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お金の向こうに人がいる

今回はお金の向こうに人がいる(田内学著)をもとにお金の仕組み、お金と労働について考えていきます。
本書を読んで、お金の正体についてお恥ずかしながら全然分かっていなかったなと感じました。あらゆる方に一読をおすすめします。

AIによる本noteの3行まとめ

  • お金は誰かの労働力を使うためのチケットであり、お金を使うことは誰かに働いてもらうことと同じである。

  • お金があることで知らない人にも労働をしてもらうことができるが、顔の見えない人との関係は労働の無駄使いや浪費を招きかねない。

  • 効用と価格は必ずしも相関しない。価格だけでお金の価値を判断すると労働の浪費が生まれることがある。

①消費しているのはお金ではなく、誰かの労働力

私たちは、お金を持っていれば多くのものやサービスを購入することが出来ます。では、このものやサービスは何でできているのでしょうか。それは誰かの労働力と自然資源です。つまりお金とは誰かに働いてもらうためのチケットであり、お金を使うとは誰かの労働力を使うという事です。

②お金によって「糸」と「壁」が生まれる

家の中で、家族に家事をしてもらったり、何か手伝ってもらったりする際、多くの場合お金のやり取りが発生することはないかと思います。つまり本来、誰かに労働をしてもらう際、必ずしもお金が必要なわけではない、ということです。しかし、お金があることで、知らない人にも働いてもらうことができます。これがお金によって生まれる「糸」です。一方で、顔の見えない人と繋がる分、誰の労働を買っているのか、がどんどん見えなくなり「壁」にもなりえます。これによって、「再配達は無料だからいいか」のように労働を無駄使いすることにつながったりし、労働の浪費や無意味な労働が生まれることにつながってしまいます。

③「効用」と「価格」 お金の2つの価値

効用とはお金を使うときの方で、価格は売るときの価値です。一万円のワインがあったとして、一万円は売るときの価値であっても、効用てしての価値とは必ずしも相関しません。なぜなら、千円のワインの方が好きだという人もいるからです。しかし、この効用としての価値は、価格と比べて、測定することができないため、価格のみがお金の価値を示すものになってしまいがちです。例えば、高価なもの=価値がある、安くなっている=コスパが良いといったことです。これによって効用のためではない労働が生まれてしまいます。

④投資のほとんどは転売でありギャンブル

投資とは本来、未来のために行う活動です。しかし、多くの場合はそうなっていません。例えばある会社で株を購入したとして、その株は何に使われるでしょうか。多くの人がその会社の設備投資や商品開発に使われる、と思われると思いますが、多くの場合違います。なぜなら、株式の売買は、コンサートチケットの転売のようなものだからです。コンサートチケットが1万枚発行されたとして、そのうち一枚が定価より少し高く転売され、それを購入したとしたら、その購入した代金は誰のものになるでしょうか。転売した人のものですよね。つまり、転売されたものを買っても、もちろんコンサート主催者には1万枚のチケット分以上の金額は手に入らないわけです。同じようにほとんどの場合、転売された株式を購入しているため、発行元の企業にお金は入らないというわけです。つまり、株式投資は多くの場合、企業の応援ではなく、誰かに転売し、差額を儲けるギャンブルになっているということです。

⑤経済効果の正体はお金の移動

経済のために、経済効果、という言葉は巷でよく聞かれます。例えば1.6兆円の経済効果という際の経済効果とは何を指しているのでしょうか。それは1.6兆円分のお金が移動した、ということでしかありません。ただこの移動には、感じられる効用が少ないものも含まれている可能性が十分にあります。例えば新紙幣発行を行うことで多くのお金が動くが、実際の効用は偽造防止であり、移動しただけの効用があるのかは怪しい。しかし、移動した分だけ「経済効果」、「雇用の創出」という良さそうな言葉でまとめられてしまいます。また、より壊れにくいテレビをつくる、といったことも効用を増すことですが、移動が少なくなるので、経済効果は少なくなる、と言われてしまうわけです。
しかし本来の経済とは経世済民であり、豊かさをもたらす活動なので、「お金がいかに移動したか」ではなく、どれだけ効率的に効用が生みだれるようになったか、どれだけ労働を蓄積できるか(未来も使えるものを生み出すか)、という「効率」と「蓄積」に注目することが重要です。

⑥借金した国ではなく、働かない国がつぶれる

国の借金がXX円もある、政府が借金をするせいで、将来世代がつけを払わされると良く言われます。例えば政府が1500億円借金して、国立競技場を設立すると、1500億円を将来世代が税金として多く徴収されるのではないかと言われました。しかし実際は、1500億円は国立競技場設立に向けて、企業や個人に支払われることで、労働が生まれます。つまり1500億円は消えるわけではなく、政府の財布から企業や個人の財布に移動しただけなのです。なので、将来世代は、1500億円を社会全体で共有している上に、過去世代の労働力を使って設立された国立競技場もしようできるため、実質失うものはないということです。
しかし、このお金が「国外」に支払われる場合は別です。つまり労働力を国外に頼ると、そのお金を得た国が将来の自国を働かせる権利が得られるわけでなので、十分な労働力を提供できない場合は、破産してしまうということです。

⑦お金の向こうの人を見る

お金の正体は労働力である。つまり自分がお金を使った先に、誰かの労働があり、自分の労働の先に誰かのお金がある。これをお金と自分という関係性に閉じず、お金の先の「人」を見ることで、自分のお金の使い方と自分の労働力の使い方を改めることができる。できるだけお金を多く稼ぐのが重要であれば、例えば富裕層向けのサービスをすればよいかもしれないが、どう働いてほしいか、また自分がどう働きたいかを考えれば、将来世代の投資になること、根本的な人不足の解消につながることに、労働力を向ける必要に思い至る。

まとめ

組織開発・人材開発を行う立場として、人が働くということはずっと探究していたテーマでしたが、お金と労働を同時に考えると、人間的な充実ややりがいからは遠ざかってしまうと感じていました。しかし、本来的にお金と労働は強く関連しており、本書を通してお金の使い方、労働の使い方について考えることができてとても良かったです。

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