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おじさんのWebtoon話

『大人の事情で立場上言えないことがあるから匿名で言っちゃうアカウント』でお馴染みになりたい、漫画家やったり脚本家やったり出版社にいたり、業界のすみっこで生きてるおじさんです。はい。

この記事は…
『なんか最近Webtoonとかよく耳にするけどよくわからないなー』とか『ちょっとWebtoonみたいなの作ってみようかなー』とか考えている漫画家さんとかアニメーターさんとか、そういったクリエイターさんに読んでもらえると嬉しいなーという気持ちで書いてます。

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今日は、国内だと2021年の下半期くらいから2022年の今もまさに、WebtoonやらSMARTOONやら、『なんとかtoon』が毎週のように増えすぎてる状況なわけですが、そのあたりの話をしたいと思ってまして、

日本の漫画家とかアニメーターとか、クリエイターというのは世界から見てもすごーく貴重なマーケットなわけですが、昨今の動向にざわざわして、不穏な気持ちで今日も眠れず(更年期じゃないよ)

ピッコマやらKAKAOグループの上場が予想されている今年の動きというのはとても重要なのと、ここで間違ったら5年後とか、結構取り返しがつかなくなりそうだなーと思いつつ、後悔しそうなので業界のすみっこで『あの時こういったのにー』というマウントをとりたいから書き残しておこうという思想のおじさんが書いてるnoteです。はい。

(ここでの『取り返しがつかない』というのは、”やれるけどやらない” という選択肢だったものが ”やりたくてもできない” という状況になっちゃう的な事を意味してますご認識を)

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そもそも、Webtoonって何だろう?

これから色々と書いていきたいものの、まずWebtoonって何なのかという前提を明確にしておきたいなと思うので、おじさんなりに定義を書いていくのですが、

ざっくり2001年2002年くらいに韓国で生まれたコンテンツフォーマットで、当時はPC向けに作られたマンガのコンテンツが発祥だったかも…

「ウェブトゥーン帝国の誕生」より

なんて言われている背景がありまして、

韓国で生まれた事は間違いなさそうなんですが、歴史とかの詳しい話を知りたい人は特集された韓国のTV番組とかを見てみてね。YouTubeにもあるよ。
https://youtu.be/Da0Qk7iccV8

引用:https://youtu.be/Da0Qk7iccV8

この『純情物語』が、長編のストーリー漫画で、かつWebtoon的なフォーマットで作られた”最初の作品”なんじゃないかみたいな意見もあったりするみたいですね。はい。

歴史の話は置いておいて、
WebtoonやらSMARTOONやら、色んな名前がどんどん増えてるわけですが、この辺りの呼び方がごちゃごちゃしてるのは大人の事情でして、

そもそも『Webtoon』という商標を韓国のNaverグループが取得してしまったので、KAKAOグループは『SMARTOON』っていう名前でやってたりして、参入しようとしてる日本の企業とかは『よしWebtoon やるぞ!』って思ったら商標取られてたから自分たちで名前を考えて『なんとかtoon』っていうのをプレスリリースで出しているみたいな状況です。

なので、毎週毎週『なんとかtoon』が誕生しては消えてみたいな状況なんですねー…。ひえぇ…。

勘違いしてるニュースメディアとかは、市場の話なのに『Webtoon』って括ってしまったり、あとはあえて知らない人向けの説明が面倒だから『webtoon』って呼称してたり、SEO的に意図してたりしますが、

このnoteではとりあえず『toon系コンテンツ』って呼ぼうと思います。
(そのうち変えるかもしれないです。その時は許してたも…。)

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このnoteでふれておきたいこと


面倒な前置きが終わったので、これから本題なんです。長くなってごめんなさい。

話しておきたいトピックが盛りだくさんなので、とりあえず今回は『toon系コンテンツ』というものについて、どんな特徴なのかとか、期待されている事とか、これは良くないのでは…みたいなことを書こうと思います。

というのも、『toon系コンテンツ』についての情報が散乱しているのと、ポジショントークで色々バイアスかけてあれこれ言っている人もいるので、独立した立場の匿名おじさんができるだけ客観的に話をして、これから未来あるクリエイターさん達が、自分の判断でちゃんと選べるようになればいいなーという感じで考えてます。

あとは、最後にそれを踏まえて『toon系コンテンツ』というものにどう向き合うか、みたいな話で締められればいいなという感じですね。

それでは、最後まで読んでもらえるように頑張ります。はい。

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『なんとかtoon』が話題なのはどうして??

