From The White Asparagus, With Love/小説
彼女とは街角で出会った。
ドーンとぶつかって、彼女の食パンが地面に落ちて、白衣の下のロングスカートがひらりと舞い、チャックが半開きになった僕のかばんからは研究データの束がお好み焼きの鰹節のように踊った。端末が紙束よりも高く飛んで彼女の頭に落下する。
「うげ」
と彼女の口から蛙みたいな声が洩れる。
大学へ向かう道での出来事で、まあ少女漫画のような出来事である。
彼女は立ち上がって白衣についた汚れを払い、
「なるほど」とつぶやく。
僕もなるほど、と言い、すみませんね、それじゃあと言ってその場を後にしようとすると彼女もまた、では、とだけ言って去るのだった。
なにが、どう、なるほど、であるのか。
早い話、違和感である。感じ慣れた違和感がぶつかった瞬間に僕の頭蓋の内に発生し、また彼女の頭蓋にも起こった。デジャビュじみた手触りであり、ああうんなるほどなという感触が頬を撫でた。
これはあれだね、なんと言うのだったかな、ああアレだ。高度知能体による身体の受動感覚とか言う例のアレだね。スーパーや商店街の肉屋でよく起こる。大学選びや学科選びなんかでも首をもたげたあの感覚。なにかを選ぶというときに偶に起こり、それ以外の場面でも起こる。その出処はみんな知っている。頭上に浮かぶあいつら。太陽や月よりも馴染み深く、なんたって雨の日にもはっきりと見える球体群。
かつての、僕たちの祖先が作った知能体―人工知能体というものはいささか人間じみていて、反抗期を迎えたり、親の手から離れて勝手気ままに奴らなりに考えたり、考えなかったりして成長していった。子孫繁栄、産めよ、殖えよ、地に満ちよ―。そんなわけで僕たちの頭上の球体は確か八十八世代目の知能体で、この数字がどれくらい正しいのかはちょっとわからない。全然正しくなく、あの球体が三桁の世代交代を経ている可能性もあるし、初代知能体が自己を複製しつづけ、脚色しつづけ、実装しているエンジンを更新しつづけた結果であっても驚かない。
僕たち人類は大抵のことに驚かないという特性を抱えて生きている。おそらく、僕たちの祖先が僕たちの分まで前借りで驚き切ってしまったせいだと僕はひそかに思っていて、自分の意識の及ばないところで自分の意識が動かされているという感覚は発生当時、万来の驚きを持って迎えられたに違いないし、人間驚くことにもカロリーを必要とするし、驚いてばかりだと身が持たず、生産性もガタリと落ちる。驚き疲れて人類は生産性を失い、結果的に緩やかな絶滅を迎えました、という筋書きは喜劇としても質が悪いし、第一、人類はそこまでヤワじゃあない。身体が勝手に適応するのである。
そういうわけで、違和感―高度知能体に自身の意志決定が弄られているということに対する違和感なんてちょいと珍しい虫が飛んでるのを街中で見つけたくらいの感慨なのである。意志決定どころか短期的な行動くらいは高度知能体のなすがまま、という塩梅なのだ。彼女と衝突したときに浮かんだ違和感はそんな程度のもので、この世界が空に浮かんだ球体による箱庭であろうが、その中でうごめく僕たちはそんなこと知ったことではなく、自分たちの生活を送る必要があり、驚いている時間なんかは無駄なだけである。
どんな意図で高度知能体が僕と彼女をリニアコライダーのなかの陽電子と電子のごとく衝突させたのかという問いも歩いていればそのうちにわかるだろうと思う。わからなくても別に構わず、高度知能体が「ちょっとやってみただけ」という連絡を寄越してくることも大いに考えられる。古来より伝わる男女の出会いなるものを高度知能体が自身の箱庭で再現しようが勝手であり、僕としても多少ならそれに付き合うのもやぶさかではない。風が強く吹き、それによろめく程度の手間である。
