私刑(私的制裁)についての雑感

回転寿司などの飲食店で行われた業務妨害行為に対して、ネットなどから行為者を非難する声が広がり、行為者の氏名、写真、出身校などをネット上に「晒す」ことも行われている。
このような行為を「私的制裁」として諫める発言もあるが、現状では分が悪そうに見える。

日本は「法治国家」であり、「罪刑法定主義」を採用している。したがって、犯罪者を処罰する権限、量刑を決定するは国家にあり、個々人が犯罪者に制裁を加えることは現行法では認められていない。このことは、知識としてわかっている人は多いだろう。

しかし、私的制裁は過去にも行われてきたし、現在でも行われている。罪刑法定主義を理解しながらも、正義中毒にハマって私的制裁に快感を覚える人もいるだろう。

私的制裁に賛成するつもりはないが、私的制裁は過去から行われてきた。最近は見なくなったが、毎年のように、年末には赤穂浪士のドラマが放映されていたが、あれなどは私的制裁の見本例ともいえる。

何も江戸時代まで遡らなくても、実例は他にもある。田舎では、コミュニティが狭いので、飲酒運転で逮捕されたりすれば、新聞報道などを通じて、その事実はあっと言う間に知れ渡る。その後、周囲の目線が冷たくなるだけでは済まず、家に石が投げ込まれてガラスを割られることもある。新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた頃、各市町村で初めて罹患者が出た家で同様な被害にあったという報道も目にした。

私的制裁は、法治国家では許されることではない。そこは確かなことだ。

しかし、反対に私的制裁は現実に起きており、おそらくは今後もことあるごとに起きうるだろう。そのきっかけが正義中毒からくるものなのか、裏切り者への制裁なのかまではわからない。ただ、自身も一つ間違えれば制裁の対象になるおそれがあることは認識しておく必要はあるだろう。

そして、禍に巻き込まれないよう、自身の行動を律することが必要だろう。

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