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【心の詩歌】【公開記事】結婚についての変な詩

きょうは結婚についての変な詩を紹介します。まずは松下育男の「顔」という詩です。

こいびとの顔を見た

ひふがあって
裂けたり
でっぱったりで
にんげんとしては美しいが
いきものとしてはきもちわるい

こいびとの顔を見た
これと
結婚する

「顔」前半部、詩集『肴』

こいびとを(一応!)美しいと言いながらも、きもちわるいと書いています。「これ」という言い回しは、人が物体に思えたのでしょうか。

見慣れたものが変に思えることはたしかにあります。漢字をじっと見つめていると漢字に見えなくなる。結婚を前にしてまじめに考えすぎたのかもしれません。

素直すぎて真似できない詩もあります。
山之口貘「求婚の広告」。
この詩は最初の一行だけを引用したいと思います。
自分なら、求婚の広告をどんな風に書き始めるだろうか……。
山之口貘の一行目はこうです。

一日もはやく私は結婚したいのです

「求婚の広告」、詩集『思弁の苑』


すごい。そのままです。
料理がうまい人求む、とか、そういった条件はないのか。ないようです。

最後に、のろけすぎていて真似できない詩を紹介します。辻征夫の詩「婚約」の冒頭部。

鼻と鼻が
こんなに近くにあって
(こうなるともう
しあわせなんてものじゃないんだなあ)

詩集『隅田川まで』

のろけだと思うんですが、詩でも日常生活でもこれほどまでにのろけられたことがありません。
この辻征夫は、私がもっとも強く影響を受けた詩人です。



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