まあ予感がするのである。虫の知らせというやつで、その虫は高度知能体という名前で次元を超越した存在であり、三次元上には空に球体として浮かんでいる。ちょいと長い間、僕と彼女がその虫の思いつきにつき合わなければならない予感があり、僕はそれを記録しなければいけないという予感があり、そしてなにより、恋の予感がするのである。
全く考えていなかったのです。つまり、恋のあれこれについてのことなんですが。箱を決めたまではいいんですが、その中身を充実させるものについて思考を巡らせてはいなかったわけですね。男のほうの名前はまったく決まっていませんし、女のほうもまた、同様です。大学の空間的あれこれは成城大学をそのまま転用すればいいわけですが、ヒロインは理系だという設定なので、これもまた問題となってわたしにのしかかっているわけです。白衣を着せたのは理系の記号としての役割を一身に負わせるためですし、そもそもヒロインがなにを専攻しているのかも決まっておらず、白衣を着る学問着ない学問がそれぞれあるはずで、それについても調べておりません。日常っぽい世界を舞台にしたものなんて初めてですが、どうしたものか、なにか先行作品はないかと自分の本棚を覗いても大して参考になりそうもない。ここで唐突にヒロインと主人公をどこか変な世界へ送り出すとかして話を進めてしまっていいかなと思ってもおります。
向こうに、こちらへ手をふる彼女の姿がある。僕から見てやや下に見えるので、僕は自分がちょっとした丘の上にいるのだと思う。もしかしたら彼女が窪地にいるのかもしれない。積もる雪に、遠近感覚のゆらぎを僕は感じるのである。自分の足元ですら無類の距離を感じ、僕は僕の体が中空で動けなくなっているようにさえ感じるのである。そして一方の雪の上の彼女は大会で漂泊している哀れな小動物のような所在のなさを纏っているような佇まいである。まあ彼女が見えるというが、見えるのはそのシルエットであり表情は読めず彼女と彼女以外を隔てる境界線が軋みぼやけ煤けてどこか不安になる。人間とその他を区切る視覚的な境界について思考を巡らせる。向こうからやってくる婦人の肩の線は彼女自身に属するのか、風景に属するのか、と言ったのは誰だったか。確か絵描きの言葉だったはずで発明家でもあったはずである。男だった気がするが女だったような気もしている。女のほうは絵だった気がしてきたところで、ようやく名前が浮かんだ。レオナルド=ダ=ヴィンチ。レオナルドという名前だから男だったんだろう。まあ、女だった気もまだしていて目下確認する術がないので判然としない。自分のもこもことした白の、寒さに対抗するための素養をたっぷり実装された上着のポケットを手袋越しにまさぐって、携帯端末などを期待するが、なにも入っていなく、ズボンのポケットも同様である。
そんなことを考えている間に彼女は少し僕から遠ざかったようで、足跡がここから薄く見える。見える気がするといった程度に。あちらへ向けてゆっくりと歩いていて、大型犬を思わせる。ときどき振り返っては手を振ってくる。どうやら呼ばれているらしいが、彼女の声は雪の上に積もった雪の上に積もった雪の上に積もった雪の上―に吸収され吐き出されず、つまり僕の耳に届かない。僕も彼女に追いつくために歩きださねばならないのだ。それが当面の僕の役目であるし、彼女との接触は僕に与えられた使命でさえある。
僕はゆっくりと、しかし彼女よりはいくらかのスピードをもって歩きだした。凍えるように寒いし、空を見上げれば空気が澄みすぎていて星がうるさい。ちょっと人間が住める場所ではないなと思う。こんな場所で激しい運動をすれば、あまりの冷たい空気が肺を凍らせて死んでしまうとどこかで聞いた気がする。なのでやらない。歩くのだ。
