようと思っている企業)のビジネスの進め方』と
『未上場企業のビジネスの進め方』は根本的に違う

という事です。

日本という環境は、事実として『小学館』『集英社』『講談社』などの”未上場企業”が出版業界の『作品を生む』という部分の役割を担って、ある種”けん引”してきたように見えなくもないわけでして、それが良かった部分もあればまあ悪い部分もあったものの、

漫画家としては、『印税が10%もらえる』とか『原稿料がもらえる』とか『権利を持てる』とか、そういったものが”当たり前”みたいになっていますが、

これから先の時代は、その”当たり前”が”当たり前”じゃなくなるかもよ…という話です。

で、これは完全に持論ですが、

市場においては、適切にパワーバランスが分散していた方が健全である

という考えがありまして、これは独占禁止法がそもそもなんで存在しているのかみたいな話にもなってしまうんですが、独占禁止法の話は本題とそれるので気になる人は下の記事とか見てみてください。

日本の今までの漫画市場というのは、先ほど挙げたような出版社などが『作品を生む』という立場を担ってきたわけですが、それ以外にも『印刷会社』であったり『取次会社』であったり『書店』であったりがいて漫画の産業というのは成り立ってきたわけです。

それが、例えばですが、『株式会社Sホールディングス』(名前に意図はないんだぞ)みたいな上場企業がいてですよ、印刷も取次も販売も、なにもかもやってますってなって、業界シェアもほとんど抑えたってなった日には、もう絶対王政みたいになっちゃうわけです。

これが漫画家にとって都合が良い王様だったら良いのですが、『作品の権利は全てSホールディングスが保有する!』とか『印税は1%だけだ!』とか言ったら、もう困っちゃうじゃないですか。それを断ったら漫画家になれないし、漫画が販売できないみたいなパワーバランスですし。

なので、何が言いたいかというと、今まで漫画家が”当たり前”って思っていたのって、もしかするとすごく恵まれていたのかもしれないねっていう話で、勿論100人いたら100人がそうだとは思っていないかもしれないけど、これだけ長く産業が続いてきたという事実について、それが何で続けられていたのかっていうのは理解しておきたいよねみたいな感じです。

それを踏まえてですが、これから先の環境はどう変化していくかというとちょっとパワーバランスが偏りそうなので、おじさんとしてはちょっと不安なんだなっていう話をしていきたいです。

ただ、その前に『会社』ってどういうものなんだっけみたいな話を挟ませてもらった方が分かりやすいかもなので、ちょっとご理解ください。

ーーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーーー

乗ろうとしているその船は、ほんとに大丈夫かいどうなんだい?

ここまでの話としては、

作りたい漫画を描いて、ヒットして、
お金持ちになりたい

みたいな漠然とした価値観について、おじさんが勝手にそれを多数派だとして話を広げてきて、

今までの『漫画家になる=出版社で連載する』という選択肢以外のものが凄く増えてきている環境の中で、どう適応していけばいいのかみたいな話を引き続きしていきたい訳ですが、

『上場企業(上場しようと思っている企業)のビジネスの進め方』と
『未上場企業のビジネスの進め方』は根本的に違う

という部分についてもう少し深掘りして、その上で引き続き『パワーバランスが変わっちゃうかも』っていう話にもっていきたいと思ってます。はい。

前回のnoteで、上場しているKADOKAWA社の時価総額がどうこうっていう話をしたわけなんですが、

2022年4月6日時点

そもそも『上場』っていうものは、『株式を一般公開しますよ』っていう仕組みでして、すごい簡単に言えば”会社の株にリアルタイムで値段がついて、いつでも誰でも売買できるよ”っていう事です。(気になる人は調べてみてね)

未上場企業の会社でも、DD(デューデリジェンス)っていって時価総額を算定する方法とかはあるので、小学館の時価総額がいくらですかって思ったら値段は付けられます。

ただ、大きな違いとしては、未上場企業の株式は”誰でも売買できる”というものではないです。(未上場企業だからといって株式の売買がされないわけではないよ)