ということで、『toon系コンテンツ』というものについて、Webtoon やらSMARTOONやら、色んな名前が誕生しているしているという事はお話してきたんですが、

そもそも、これだけ沢山の企業がどんどん参入しているのはなんでなの??という所に触れておきたいと思います。
有名どころだけでも、

などなど、続々各社さんプレスリリース出している状況でして、これでもホントにごく一部のご紹介という感じなのですが、

なんでこんなに急いでどこもかしこも参入するかというと、沢山要因はあるものの、一番大きいのは『次世代のグローバルコンテンツフォーマットになるかも』とか『toon系企業の成長がすごい』とかが大きい影響なのかな…というのが体感です。
例えば、

toon系企業の筆頭である、漫画家のみなさんお世話になっておりますカカオピッコマ社、間もなく上場と言われていますが、その時価総額は『1兆円』を超えると言われています。(いっぱい漫画の広告出してくれてありがとう…)

比べるものではないですが、日本の出版社で上場しているKADOKAWA社の時価総額は約4500億円です。

2022年4月6日時点

KADOKAWA社の2倍以上 !!
なんて言われると、『おぉ…なんかすごいのかも』という印象になるかと思います。

付け加えると、カカオピッコマ社は韓国のカカオエンターテインメント社の子会社でして、そのカカオエンターテインメント社は『時価総額2兆円でNY上場する』なんて言われてたりします。
(そのカカオエンターテインメント社もまた子会社なわけですが割愛…)

わけわからんくなる前に、ざっくり簡単にしておくと、

toon系企業の筆頭には、『カカオ系グループ』と、あとは『Naver系グループ』がいまして、韓国では『国民銘柄』なんて言われるほど人気になるくらいの状況で、その成長を後押ししている1つの要素に『toon系コンテンツ』があるよ

という感じです。

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『toon系コンテンツ』と『漫画』は違うの??

ここまでの説明では、ふわっと『なんかすごいんだなー』『盛り上がってんだなー』みたいな印象だけもって頂ければ大丈夫なんですが、

漫画家とかイラストレーターの知り合いからよく聞かれるのは、『漫画とは違うの?』みたいな質問がとてもとても多くて、(toon系のスタジオ関係者からも多いけども)

結論としては、『違うのもあるし、違くないのもある』というのがおじさんの答えです。

どういう事かというと、これすごい誤解している方が多いんですが、『Webtoon』っていわれると『俺だけレベルアップな件』みたいなやつでしょ?という認識の人。

勿論、俺だけレベルアップな件も素晴らしい作品なんですが、日本に輸入されてきてるWebtoonとかSMARTOONの『toon系コンテンツ』っていうのは、翻訳とか、ローカライズ対応の書き直し微調整とか、ライセンス交渉とか色んなコストがかけられているので、コストをかけても回収できる見込みのある、つまり日本で読めるWebtoonが全てではなくて『中国とか韓国でヒットしているコンテンツ』が一部、日本にも輸入されてきていて、それを読んでるというのが実情だと思うんですよ。

なので、中国とか韓国とかの作品の、ごくごく一部を見て『これがWebtoonかぁ!』みたいになってしまってるのが状況としてはあって、

こういった誤解から、『Webtoonはスタジオで制作されていて、これまでの漫画とは違って、沢山の人数で分業して、フルカラーで、縦にスクロールして読むフォーマットなんだ!!』という誤った認識がすごく広まってしまっているのが、おじさんとしてはちょっと怖いです。

仕事柄、『俺だけレベルアップな件』の制作関係者の方々とも結構話しますし、他の韓国のtoon系の方々とも話すんですが、『最近はスタジオが増えてきてるけど、個人で制作しているWebtoonコンテンツが、まだ60%以上はあるよね』というのが共通認識です。