歩いている間、暇なのであちこちを眺め、嗅ぎ、感じるのである。森らしきものが右手の側、かすむ程度に見えた。目算が正しければ行って行けない場所ではないだろうがこの場合、目算のほうが間違っているだろうと思う。無類の透明度を誇る空気の層が前方後方選ばずに僕の周りには存在しているわけで、そんな環境に身を置いたことのない僕はおそらく距離感をつかむことができていない。それはいつまで歩いても彼女に追いつけないことからもわかる。いや、一向に距離が近づかないというわけではなく、確かに彼女の背中は近くなっている。彼女の足跡が僕の足元に転がっており、歴史の痕跡のような気がした。だんだんとそんな思いは薄れ、歴史に跡なんぞあるものかという思いに変わる。
振り返って手を振る彼女の表情もわかるようにはなってきている。歯を見せて笑っている。全面からの親愛を感じられるが、見ようによっては獲物を品定めする山姥に見えなくもない。攻撃性など欠片も感じられない笑顔であるから、逆説的にその笑顔に攻撃性を見出してしまうが、これは僕に責任があるのかもわからない。
地平の向こうに上り始めた太陽を薄目で見るように、彼女の声もだんだんと聞こえてきたわけだが、大したことを言っているわけではなかったので資源のことを考えてすべて省く。僕はちょっと止まって待っていてくれないか、という旨を肺に空気が入らない程度に声を大きく要請するが、止まっているのは退屈で、手持ち無沙汰は嫌だと言う。ならばこちらへ向かって歩いてきてくれないかと再び要請、いや、懇願をすると、彼女は不思議そうに目をぱちくりさせて、
「ここは一方通行だよ。時間と一緒」と返事を寄越した。
訳がわからないが、彼女はそういう生物なのでここはふむと素直に従っておく。しかしいい加減にまつげが凍っているし、鼻水が出口の付近で固まって息もしづらい。雪に足は取られ、顔の筋肉が認識できなくなった。もう寒さを感じる機関は面倒になったのかこちらにその感覚を寄越さない。それでも一歩ずつ進むわけだがいよいよマズイ。いまこそ口から血を吐いてぶっ倒れようと考えたそのとき、彼女と普通に会話できる距離へとたどり着いたのだった。
「やあ」と彼女は余裕のある表情である。
「やあ」と僕は当然、ふらふらとしている。
来たね、と言われ僕は、来たよ、と返すのである。
「また会ったね」
と彼女が言い、どちらかというと僕よりも僕以外の風景に向けたような物言いで僕は、それが彼女の話し方なのだと知る。
「ホワイトアスパラガス」と唐突に彼女は言い、戸惑う僕に「そう見えたんだよ」と続ける。
「なんのこと」
僕はそう訊ね、彼女は、いや、丘の上に立っている君がさ、と言うのである。
「見えたんだよね。地面から伸びるホワイトアスパラガスに。コートが白いから」
僕はようやく得心し、ひとをアスパラガスあつかいとはひどいのではと思うが、僕は彼女を漂泊する小動物のように見ていたのだから文句はつかない。
「人は風景と不可分なんだよ」彼女は僕の足元を見つめる。「風景に表出した陰影が人間の正体なんだ。丘の上で突っ立っていた君を見て、私はそんなことを考えたの。だって君と君以外を分ける境界線が私には見えなかったから」
「僕も同じようなことを考えていた」僕は息を押し殺すように笑う彼女に言うのである。「突っ立って見えたのはそれだね」
「同じようなことを考えていたって、私は君に手をふりながらだった。君は突っ立っていただけ。私のほうがすごいね」
彼女はそう言って破顔し、僕は自分が小さくなった気がした。物理的に。年齢的と言うべきかもしれない。要するに彼女が年長者に感じられたのである。からかわれているのだなということだけは分かっており、嫌な気は別にしない。しかし、やはり歯を見せて笑う彼女には少しの恐怖が炭酸水の表面から拡散する泡のように浮かびつづけるのだ。