じゃあこの違いがどう影響するの?っていうと、沢山あるんですが、今回のnoteに関連する部分で言えば、

■ 事業を大きくしていかなければならないという使命を背負う
■ ビジネスに求められる『スピード感』が違う

という2点について、説明していきたいと思います。はい。

まず、『事業を大きくしていかなければならないという使命を背負う』という部分についてなのですが、

上場している会社の株というのは、もう毎日毎日誰かしらが株を買っては売って、値段が上がって下がってみたいな事を半永久的に繰り返していくような、資本主義の特濃牛乳みたいなものでして、

上場会社である以上は、事業を拡大しなければ株主に対しての責任に報いていないみたいなツッコミを受けたりしちゃうという事があります。

これは、ちょっと本題から逸れてしまうので、以下の記事とかでちょっと理解してもらえればなという感じなのですが、法的には『会社』というのは『株主のもの』です。

それで、ほとんどの投資家は、『その会社の株を買う=儲かりたい』という意志があるので、『はやく株価をあげろー!』とか『利益率もっとあげろー!』とか好き勝手いうわけですね。はい。(別にそれを否定するわけじゃないよ)

会社としては、もっとクリエイターに寄り添ってとか、こういう価値観でとか、そういう気持ちがあったとしても、法的に『会社は株主のもの』なので、株主の意向に合わないような経営判断を続けていると、社長をクビになってしまったりします。(実態はもっと複雑ですが)

なので、ちょっと語弊があるかもしれないですが、上場(しようとしている)企業の場合は、

株主 > クリエイター

という関係性にならざるを得ないというように、おじさんとしては感じてます。(全部がそうとは限らないけど)

で、ちょっと誤解が生まれないように言っておくと、上場している企業でも長い視点で経営判断ができている会社もあるし、あとは未上場企業のほうが良いよねっていう話でもないです。はい。

有名なとこだとNetflixなんかむしろ、”救世主”なんて言われてますし。

勿論、クリエイターに投資していかないと良いコンテンツが生まれないんだから、そこを理解してもらうために経営者とかは奔走するわけですが、それを株主に対して説明しきれる経営者が少なかったり、株主がみんな優しくて理解のある場合って中々ないので、難しいんですよね…。

それから、『ビジネスに求められるスピード感が違う』という部分なのですが、

先述したように『会社は株主のもの』っていう部分があったり、毎日毎日変動していく株価があったりする中で、漫画みたいに『0からコンテンツを作る』っていう産業は、そんな1-2年で大ヒットする作品がポンポンでるようなものではないと思ってるんです。

例えば、このあたりの小学館の記事とかにも言及ありますが、

新人の育成には5-6年かかるっていうのが、すごーく長く経験のある出版社でもそうで、多分出版業界の感覚としても大幅に違うよっていう事はないと思います。

ただ、これが上場してたりすると、

俺たちが勝負するのは、5年後だからサ☆

なんて株主に対して言えないわけでして、1-2年やって全然芽が出なかったら『撤退しますんで、全部打ち切りです』みたいな事になりかねないんです。(変に不安を煽るつもりはないですが)

大事なので何回も言いますが、上場している企業でも長い視点で経営判断ができている会社もあるし、あとは未上場企業のほうが良いよねっていう話でもないです。

おじさんが言いたいのは、未上場企業でも、『株式会社』である以上は必ず『株主』がいるので、当然その影響はありますが、どこかの出版社みたいに同族経営で株主面子の調整も出来てたりすると、上場企業ほどは経営判断に余計な影響は出にくかったりするという事でして、