大事なのでもう1回言いますが、何年も先にやっている韓国でも、まだ半分以上が『個人作家の投稿しているコンテンツ』です。スタジオで作られている作品の方が少ないという認識です。

あと、『フルカラーのやつでしょ?』っていう認識もちょっと怪しくて、

有名なのだとNetflixで話題になった『地獄が呼んでいる』の原作とかは、普通に白黒でつくられています。

引用:https://www.netflix.com/jp/title/81256675
引用:https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0001099

なので、このあたりの説明で明確にしておきたいのは、

WebtoonとかSMARTOONとかの、toon系コンテンツというものは、
『個人制作』もあるし『スタジオ制作』もあるし『白黒』もあるし『フルカラー』もあるし、色んな作品が誕生しているので、別に『日本の漫画とは違う』というくくりにする必要があるのかないのかという所も、ちょっと疑問ではありますが、

あえて定義付けするなら『違うのもあるし、似ているのもある』というのがおじさんとしての見解です。

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ずるい大人の話をします

ここまでの話としては、なんか盛り上がってるコンテンツがあるんだなーとか、色んな作品があるんだなーっていう理解をもってもらえればという感じなんですが、

ちょっとずるい大人の人が結構増えてきているので、ポジショントークにならないように、あくまで事実をベースに話をしたいと思います。(今回はむしろここが一番言いたかったことでもあったりします。)

日本にいる漫画家とかアニメーターとかの人としては、すごい感じることが多いと思うんですが、『Webtoonかいてみよっかなー』って思っても、まだ投稿する所ないですよね。多分。Twitterにも投稿できんし。

中国とか韓国とかは、イラストでいうピクシブとか、小説でいう小説家になろうとか、動画でいうYouTubeみたいに、WebtoonとかSMARTOONの『toon系コンテンツ』をユーザーが投稿できるプラットフォームがあって、お金も稼げて、むしろそれが色んなヒット作が生まれる土壌になっていたりします。

韓国などのコンテンツの循環としては、
『個人制作のコンテンツ』➡『スタジオなどの高コスト制作によるリッチコンテンツ化』➡『Netflixなどでのメディアミックス』➡『グッズなどの展開』
という商流がある印象でいます。

その上で、漫画家やアニメーター、イラストレーターなどのクリエイターさんが、Webtoonとか興味あるなーと思っていたら、頭にいれておいて欲しいのが、今の日本は少なくとも『今までの漫画とは、権利関係が全然かわる環境にある』という事です。

漫画家が出版社で連載すると、その作品の権利はほとんどの場合『作家が権利を保有している』という契約で作品が作られますよね。

一方で、沢山の企業が参入していて、今もどんどん誕生しているtoon系スタジオは、全部とは言わないですが、『会社が権利を保有する』というスキームがほとんどだと感じています。

アニメの場合は、原作が漫画やアニメのケースが多いので、アニメーターとしては『自分で作品の権利をしっかり持つ』という感覚がそこまでないかもしれないですが、漫画家としてはここの違いの重要度については感覚としてありますよね。

個人的には、変に『作家が個人で投稿できるtoon系のプラットフォームが生まれず、スタジオが乱立している状況』については違和感を感じていて、

裏を返せば『会社が権利を保有して0からIPを作れる可能性がある』という事が、あまりにも会社にとって美味しいから、意図的にそういった市場にもっていきたい層がいるのでは…というように見えてしまうんですね。(邪推だよおじさんって言われるかもしれないけど)

裏側で話を聞いていると、意図的にそういったネガティブな話には言及をしないでクリエイターの募集をかけたり、Webtoonやらなんやらの『次世代のコンテンツフォーマットだ!』とか『これから急成長する市場だ!』とか、そういったキラキラした部分だけに言及しているという話も耳に届いているので、なんだか心配です。

勿論、会社が権利を保有しているという環境で、アメリカでは『スパイダーマン』やら『アベンジャーズ』やら素晴らしい作品が誕生しているので、悪い事だけではないと思いますが、

日本という国において、これだけ多種多様な作品が毎年毎年誕生している背景には、表現規制などの側面もあるとは思いますが、個人が権利を保有して作品を世に出せる仕組みがあるというその土壌が、結構重要なポイントとしてはあるんじゃないかなーと思っていまして、