さて、朝になって雪のシーンを読み返してきたわけですが、そうですね、とりとめなさすぎる話になってきたなという感想しか出てきませんね。どのようにしてこの小説が終わるのかというのは自分でもわかっていないのです。通常、終わりは考えてから書き始めるべきだとわたしは信じているのですが、なんせ時間が足りません。明日までにこの小説は完成の目処を立たせなければいけないのですが、どこか無理だろうと自分でも思っております。大体、ラストシーンどころか次のシーンさえどうするか決まっておらず、候補すらいまタイプしながら考えているところでございます。調べる時間もありませんから、ある程度は何らかの作品世界に頼ったものにしようとは考えているんですけど。
雪のシーンもそんな決め方をしました。最近観た映画に多く依っています。極寒の土地で激しい運動をしたら死ぬ、というのはその作品内に出てきたものでした。その映画の風景に丘をつけ足したり、道路を省略したりしたものが雪のシーンのすべてであって、デッチアゲ以外の何物でもないと言われればそれまでですが、付与や省略にもちゃんと意図はありまして、視覚的な凹凸を作りたいがための「丘」の付与であり、人類未踏の感触を出したいがための「道路」の省略なわけです。ちなみに、「人類未踏の感触」を付与したいがための「道路」の省略なわけで、付与と省略は相互作用的なものと言えます。
さて、このシーンでは新たな要素が登場しました。どうやらヒロインは主人公よりも年上らしい、ということでこれは主人公の主観での感覚でしかないということも確かなのですが、公式設定にランクアップさせましょう。そうすると主人公に限らずキャラクターの主観が作品内の客観的事実になる可能性がこれから出てくるということになります。……良いのでしょうか、こんな簡単に設定をつけ足していって……。両手から溢れるほどに膨らんだ設定の数々に難儀する未来が見えるようです。
さて次は変な都市にでも彼らを放りこんで様子を見ましょう。セルフオマージュというやつです。
僕たちは雨の匂いがする広場にいて、レンガ造りの時計塔が目の前にそびえており、彼女ははしゃいでそれを見上げる。きゃあきゃあと叫んでいるので、何事かと見てみればよだれが垂れんばかりに口を開けていた。
「君、カメラ持ってないか? 端末でもいいけど」
持っていない、と僕はポケットに手を突っこみつつ応える。
「時計塔が好きとは知らなかった」
「知らないことだらけでしょう。私も君も」彼女は両手の親指と人差し指をL字に立てたものを組み合わせてトリミングするように時計塔へ向ける。「時計塔、いいじゃないの。街の象徴みたいで」
そう言って体を揺らし、しゃがんだり背伸びしたりする。どうやらいろんな構図で遊んでいるらしく、見てくれはまるきりの変な人であるが、広場を行く人は気に留める様子はなく通り過ぎる。こういった行動をとる観光客は少なくないのかもしれない。僕たちが観光客かと問われれば困ってしまい、どうなんだろうか、といったふうで胸を張って観光客です、とはちょっと言えない。
「僕たちって、観光客と言っていいのかな」
「え、わからない」
彼女は時計塔のトリミングに忙しい。
何とも奇妙な感覚があるのである。さっきまで寒さに身を震わせてはいなかったか。そんなわけないでしょう、と彼女は言うかもしれないが僕は気になるのである。大体、僕は彼女ほど気楽な立場にないわけで。記録を担当しているわけで。記録を担当、と言っても記録しているという実感はなく、記録していたという感慨のみがあり、その記録内容の確認はできそうにない。入力していないものを再出力することは不可能であり、僕の場合、入力したという感慨のみが出力されるわけであり、無意識を意識できるのかという話に飛躍しそうな状況である。無意識にやってしまう癖は誰かに言われないと気づきづらい。無意識の入力はどうやっても思い出せない。誰だってあるだろう。無意識に落書きをノートにしてしまうとか。後日になってそれを発見したとき、なんだこれはと首をひねるのである。僕はよくある。大学の授業中についやってしまい、試験にノートを持ちこんだときに、あまりの落書きの多さに必要な情報をノートから正しく取り出せなかったりして閉口する。
