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ひとさじエッセイ:自律神経のアイロンがけ

自律神経を温めてまっすぐにする話。

うつ病になってからというもの、自律神経の調子が悪いなと思うことが相当増えた。
胸が苦しくて呼吸しづらく、寝付きも悪くて、すごくだるい。
そんな中、ふと近所に銭湯がある事に気付いて通い出したわたしの話。

きっかけはTwitterだった。頻繁に流れてくるTwitterのプロモーションに銭湯のツイートが流れてきた。プロモーションを見かける度にブロックする作業をしていた手もこの時ばかりは手が止まった。
先代を継いだその奥さんがSNSの管理をしていて、銭湯のwebページを見てみると自宅から程近い位置にあった。なんでもコロナ前はイベントに銭湯を貸し出して楽器の演奏会をしたり、カフェの店員が訪れてコーヒーを振る舞う日があったりと積極的に様々な催しを行っていた。生憎最近はそういったイベントもなく、粛々と銭湯を運営しているだけのようだったが、写真で見た小綺麗さや近所にあるということでその銭湯に行ってみる事にした。

合わせて当時、自律神経の乱れに悩まされていた。
うつ病からは立ち直りつつあるも、息苦しさや怠さは続いているし、低気圧の日には動けなくなってしまう始末。
最近は上手な風呂の入り方も身について頻繁に風呂で体を温めつつも、どうしても辛い日が出てくるものだから、広い湯船で足を伸ばしてみるのも良いかと件の銭湯まで足を運んだ。

シャンプーリンス、ボディーソープ完備、無料の貸しタオルもあり。
手ぶらでどうぞ!というwebサイトの文句通り、1,000円の入ったがま口財布だけで銭湯へ向かった。
下駄箱の鍵と交換でロッカーの鍵をもらい、見慣れない顔だったからか文庫本を読んでいた番台さんから「タオル使いますか?」と聞いてもらえた。
広い脱衣場で裸になる慣れない恥ずかしさを堪能して浴場へ。

こちらの銭湯は40度ほどのぬる湯と、46度のあつ湯、そして20度前後に保たれている水風呂があった。既に4人ほど浴場で体を洗ったり髪を洗い流したりしている。
普段は全く銭湯に来ないので、恐る恐る体を洗い、ぬる湯に浸かった。
家で浸かっているお風呂より若干熱いくらいの湯だった。温度計は40°になっているけど体感だと全然わからない・・・。
広々と足を伸ばして浸かれる湯船に満足しつつ、もう既にのぼせを感じ始めていた。
以前のお風呂の記事でも書いたが、あっという間にのぼせてしまうタイプなのでふと目に入った水風呂に入ってみた。

あ“〜〜〜〜すごく気持ちが良い〜〜〜!!
スゥ〜っと体が冷えていく。その昔、水泳部に所属していたのだけれど、当時湿気もまだある茹だるような暑さの中、入水した瞬間がこんな感覚だったな〜とぼんやり思い出した。
それと同時に、最近巷で人気のサウナを思い出した。
ここ数年くらい、「サウナが人気!」とか「サウナで整う!」なんていう言葉をちょくちょくみかけていて、「なんだよ整うって・・・」と日本語の怪しさにヤキモキしていた。
サウナでいえば、サウナルームに入って、水風呂入ってを繰り返すとのことだったので、今自分が来ている銭湯でも同じことをしてみようと、水風呂で冷えた後はまたぬる湯に浸かり直した。

さらには医療系の学校に通う後輩が言っていたことも思い出す。
「先輩、末端冷え性なら熱い風呂に入った後冷たい水をかけるのを繰り返してるとマシになりますよ」
血行が促進されて冷えにくくなるそうな。考え事しているうちにまたのぼせてきている気がして水風呂に入る。
最初につかるぬる湯も気持ちがいいけど、水風呂がそれ以上に気持ちが良くて、水風呂に入るためにぬる湯に浸かっていると言っても過言ではなくなってきた。

そのうち、どのくらい熱いんだろうと気になったあつ湯に足を突っ込んでみるも
「アッッツウウ!?」と声が出るくらい熱かった。タイル壁の浴場に自分の情けない声がこだました。

ぬる湯と水風呂を行き来していると永遠に入ってられる気がしたけど、かいている汗の量を考えるとそろそろ出たほうがいいかもと、入浴して40分くらいで銭湯を後にした。

銭湯を後にし、帰路についている最中にも早速銭湯の効果を感じた。
湯船と水風呂を行き来して血行が良くなり、体はほかほか。なんだか呼吸が通る気がするし、気分が軽い。
例えていうなら「自律神経にアイロンを当ててまっすぐになった」気がした。

はは〜これがみんなが言う「整う」と言うやつ。でもやっぱり「整う」というとなんだか違う気がして、「気分がまっすぐになった」とする言い方をしたい。

今回銭湯から帰ってゴロゴロしていると、湯冷めと共に心地よい眠気がやってくるのも感じられた。
ここの銭湯は、軟水の天然水を汲み上げて備長炭風呂で提供しているとのことで、湯冷めしにくくなっているそう。お風呂に入った後、湯冷めしてくることで眠くなると言われているが、今まではなかなかその実感を得られずにいた。

それからと言うものの、今度は水分補給用の飲み物も持っていくようになり、ワクチン接種のために箱ごと購入したアクエリアスを持っていき、1回の入浴に1時間くらい、それを週2回も続けていく様になった。
効き目は抜群だった。水風呂も気持ちが良かったし、自律神経がアイロンがけされてまっすぐになり、眠気もちゃんと来る。ほかほかしながら涼しくなってきた帰路につくのも心地よかった。
そのうち徐々にあつ湯にも浸かれるようになり、なおさら水風呂が気持ちよく感じる事ができた。
それこそ低気圧が酷かったり、しんどいなと感じる日も行くようになり、多い週は1週間に3日ほど足を運んだ。

そのうち自分のシャンプーやコンディショナーを持ち込むようになり、そのためのスパバックも購入してみたり。
自分でも笑っちゃうくらいに銭湯にハマってしまった。

自律神経が最近ちょっと・・・という方は、是非湯船と水風呂の行き来を試してみて欲しい。

その後引っ越しを繰り返し、件の銭湯には通えなくなってしまった1年後。
通っていた銭湯によるInstagramで久しぶりの投稿が「長年のご愛顧誠にありがとうございました。〇月×日をもって閉店いたします。」という物悲しい通知を見て、過去の自分の居心地の良い部屋に思いを馳せると同時にあの広くて立派な銭湯にも恋焦がれるような気持ちを感じた。

※湯船と水風呂の行き来による血行の促進は心臓に負荷が掛かるため、心臓に疾患のある方は医師に相談・確認の上行ってください。

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