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これぞ信頼できる真の食情報だ!

先日のnoteで「食事摂取基準」を読み、理解し、実践にまでつなげるための講座を開講することをご案内したところです。

ですが、そもそも、この食事摂取基準とは何ぞや?の説明を、noteではまだあまりしていませんでしたね。今回のnoteでは、食事摂取基準の全ぼうを紹介したいと思います。


●国の定める栄養のガイドライン

食事摂取基準の正式名称は「日本人の食事摂取基準」です(以下「食事摂取基準」と書きます)。厚生労働省が健康増進法という法律に基づいて定めている「日本人の健康の保持・増進、生活習慣病予防のために参照すエネルギーおよび栄養素の摂取量の基準を示すもの」なんです。つまり、国が発表する食事の取り方のガイドラインなんですね。

この基準は5年ごとに見直され改定されることになっています。現在の最新版は2020年版で、2020年4月から2025年3月まで活用されることになっています。ということなので、来年(2025年)の4月からは新しい食事摂取基準2025年版(文献1)の利用が始まります。

●専門家の論文精読と議論を経て

改定の内容は、15人くらいの研究者が、策定検討会で議論して決定します。その検討会では、最新の研究論文の結果に基づいて議論が行われます。そこで、その議論のもとになるための、最新の論文を検索・収集し、読み込んだ資料を作る作業チームが必要になります。作業は、検討会から頼まれた20人くらいの研究者からなるワーキンググループでなされます。そして、収集された適切な論文を根拠にして基準値が定められ、その基準値と、根拠となった研究結果の説明、その基準値をどのようにとらえ、どのように活用するべきかといった説明を「報告書」としてまとめ、公開されたものが「食事摂取基準」です。

食事摂取基準2020年版の本文に引用されている研究論文数は1,818報あります。これは引用されている数であり、実際には、検索・収集され、読まれたけれども食事摂取基準の作成には必要ないと判断された論文がこの何倍もあるはずです。ということは、ワーキンググループの行った論文検索・収集とその内容確認の作業は膨大なものだったと言えます。その結果、エネルギーと35種類の栄養素の基準値が検討され、その内容を詳細に記述した食事摂取基準本文は、なんと500ページ以上にもなります。

●ガイドラインとしての位置づけ

こうして作られている食事摂取基準は、本来、栄養を業務とする専門家向けに書かれた文書です。そして、栄養業務を実施する際の最も基本となる「ガイドライン」として位置づけられています。それではガイドラインとは何か?というと、食事摂取基準2020年版の内容をまとめた書籍(文献2)には、以下のような記述があります。

食事摂取基準はセンターライン

食事摂取基準はガイドラインの一種です。(中略)

ガイドラインを厳密に守ってもぴたりとは当たらないものの、ガイドラインを気にしていればさまざまな状況において「大きくはずれていない答え」を出せます。これがガイドラインの最大の目的であり、ガイドラインが求めている使い方です。食事摂取基準も道路のセンターラインもこのように使ってください。

伊藤貞嘉/ 佐々木敏 監修「日本人の食事摂取基準 2020年版」第一出版(2020)(文献2)
オリジナル資料P12

この基準値を必ずしも、常に守るべきガチガチのものと捉えないでと書いてあるわけですね。現場での柔軟な利用を勧めているものの、しかし、基本事項が理解できていなければ柔軟な利用はできないため、一番基本のことはおさえておきましょう、という位置づけなのです。

医療の現場では、各種疾患のガイドラインが示されていて、それに従って治療方針が決まっていくと思います。その「一般の人の食事版」が食事摂取基準、というわけです。

●これぞ信頼度の高い食情報だ!

この食事摂取基準を読めば、日々、各栄養素をどのくらい摂取すれば健康を維持しやすいのか、といったことが見えてきます。専門家が何千報もの研究論文を読み、その結果をもとに議論を重ね、ようやく公開された資料です。エビデンスに基づいた食情報で出来上がったガイドラインです。まさに食情報のエビデンスの宝庫です。日常生活の中で「○○を食べると健康によい」といったような食情報はあふれていますが、そのような食情報とは情報の作られ方に雲泥の差があります。信頼度がまったく違います。

そのために、本来は一般の人にもこの内容を知ってほしいんですよね。けれども、食事摂取基準の内容を読み進めると、公衆衛生学栄養疫学の基本を知らないと理解の難しい部分が多々あります。そのために、専門職の人でも本文全部を一人でひたすら読むのはけっこう大変。だから、読み進めるにはサポートを借りるのがいいのかなと思います。そこで読むための環境をご用意した、というのが、先日のnoteでお知らせした「食事摂取基準2025年版読み解き講座」でした。

●まとめ

食事摂取基準の内容を理解しておくことは、栄養業務を進めるうえでの助けになりますし、自信になります。そして、日常の食情報の扱いや、食事を通じた自分自身の健康を考えるうえでも大きな助けとなることは間違いありません。ぜひ多くの方と一緒に、その理解を深めていきたいと思います。食事摂取基準2025年版を読み解くための講座、興味をお持ちの方はぜひ、講座の案内をお読みいただき、その後の情報をキャッチするために、メールマガジンにご登録ください。今週中には説明会の参加申込受付を開始します。そのご案内はメルマガを通じていたします!

また、食事摂取基準ってどういうもの?という興味がわいた方、FOOCOMのコラムで2020年6月から、34回にわたり「これで分かった!食事摂取基準」というタイトルで食事摂取基準の解説記事を寄稿しています。合わせてお読みください。第1回目はこちらです。


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【参考文献】
1. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準2025年版案. 2024.
2. 伊藤貞嘉/佐々木敏 監修. 日本人の食事摂取基準2020年版. 第一出版. 2020.


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