あとは未上場企業だから事業を拡大しなくても良いということではなくて、あくまで経営判断は未上場企業の方が裁量をもってやれる幅があるかもねみたいな話で、

ただこれも、会社の口座にお金が全然ない未上場企業と、お金がたくさんある未上場企業では全然違うので、未上場企業でもお財布事情によってケースバイケースです。

じゃあ先述したような出版社のお財布事情はどうなってるかというと、

イケイケみたいです。はい。

そうすると、簡単にいえば『うちら貯金もあるから、時間かけて作家さんにもしっかりお金かけて育てていこうぜ』みたいな経営判断ができる選択肢があるし、株価がどうこう株主がどうこうの外的理由で急に連載が終わりだとか、会社として漫画事業から撤退しますとかの悪夢が起こるリスクって少なそうじゃないかい?っていう感じです。

なので、今までの文脈で言えば、『0から作品を生み出すのってお金も時間もかかるよね』という話であったり『会社は株主のもの』みたいな話でったりを踏まえると、

自分が作品を持ち込もうとしている会社だったり、連載しようとしている会社だったり、取引しようとしている会社がどういう立場でどういった事情を抱えていて、お財布事情がどうなのかとかを踏まえて選べるといいよねっていう話でした。(みんながみんな選べる立場ではない事は重々承知してますが、頭にはいれておいて損はないよねっていうくらいの話)

ーーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーーー

王者が、天使か悪魔かはまだ分からないよ

はい。ちょっと長くなってるので、ここまでの話をおさらいしておくと、

漫画家としては、ざっくりだけど、

作りたい漫画を描いて、ヒットして、
お金持ちになりたい

みたいな夢をもってるよねっていうのを、おじさんが勝手に多数派みたいに話を進めて、

その夢を叶える為には、これまでの紙の漫画だけがどうこうじゃなくて、なんかイケイケの電子漫画のことも理解しておかないといけないよねっていう話だったり、もっとイケイケになりそうなWebtoonやらなんやらがあるから、その辺りも情報収集しておきたいよねっていう話をしてきて、

紙の時代はなんか上手いこと権力が分散していて、長く続いてきたみたいな見え方もできそうな気がするけど、電子漫画の環境を考えると、良くも悪くも色んな企業が参入してきてるから、お取引しようとしている企業の事はお勉強しておいて損はないよねっていう話をしてきたつもりです。はい。

その上で、電子漫画の隆盛やら、かつWebtoonやらなんやらの勃興っていう所で考えると、これからの環境っていうのは、紙の時代みたいに上手いこと権力が分散していた環境から、すごーくパワーバランスが偏ってしまいそうだよっていう話をして、今回のnoteは締めたいなって思ってます。

という事で、パワーバランスがなんで偏るのかっていう事なんですが、

紙の時代であれば、業界として『持ちつ持たれつ』の関係性だったんです。
(ここ、どうしても簡潔に説明しようとすると言葉足らずみたいになっちゃって、詳しい人から見たらツッコミたくなっちゃう気持ちもわかります…。ごめんなさい。おじさんのnoteを鵜呑みにしないで、深く知りたい人は調べてみてね)

どういうことかって言うと、紙の漫画しかない場合、書店がつぶれちゃいますってなると、出版社としてはお客さんに販売する場所がなくなってしまう(分かりやすくする為にECとかはちょっと置いといてね)ので、利益分配の適正値を調整したり、売掛金やら買掛金やらをどうこうしたり、金融的な動きがあったり、出資したりどうこうなってたわけです。印刷会社にしても取次会社にしても。

あとは、多少なりとも1社が抑えられるシェアっていうのは限度があったので、例えばある書店運営の会社が『なんかー、俺らイケイケだからー、俺たちお金もっと貰っちゃうね』なんて事はなかったわけで、すごい簡単に言えば、なんか色々とちょうどよかったんですよ。振り返ってみれば。
(関係者の仕事や取組みを軽くみているような話ではなくて、客観的に見ればパワーバランスが、少なくともこれから先の時代よりは均衡がとれてたんじゃないかみたいな話です)