これは、日本の出版社が(一部例外はありますが)、権利を作家に持たせたままビジネスを行ってきたという、ある種”懐の広い”ようにも見える経営判断とかが、少なからず貢献しているのではないかと感じています。(変に出版社をよいしょするつもりもないけども)

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クリエイターは『toon系コンテンツ』にどう向き合うべきか

長くなってしまったんですが、これまでの説明を踏まえて、クリエイターとしては流行りの『toon系コンテンツ』に対してどう向き合うべきかという所を最後に言及して、今回のnoteは締めたいと思います。

前章で触れた通り、一部のずるい大人(言い方悪いですが)が、ネガティブな部分には意図的に触れずに、キラキラした部分だけに言及してクリエイターを募集しているという事もあるので、

これからWebtoonとかかいてみよっかなーって思っている漫画家やアニメーターとかのクリエイターさんには、『権利関係とかが全然違う可能性があるよ』という部分については頭にいれてもらいつつ、それでもメリットも勿論あるので、色んな情報をリサーチして、それらを踏まえて最終的には自分で選択するというのが良いと思ってます。

例えば、『次世代のコンテンツフォーマットになる』って言われているように、これまで越境ヒットが難しかった今までの日本の『漫画』という媒体に対して、Webtoonなどの『toon系コンテンツ』は越境できる可能性が非常に高いって言われてたりします。

これは、本の構成が国によってことなる書籍という媒体の課題であったり、日本のデジタル漫画でもいくつかの越境における課題があったりというコンテンツフォーマットに対して、国によってそこまで読み口に差がないとされるWebtoonなどの『toon系コンテンツ』は、越境の可能性が高いという理由だったりするのと、

配信という環境についても、漫画アプリで日本TOPのピッコマは、先月フランスでも正式にローンチしてたり、

KAKAOグループとしては、東南アジアなどでもシェアを伸ばしていたり、Naverグループは北米、日本、東南アジア、フランス、スペイン、ドイツ、中国などに展開してる状況です。

例えとして多少語弊があるかしれないですが、Netflixが190か国にグローバル配信をしているので『イカゲーム』とかがグローバルで人気になるように、

Webtoonなどの『toon系コンテンツ』を配信できるプラットフォームは、NaverグループやKAKAOグループを筆頭に今後どんどん配信国を増やしていくので、toon系コンテンツでの制作・配信・販売の商流に乗れると、グローバルヒットする可能性が非常に高い環境でコンテンツをリリースできるというのはあると思います。

まあでもこれも、日本で漫画家としてやるのであれば、中国・韓国ほど環境要因によって壊滅的にお金稼げないわけではないので、一長一短な気もします。(被害が小さいという意味ではないし、対策頑張っている出版社関係者さんには頭があがらんです)
(先述したWebtoonの歴史の動画でも言及ありますが、韓国の場合、海賊版の被害がすごくて漫画家がやっていけないという環境にあった中で、それを解決する為にtoon系のコンテンツが誕生したという経緯もあります。)

なので、変に『大変だ!日本の漫画の時代が終わって、これからはWebtoonとかのコンテンツを作らないと生きていけない!』という焦りを持つ必要はない気がしていて、興味があれば、制作できる体制を準備しておくとかかなーという印象です。

重複しますが、意図的にネガティブな話には言及しないで、クリエイターの募集をかけていたりするスタジオの話も耳にはいっているので、権利関係とかはどうなってるのかなーとか、クリエイターとしての中長期のキャリア形成とか、色々な側面から判断して自分で決めていくのが最適かなーという感じで、

(じゃあ、おじさん何やるの?という所については、
『個人投稿ができるtoon系コンテンツ投稿のプラットフォーム』を立ち上げようとしている真っ最中なのですが、別に変にプッシュするつもりもないので、このアカウントで言及とかは予定してなくて、どこかでひっそりとリリースしていると思います。)

あくまでこのアカウントでは匿名で独立した立場のおじさんという感じで、次回以降もnoteとかでつらつら投稿していければと思ってます。

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という事で、今回はこんな感じですが、良ければ「こういう内容に言及して!」とかのコメントなども頂けると嬉しいです!

また次回お会いしましょうー!!ではでは

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