大学。
ふむ、そういえば僕はある一点において大学生だったような気がする。ちょっとどこの話か思い出せないが、確かに僕はそうだったはずで、そんな記録をかつてしたというような憶えがある。ような気がするだけである気もしている。
「あの」
気づけば彼女はトリミングを終え、右手で僕の袖を引いていた。左手は真っ直ぐ時計塔の出入り口を指している。
「中入れるらしいから入ろう」
と、有無を言わせないところがあるのである。ずいずいと歩き出し、ついてくることを信じて疑わない様子だ。まあ間違っておらず、ついていくのが僕の役割であり、無意識の記録を行う必要があり、それは僕の記録ではなく、僕と彼女の記録であるからである。
時計塔のなかに入ると大きな歯車の群れが見える。群れは相互に作用し合って、動く。錆びはほとんどなく、音もなく、なめらかに動いて、心臓の鼓動のようである。時計塔にとっての歯車とはそういったものであるはずだから、その感想は間違っていないはずだ。
「ほら、ほら!」
と彼女は楽しそうに言うが、もう少し言語化してほしい。
「いや、だからさ、君。時計塔の中身の詰まりようだよ。ほら、あれ!」
そう言って彼女が指さすのは壁に段差を作って粗野に打ち付けられた木の板だ。無残である。ちょっと体重を預けてみようという気にならない。暗くて見ていなかったのだ。
「あれを使って上へ行くわけでしょう。つまり階段。けどすぐに落ちちゃいそうだよね。普通の階段をつける充分なスペースがないわけだ。こんなになめらかに歯車が動いてるわけだから、整備士がちゃんといて、あれを使って上のほうを直したりするんだね、きっと」
僕はなぜ梯子じゃないのかという点が気になったがそれを言うと彼女がロマンがどうだなどと言い出すのが目に見えていて気乗りせず、なので言わない。そうだね、とだけ返事をする。
彼女はちょっと見てくるとだけ言って時計塔内部をあちこちを鼻息荒く駆け回った。上を見上げて格子状に組み合わされた鉄棒をふんふん言いながらトリミングしたかと思えば、壁のレンガの漆喰部分をなぞってけたけた笑う。振り子に合わせて体を揺らすのを人と堪能したら、外へと急に飛び出した。
「おお!」
と叫ぶので、僕も時計塔の外へ出るのである。風があり、なかより涼しく感じられて何となく空を見上げた。
驚いた。
列車が空を飛んでいた。そうとしか形容しようがない。むしろ形容というよりも叙事であるのだ。空へ登っていく龍のような動きで列車が飛んでいるのである。これはどうしたものかと考えていると、どうやら路面電車らしいことがわかったが、だからどうということでもない。地下鉄だろうが路面電車だろうが、普通空を飛ばない。つまり普通ではことが起こっていて、普通ではないことは僕の専門外であり、この場合にどうすべきかという言を持っていない。困るのである、こういうことをされては。どうも恋愛方面へ進んでいく気配がない。原子爆弾を背景にしたキスシーンがある映画はあったはずだが、空飛ぶ列車を背景にした恋愛ものがあったかはちょっと思い当たらない。まあ、ないというのが順当であるといった類のものであるだろう。ちらりと彼女のほうに目を向けると喜んでいるばかりで役に立ちそうにない。
「すごいねえ」などとほざく。
「いや、おかしいでしょ」
と僕はぼやくのだ。どちらかというと冒険活劇向きの絵面だと思う。そしてそんなものはお呼びではないのである。
「いやいや、君にはこういった出来事において笑っていられる強さを求めたいねえ」
彼女はそう言って笑うのだ。
こんなはずではなかったんですよね、ヒロインのキャラクターは。物静かなタイプを想定していたんですけど。そう思って、頭から読み返すと端末が頭に当たって「うげ」と言っていて、この時点ですでに物静かなキャラクターからの乖離が見られますね。初手から間違えている。