これが、トッププレイヤーが上場企業だったりする電子漫画の配信サービスってなると話は変わってきて、

さっき、ピッコマが世界No.1だぜみたいな話をしたんですが、そのシェアたるや、『65%』だとかなんとか言われてるんです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000369.000003707.html

で、ランキング2位の『LINEマンガ』も含めると、日本の電子漫画の配信のシェアを『90%』以上取ってるんじゃないかなんて話もちらほら出てきているわけで、

勘の良い人なら、このへんで『おやおや…?』ってなると思うんですが、ちょっと順を追って説明すると、

ひと昔前は、漫画家になる=出版社で連載するっていう感じで、紙の漫画が全国で売れて重版かかってウハウハみたいな、そんな感じだったのが、

なんだ紙の本があんまり売れなくなってきたぞ、電子漫画を頑張らないとワイの口座に5000兆円が入ってくる時代は遠のいてしまうかもしれないみたいな話をしてきたじゃないですか。

ただ、その盛り上がってる電子漫画の内情を見てみると、単純に『紙が売れなくなっても、その分、電子漫画が売れてるならまあいいじゃないか』みたいな簡単な話ではないわけでして、業界の構造自体が変わってきてるんだという事は理解しててもいいんじゃないみたいな感じです。

例えば、中盤にさむいショートコントみたいな話で触れましたが、

───もう面倒だから『なあ担当くんよ。なんかよく分からんけど、販売価格も印税も変わらないなら、YOU、日本の配信サービス全部に流しちゃいなYO』って言っても出版社からは『それは出来ません。』って言われるし。

出版社にとって、なんで都合が悪いのかっていうと、

消費者の立場で考えてみて欲しいんですが、

■ 漫画アプリA『出版社Kの作品が10タイトル配信されてる』
■ 漫画アプリB『出版社Kの作品が10タイトル配信されてて、他の作品も合わせると1000タイトル配信されてる』
※出版社Kの10タイトルはそれぞれ同じものとする
(名前に意図はないんだぞ)

っていうアプリが並んでたら、どっちを利用しますかって言うと、『漫画アプリB』の方を選んじゃう人が多いみたいです。

なので、どの配信サービスにどこの出版社がどのタイトルを配信するかっていうのは、すごい慎重に選ばれている状況でして、

(余談ですが、NetflixやらAmazonPrimeやら、Disney+とかなんやら、タイトルの争奪戦になったり、どこもかしこも独占配信をしたかったり先行配信したがったり、オリジナルコンテンツの開発に血眼になってたりも似たような文脈だったりします。)

一方で、漫画家からすると、

■ 漫画アプリA:ユーザーが10万人
■ 漫画アプリB:ユーザーが1000万人

という感じで並んでて、どっちかだけでしか配信できませんってなったら『漫画アプリB』で配信してよってなるじゃないですか。
(ここも、本当はもっと複雑で、10万人だけどTOPに表示されてどうこうみたいなことがあるので、知りたい人は調べてみてね)

そんなこんなで、大人の事情やら、出版社の事情やら、編集部の事情やら、あれやこれやで色んな漫画アプリが乱立している状況があったりで、気が付いたら『世は、まさに配信サービス乱立時代!!』みたいな事になってしまったわけです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000086762.html

(付け加えると、ユーザー層でアプリ分けた方が売上でるよねとかプッシュできるよねとかもあったりしますが)

という事で、ちょっと一旦それぞれのプレイヤーの状況を整理すると、

■ 漫画家:5000兆円欲しい。販売価格も同じで、印税率も同じなら、1つでも多くの配信サービスに出して欲しいかも。

■ 出版社:できれば、自社の漫画アプリで独占販売とか、せめて先行販売っていう形で自社の配信サービスを伸ばしていきたい。勿論、配信先を増やして売上を増やしたい気持ちもあるし、漫画家さんの要望に応えたい気持ちもある。

