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【心の詩歌】【公開記事】歌人・岡井隆の本から学んだこと
短歌を作るための本はいろいろあります。
友人に岡井隆の短歌入門書を勧められて読んでいると、学ぶべき点があることに気付きました。
わたしは、肉親を失った人が、そのことを十首ほどの歌にして、送稿してこられたのを見ました。大へんにいい歌が多かったので、「あなたは、しばらくのあいだ、この題材で、つくりつづけてごらんなさい」とおすすめしました。二、三度は続きましたが、そのうち、タネがつきてしまったのか、おのずと別の題材にかわって行かれましたが、平凡で、歌を作るよろこびの感じられぬものが大半でした。
これは、歌人の多くに当てはまることがらでしょう。岡井は、自分の書くべき題材を離れてしまった人の作品について「平凡で、歌を作るよろこびの感じられぬもの」になったと言っています。
逆から見た言い方もできます。その人の普段の凡作、凡作への努力は、肉親を失った短歌において初めて結実しました。
いまこの日に素晴らしい作品を作ろうとして成功しなくても、いつか書くべき出来事に出会ったとき傑作になる。
さらに、岡井隆はこうも書いています。
一つの特殊な題材を、くりかえしくりかえし、何か月でも何年でも、作り続けていって一向にかまいません。
答えのない悲しみは人を苦しめます。問いかけ続け、答えを探し続ける。
私たち歌人の努力、すぐれた歌を作ること自体、いつか降りかかる耐えがたい悲しみに備えての練習なのかもしれません。
(この記事は、マガジン「心の詩歌」の月初無料記事です。「心の詩歌」は、詩や短歌の紹介、社会問題、哲学などを題材としています。)
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