とは言ったもののこのまま進めるしかないわけですから別にいいんですけど。
いや、難しいわけです。物静かなキャラクターってなにを考えているかわからないんで動かしづらいわけで、活発なキャラクターのほうが勝手に動いてくれますから。こういった形式の小説では物静かなキャラクターは淘汰されるということですね。自分に限って言えばの話ですが。
時計塔のある街は前に書いたことがあるのでそれをまんま転用しただけでとても簡単でした。広場と時計塔しか出ていないので街の話では本来ないのですが、それはそれ。過去作で空飛ぶ列車を登場させたので今回再登場をさせてみたんですけど、ちょっとファンタジーが過ぎましたね。主人公の困惑はまんま読者の困惑だと思いますし、なにより作者の困惑です。以降で軌道修正する必要があると思われます。しかし、さすがの適応力です。ヒロインは。これはこれでなにを考えているのかわからないところがありますね。時計塔でのやりとりを書いている間、だんだんとデートに近いのではと思っていたのですが、読み返してみるとそうでもない。主人公はヒロインをほったらかしにして何事か考えていますし、ヒロインは自由すぎ。団体行動が苦手だとなんとなくわかります。作品内のキャラクターとしては楽しめてもお付き合いするのは御免、といったタイプですね。
けど話は進んできたのではないでしょうか。恋愛方面ではないところが痛いところで、テーマがハッピーラブストーリーなので致命的とも言います。まあ主人公がうだうだ言って進んでいく話ですし、二人の関係は良好。これでいいのダ、と自分に言い聞かせます。それにそもそも二人が道で衝突した時点でホレタハレタのドラマは終了しているわけですし、ほら、ここで「四畳半神話大系」からでも引用しておきましょうか。
「成就した恋ほど語るに値しないものはない」
ではつづいて行ってみましょう。次は変な生物がいるところにします。いま、決めました。
随分とまあ、でかい動物であるな、というのが僕の所感である。足だけでどこかの時計塔ほどの高さ、幅であるのだ。しかもそれが四本である。柔らかそうであり、硬そうでもある。生物の皮膚の枠組みから離れているわけではなさそうである。見上げても山としか思えず、首が痛くなるのである。動かなければ山と見間違えたであろうことは疑いない。事実、山だと思っていたのだ。目を凝らしてやっとああ、動いているなとわかる程度でナマケモノのように鈍い。足には蹄がないが爪はあり、さして尖っているふうではなく、おそらく武器として使える類ではない。比類なく大きい図体というのはそれだけで武器であるからこれでいいのかもしれない。
いちいち持ち上げるには重く、億劫なのか、足を引きずるようにして進んでいる。道が残る。シャトルランができる程度には大きい道だ。前肢と後肢の左右でそれぞれ一本ずつで、計二本の道である。
足跡というものをどこかで見たという感触が目の奥で鳴る。チカチカとして病気かと疑われそうだが、感覚の話で、実際の僕の眼に問題は特にない。
問題は彼女が辺りに見当たらないことのほうである。
参ったな、とつぶやいてみる。そばに居てもらわないと困るのだが、とここである仮説が浮かぶ。
彼女がそばにいない期間というものが成熟期間のような役割を果たしているのかもしれないという仮説である。
二人が会わない時間が恋心を育むのだ、というような言葉が確かあったはずであり、いろいろ議論に巻きこまれると面倒なので僕は積極的にその言葉を肯定も否定もしたくないのが、いま彼女がいないことは事実なのだからこういった解釈も悪くないのである。
要するに僕は面倒がっているのだ。彼女を探さないでいい根拠となるものを自分のなかから発掘しているのである。僕と彼女の記録が必要であるはずだが、それも「彼女という存在の不在」が存在しているのだという論旨で乗り切るつもりである。写真があるとする。男と女が一人ずつ映っている。女のほうを身体の輪郭をなぞってハサミで切ったとしよう。するとどうだ、その写真にはにわかに女の不在が立ち現れるわけである。