■ 配信サービス運営会社:有名なタイトル販売したい。ユーザー沢山ほしい。手数料美味しい。日本の売れる漫画タイトル全部欲しい。

おじさんとしては、ちょっとバイアスあるかもしれないですが、こんな感じになっちゃってる気がしてます。

そうすると、なんか方向性が一致しているのって、漫画家と配信サービス運営会社に見えますよね。それに対して、出版社が自分たちの都合でなんかあーだこーだ言ってるみたいな。

漫画家さんとケンカしたくないなー、でも事情も理解して欲しいなー、でも補償金とか出せないなーみたいな感じで、結局『ピッコマ is No.1』になってしまったみたいなところもありまして、
(細かいことを言えば、販売タイトルの話だけではなくて、待てば無料とか、チケット制とか、漫画の配信ってもっと複雑で色んな兼ね合いがあるから、それはそれでどこかでnoteにしたいと思います。気になる人は調べてみてね)

で、じゃあ『ピッコマ is No.1』になったみたいな今の環境がもう天井ですか?っていうと、いやむしろ、ピッコマが上場したらもっとアクセルを踏んでやっていきそうなんですっていう事を理解してもらいたくて、

今のピッコマさんっていうのは、

■ なんかユーザーが沢山いるみたいだぞ!
■ 漫画を買う人も沢山いて、すごい売れているみたいだぞ!
■ 販売している漫画の数もどんどん増えているらしいぞ!
■ サービスも使いやすいらしいぞ!
■ 待てば無料とかもなんかイケイケらしいぞ!

みたいな状況で、これがさらに

■ なんかユーザーが沢山いるみたいだぞ!
■ 漫画を買う人も沢山いて、すごい売れているみたいだぞ!
■ 販売している漫画の数もどんどん増えているらしいぞ!
■ サービスも使いやすいらしいぞ!
■ 待てば無料とかもなんかイケイケらしいぞ!

■ グローバル配信もできちゃうぞ! ←New!

なんてなった日には、もう困っちゃうんだなー…。

ちょっと挟み込みたい話があって、サービスっていうのは、共存できる数に上限があります。

どういう事かって言うと、例えば『なんとかPAY』みたいなのってもうそれはそれは沢山あったけど、今だと増える数のピークは越えた気がしていて、統合されたりサービス終了したり、結局みんなPAYPAYなんかいみたいな感じに思いますが、

漫画の配信サービスも、ピークを超えたら統合されたりサービス終了したりしていく時代がきます。(ジャンプ+とかは集英社がイケイケだから全然終わらないと思いますが、自社で配信サービスやれない出版社とか、経営怪しい出版社とか、採算とれないIT企業とか、そこら辺から先に変化していくと思いますが)

ちょっと妄想してみましょう。わかりやすいようにちょっと極端にしますね。

~20XX年~
この世の漫画配信サービスが『ピッコマ』だけになった時代。

そのユーザー数は全世界で10億人を超え、配信国は196か国に。
出版社は、ピッコマで販売できないと漫画が売れない時代に…!

おじさん怖いです。こんな異世界には転生したくない。

これが、このnoteでいう所の『パワーバランスが偏った環境』です。ただ、突拍子のない話ではないのが、尚更怖かったりもしてます。

これがですよ、もし、これだけ偏ったパワーバランスになった世界で、上場企業で、株主からあーだこーだ言われての状況だったら、

『漫画の販売価格をいくらにします』とか『売れたら利益を何%分配します』とか『権利はこういう条件です』とか、今までの”当たり前”を”当たり前”だとしなくてもよくなっちゃうし、何なら、出版社があーだこーだ言ってくるのが面倒だから、出版社買収しちゃおうとか、傘下の出版社だけでビジネス進めちゃうかもしれなかったり。

事実として、配信サービスを運営している会社にとって旨味が多いのは、

オリジナルコンテンツの売上 > 他社のコンテンツの売上

という状況で、これはオリジナルコンテンツの場合なら出版社とかにお金を分配しなくてもよいからとかが理由だったりします。(気になる人は、Netflixが何でオリジナルコンテンツにあんだけお金かけているかとかを調べてみてね)(オリジナルコンテンツを作る理由は他にも沢山あるけども)

