「観る側の視点が大事ということをずっと共有していた」ねんりんピックかながわ2022 PR動画制作秘話【前編】
高齢者を中心としたスポーツと文化の祭典「ねんりんピックかながわ2022」(以下ねんりんピック)が今年の11月に開催されます。SKGはそのPR動画を神奈川県と一緒に制作しました。5月下旬に公開された動画は7月現在までに23万回再生されています。
今回は制作に携わったSKGの助川と、プロデューサーの浦山顕さん、映像監督・編集の関山雄太さん、さらには神奈川県ねんりんピック課の清野修太さんが集まり、動画制作について振り返る座談会を開催しました。
前編はデザイン会社と行政がチームを組んで動画制作に挑んだエピソードをお届けします。
神奈川県知事の「行政だけでなく神奈川県の地域の人たちも巻き込んで作りたいと」という一言ではじまったプロジェクト
清野:昨年10月に「ねんりんピックかながわ2022」の記者発表があり、オリジナルの歌と踊りを作ったことを公表しました。PR動画を作って大会をさらに盛り上げていこうという知事のご意向があって今回のプロジェクトが動き出しました。
浦山:僕は神奈川県が推進する未病改善(注1)の取組を、子どもに分かりやすく説明するヒーロー「ミビョーマン」のプロモーション関係で神奈川県と関わる機会があって、清野さんからご相談をいただいて今回はプロデューサーとして入ることになりました。
助川:その動画の演出を考えるなかで、動画制作の実績があるSKGに辿りついてくださったんですよね。
昔からの友人である浦山さんや関山さんと一緒に動画を作るのは楽しみでした。ラッキィ池田さんが作ったダンスを各市町の人たちみんなが踊るというのはすごくワクワクしましたね。
清野:みんなで歌って踊る動画にしたいというのは知事のアイデアでした。「恋するフォーチュンクッキー」の神奈川県Ver.をYoutubeで公開したときに、とっても評判が良かったんです。知事の中では行政だけでやるよりも、地域のひとたちみんなを巻き込みたいという思いがありました。
助川:関山さんに今回のプロジェクトの話をしたときに、「地域のみなさんのダンスシーンは、各地域で撮影しやすいようにスマホも使おう」と提案してくれました。神奈川県の職員さんや地域の方にご協力いただいて撮影を進めていくので、プロジェクトの全体像をすぐに理解してくれた関山さんだとスムーズに進むだろうとお願いしました。
関山:頑張ってみなさん踊ってましたね。楽しそうな雰囲気も出ていて。でも、清野さんが裏で丁寧にサポートしてくれたからこそできた動画だなとは思います。
とある地域では偶然、馬がカメラの前を横切る場面があるんです(笑)清野さんから「そういうシーンもぜひ使ってください!」と言われて。結果的に面白い場面になりましたよね。
助川:地域ごとに個性が出ていますよね。真鶴町のよさこいチームも動きがキレがあって素敵だったな。
SKGがはじめて行政と一緒にプロジェクトを進めるなかで大切にしたこと
助川:実は直接行政と仕事をさせていただくのは初めてでした。でも行政だからという気負いはなく普段通りにプロジェクトに挑めたと思います。今回のプロジェクトを実施するにあたり、ねんりんピック課さんから知事にプレゼンする場を用意してもらって、僕らのアイデアを直接知事に提案したんです。貴重な短い時間の中でプレゼンをして、その場で合意をいただくという経験が新鮮でした。
関山:プレゼンは、まさにフリップ芸みたいな感じでしたね。
助川:書類をつくって「我々のコンセプトはこうで〜」と説明的にプレゼンするのは、伝わりづらいなと考えました。知事が実際の動画のイメージをしやすいように、絵コンテを紙芝居風に1枚ずつボードにして、「まず知事には走っていただきます!次にみんなが知事に気づきます!次にみんなが集まってきて、知事がカメラに向かってガッツポーズをします!」というようにフリップを次々にめくって動画の構成を再現しました。
清野:私は行政の職員なので、なかなかクリエイティブに携わったことがなくて。ものを作るのはやはり大変だなと思う一方で、クリエイターの方の演出のこだわりや譲れない部分に対する熱意をとても感じました。
ただ、行政としての意向もあり、そのすり合わせが難しいこともありましたね。でも密にコミュニケーションを取り合うことで、お互い納得できるところに、落としどころを見つけることができて、その結果とても素晴らしい動画ができたと思います。
助川:清野さんたちの仕事に限らない話ですが、出す側の都合と観る人の受け取り方にはどうしても違いがあって。観る側としての視点が大事ですよ、というのはどのプロジェクトにおいても共有するようにしています。今回もそういう思いをきちんと共有していたから、お互いに納得する形で、動画を完成させるゴールまで辿り着けたのだと思います。
助川:ラッキィ池田さんや榊原郁恵さんのような著名人の方との仕事って珍しいので、家族や妹、母親にも自慢したんですけど、「で、これの何したの?」と言われて(笑)撮ってるわけでもなく、出てるわけでもない。何をしたの?となりますよね。
でも実際には、こうやって企画して、打ち合わせして、段取りして、たくさんの人にお願いしていっぱいやることがあったのに、誰も気づいてくれない時もあります。
全員:はははは(笑)
浦山:そのための座談会だね、今日は。
「クリエイティブな仕事」というと、完成した作品からとても華やかな仕事のように思われがちです。しかし、SKGの大切にしていることは、クライアントとのコミュニケーションを通して、客観的な視点や課題の本質を共有することだと思っています。
作品を観る側からは見えにくい仕事ですが、このプロセスを必ずベースにすることで、どんなジャンルのクライアントでも同じ姿勢で取り組むことができると思っています。今回の神奈川県とのプロジェクトも、このプロセスを変わらず取り入れたことで、お互いに満足のいく作品になったのではないかと感じています。
後編につづく
▼ねんりんピックかながわ2022 PR動画(フルバージョン)
注1:未病とは私たちの心身が健康と病気の間で連続的に変化する状態を表す言葉。神奈川県では「かながわ未病改善宣言」に基づき、「食・運動・社会参加」の3つを柱とする未病改善に取り組めるよう、市町村や企業等と連携しながら、様々な未病対策を推進しています。(https://www.pref.kanagawa.jp/docs/cz6/me-byokaizen/index.html)
▼座談会参加者(プロフィールは記事の最後をご覧ください)
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