潜行
『潜行』
心を風が透ける夜
窓の外のサイレンも
テレビの中のアナウンスも
着信を知らせる光も
この部屋の明かりも
私から遠ざかっていき
私は目の前の世界から
そっと姿を消してみる
そして私の中の
やがて喜びも悲しみも
深い海の底へ落ち着いて
音もなくなって
光りもなくなって
形もなくなって
残されたもの
ちっちゃな蝋燭のような
消えそうな弱々しい光
古ぼけた懐中時計のような
今にも止まりそうな弱々しい鼓動
きっとこれが
ほんとうの私
それを抱き締めて
感じる
そこからまた
世界が生まれだす
明日が生まれだす
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