変に不安を煽るつもりはないので説明しますと、別にそういう話をピッコマの金社長が言っているわけでもないし、なにかそういう記事が出ているとかでもないです。

逆に、ピッコマの金社長とかは、出版社の売上に貢献していきたいとか、すごく素敵なお話をされてます。はい。

ただ、『今は』そうだよねっていう話と、『これからも』そうだよねっていう話は違うと思っていて、

現にWebtoonやらなんやらについて言えば、上記のような記事も出ているわけでして、表に出ている言葉とかを鵜吞みにしないで、各社の意向や目的を把握しておくのが良いのかなと思ってます。

あとは、おじさんの持論である、

市場においては、適切にパワーバランスが分散していた方が健全である

っていう観点からすると、これから先に待ち構えている絶対王政的にみえなくもないパワーバランスっていうのは、やっぱりちょっと不安だったりします。

逆に、むしろ漫画家に対しては、『印税20%にするよ!』とかピッコマさんが言い出して、めっちゃええやん!ピッコマ神か!みたいな事にもなるかもしれないし、ならないかもしれないので、

結局じゃあ何が言いたいかというと、

作りたい漫画を描いて、ヒットして、
お金持ちになりたい

っていう漠然とした夢があって、

紙の漫画よりも電子漫画の方が売れているなら、電子漫画のビジネスにも詳しくなって色々理解しておいた方がよさそうで、Webtoonやらなんやらも急成長しているなら、その辺りもインプットしておきたいよね

みたいな話をしてきて、

『紙<電子』になった時代っていうのは、『売れるものが変わった』という簡単な話ではなくて、業界の構造が大きく変化している状況で、このままいくと、凄くパワーバランスが偏ってしまいそうな”懸念”もあって、一番優位にたった会社が、漫画家やクリエイターにとって”天使なのか悪魔なのか”っていうのはまだ分からないよ

みたいなことが言いたかった感じです。はい。

何度も何度も言いますが、このnoteで言いたいのは、変に不安を煽るつもりもないし、どこが良いよ悪いよっていう話をしたい訳でもないけれど、

どこの会社で連載するとか、配信するとか、販売するっていうのは、漫画家やクリエイターにとっては凄く重要な意思決定なので、クリエイティブな事だけでもすごく大変なのはわかるけど、色んな情報をキャッチアップしておいた方が、特に選択肢の増えてくるこの先の時代の事とかを考えると、損はないよねっていう話でした。

ーーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーー✂ーーーーーーーーーーー

さいごに

ここまで書いてきて、大体5000-6000とかの文字数が読みやすいよなーって書き始めとかは思っていたんですが、このnoteは約1.5万文字あります。辛い。

なにかの情報っていうのは、やっぱり立場とか状況によって見え方が変わったり、言葉足らずとかで悪意なく誤解や偏った認識とかを与えかねないので、出来るだけフラットにお届けしたいなと思っているのですが、

こんだけ長く文章を書いても、ちょっとここは誤解が出そうだな―とか、補足しないとあかんな―とか、色んな不安やらがあったりします。

メディアを運営されている方の苦労が少しだけ分かって、なんか変な収穫がありますが、クリエイターさんにとって有意義な情報がお届けできるように引き続きnoteとかを更新していこうと思います。
(ただ、中々に仕事も忙しいので、更新頻度とかには広い心をもってくれると嬉しいです)

あと、やっぱりどうしても各トピックについては、深く説明とかが必要だと感じているので、今後は1つのトピックについて深堀りしたnoteの回とかもやっていきたいと思います。はい。

という事で、今回はこんな感じで終わりますが、良ければいいねやSNSでシェアして頂けると嬉しいです!(前回のnote、沢山の人に読んで頂けて感謝です…シェアしてくれた方もありがとうございます)

それではまた次回お会いしましょうー!!ではでは

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?