読書感想文: Big Things どデカいことを成し遂げたヤツらは何をしたのか
「レミングの死の行進みたいなプロジェクトだな」という印象を受けるプロジェクトに参加することがあり、(大体そうなるんですが、) それは本来どこがうまくいっていなかったのか、どうなければいけなかったかに興味があります。そこをうまくまとめた本。
ITやインフラなど、領域に関わらず規模の大きなプロジェクトの失敗事例を集め、その上でプロジェクトを成功させるために必要なアプローチを研究した人が書いた、成功するプロジェクトの秘訣の本です。
規模のでかいプロジェクトって失敗しますよね
最初の方のこれがもう。
プロジェクトの失敗とは何か、というのは議論の余地のあるところなんですが、この本では予算、工期、および便益、つまりプロジェクト憲章で語られたプロジェクトの目的やReturnを達成できたかというこの3点を考えています。
個人的には「多少の予算超過、工期超過があっても便益がクリアできていればOK (と言えるプロジェクトに入りたい)」と思ってはおります。
が、当然ですが超過を許容できる予算や工期には限度があるわけです。
でも一度走り始めたので止まれない!最後までやらないと!という気持ちになってどうしても最後まで走り抜けないといけなくなってしまう。
例えば典型的にはオリンピックの開催地の建築プロジェクトだったり、発電施設だったり。
予算超過も当初想定していた数倍の予算が必要だったなんていうのもザラにある世界なわけです。
ではどうしたら?
特に印象に残っているのが2点。
ゆっくり考え、すばやく動く
RCF法
ゆっくり考え、すばやく動く
計画フェーズはきちんと時間をとって考え、検証を重ねた上で、実行に移った時にはすばやく動くようにしよう。
計画フェーズは人数も少なく、いくらでも検証できるテクニックがあるので、不明瞭な点がないように検証をした上で、実行に臨もう、実行に移ったら大きな人数とお金が動くので、基本的にここでは手戻りが致命的だと考えよう、ということです。
例としてはビルバオ・グッゲンハイム美術館を設計したフランク・ゲーリーの設計アプローチや、Pixerの映画の作り方などが挙げられていました。
Pixerのアプローチは以下の記事にもありますが、この記事の「ディベロップメント」と「ストーリー & エディトリアル」がどのように行われているかは本の方が詳しかったです。
なお蛇足までに、この本では別にアジャイル的なアプローチやLEANスタートアップにNoを唱えているわけではないです。
この本ではジェフ・ベゾスのリーダーシップ原則を引用し、こう言っています。
それはもっともだとした上で、多くの巨大プロジェクトは不可逆的だよね、と言っています。
RCF法
RCF (Reference Class Forecasting) 法。
これは案件の傾向から予測を立てるため、似たような案件を探してきてプロジェクトの実際の進行を調べてみる、というやり方になります。
詳しく、かつ本を読まずに調べたい方はWikiをご覧になると良いかもしれません。英語ですが。
例えばキッチンのリノベーションをした人が、実際に業者さんに入ってもらったところ、家の内部構造がきちんと作られておらず、補強せざるを得なかったために様々な追加工事が必要になった話がありました。
これを「キッチンのリノベーション」をリファレンスクラスとして過去の事例を漁るとなかなかこういう事例は出てこないかもしれませんが、XX年代に建てられた建物のリノベーション、であれば類似事例はヒットしたかもしれませんよね。
こうすることで起こりうるトラブルを調べ、バックキャスティングなどをうまく使ってプロジェクトリスクを減らしてくようなアプローチでリスク対策ができます。
感想
面白かった!
私も個人的に失敗プロジェクトを調べたり考察したりは好きなので時々やるんですけど、これはもっと読みたいし、なんなら彼らが持っているデータベースを直接みたいと思いました。
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