お祝い事は誰のために
誰かのお祝い事に真剣に携わると、意外にも「本気で祝ったからこそ得られたもの」といった、自分自身への褒美が生まれる。
例えば、本気で祝うための買い出しで、いつも行かない場所を選んだりいつも見ないものを見たりと非日常的な新鮮さを味わい、意外な形でリフレッシュできた!とか。あるいは、めちゃくちゃ凝ったハンドメイドの作品や手の込んだ料理を振る舞い、結果、自分にできることが増えていた!とか。
誰かのお祝い事に本気で乗っかってみると、「祝う側」にも有益なことが多いと思うのだ。
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8月は夫の誕生月である。
住んでいるのが田舎とはいえ、今年は世間も落ち着かないし、家でホームパーティー形式にて誕生日を祝うことにした。パーティーと言っても、夫と私の二人だけのこっそりパーティーだけれども。
これまでは誕生日といえば、普段行かないような洒落たレストランで外食することが多かったから、いざホームパーティーとなった時、どうしたらパーティーっぽくなるんだろう?と少し悩んだ。
悩んだ結果、パーティーらしさを出すには4つが大事だろうと思った。4つというのは、部屋の飾りつけ、ロウソクの明かり、めでたい料理、ケーキ屋さんのケーキ。
これらを調達するために、町のお店へ繰り出す。
100円ショップとケーキ屋さんでは、「これでもか」というほど買うものを悩んだ。それでも、普段買わないものや食べないもので悩むのは、脳みその新しい部分が刺激されている感じでやや覚醒した。楽しかった。
買い出しを終えると、「ちらし寿司」を作り始めた。
干し椎茸を水に戻し具材を仕込んだり、酢飯をこしらえたり、薄焼き卵を作ったり。手間のかかる料理だし、日常的に作ることは滅多にない。それでも、見た目が綺麗だし、これからは普段から食卓に登場させたいと感じた。二度目の覚醒。
午後18時にパーティー会場(ただのダイニングルーム)は開場し、参加者二名(夫婦のみ)で、これまでにない誕生日を過ごしたのだった。
レストランに行けば簡単にお洒落な食べ物が頂けるし、珍しい空間へとすぐに浸ることができる。けれどもそれを自分で用意するとなると、それなりに頭を使って工夫するものだし、そのおかげで退屈しのぎになるどころか、予想以上に得られるものがあった。
誰かのお祝い事を本気で考える。そんな日がたまにあってもいいなと感じた記録に。
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ちらし寿司には、うちから徒歩約10分で行ける湖で獲れた「うなぎ」をのせた。甘酸っぱいちらし寿司に、香ばしいうなぎの蒲焼。
今度はいつ誰のお祝い事を真剣に考えるときが来るだろう。
そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。