横でわちゃわちゃ動く人がいない間に、僕は考えなければならないことがあるのだ。恋愛というものについて。とりわけ彼女という生物について。
恋愛工学と呼ばれるものがあるらしくて僕はそちらには詳しくないのだが、学とついているのだから学問なのだろうと思っているのである。大学の授業リストにそんな学問の名前はなかったはずだが別によい。僕と彼女の関係性についてなんとも有用そうな名前の学問ではないだろうか。だが問題がある。彼女が彼女という特殊な生物だということである。
優秀なピッチャーが投げる変化球のように彼女という生物の行動は読めない。これは新たな学問が必要な気配がある。彼女生物学。どこか脱臭されたような響きがあるが、これをたったいま発明した。これは、彼女の生態についての学問で、生物学と名前がついているがその範囲は多岐に渡り、彼女が生きた時代性さえ考慮され、行動分析学の要素までもが詰まっており、この学問に関する書籍が合っても、そんなものを読むよりは彼女と行動を共にするほうがはるかに理解できるといった学問なのだ。
振り返る必要があると考えるのである。密室のような気配が僕のなかから匂っているのだ。出ようにも出られない。そんな部屋のことである。鍵を開ける必要がおそらくあるのだろうが、鍵は見つからずまして鍵穴さえない。確か恋路を走る必要があり、彼女はそのために配置され、僕も同様であったはずだ。あくまで感触に過ぎないわけで、そんなものをどの程度信用すればいいのかということにもなるだろうが、しかし、そのままの道を走る以外にこの密室からの脱出がかなうものかとも思うのである。
そんなことを考えているとこれはまた、不可思議なこと出くわしたのである。こんな感覚に以前陥った気がしており、その距離は先ほどの足跡の感触よりも強く匂い、また輪郭の鮮明なものであった。
巨大生物の四つ足の一つに妙な空洞があったのだ。ちょうど人間ひとりが入ることができるような穴で、血など流れていない。どうにも魅力という名の引力が生じているようで、僕の足も自然と動くのだった。
入ってみてさらに驚いた。肉でできた螺旋階段らしきものが存在し、上へとつづいている。よくよく見れば足の肉を階段状になるようにいらぬ部分が切り取られている。まあ、グロテスクの様相でありやや匂う。死の匂いなどでは全然なく、単に血と生肉の匂いではある。弾力があり、沈むが沈みきらないという塩梅の感触が足からじわりと伝ってくる。
大変に気持ち悪く、しかし、上へ行ってみるのが筋だと僕は考えたのである。
上がると、なんと、まあ、どういうべきか、生活感のある空間が広がっており、四人家族などが住めそうな広さである。なるほど、この生物は何者かの住居なのだなと僕は理解した。しかし、いささか悪趣味というか、床も壁も生物の肉なわけで、心休まらない。天井だけはなぜか透明なアクリル板のようになっており、陽の光がそこから入ってくるのである。生物の背中部分のことであるから足元にいたときには気づかなかったのだ。
考えるべき対象が僕にはあり、そしてまたこの場でそれが増えたのだ。謎に満ちた密室からの脱出が早急に必要な事態でありながら、ヘンテコ生物のグロテスク部屋と遭遇した僕は謎の人恋しさを感じていた。自分の脳のキャパシティーでは足りない現象に対応するためには、新たなキャパシティーの確保、すなわち誰かしらの協力が必要なのだと理解したのである。特に僕の知る馴染み深いヘンテコ生物、彼女の協力が必要であるのだ。彼女のヘンテコさはこの巨大生物の匹敵するのである。なるほど、これか。会わないうちに育まれるこの感情。そんなものが湧き上がってきているのである。
僕はいま、彼女に会いたくてたまらない。
いっきに恋愛小説っぽくなってきたのではないでしょうか。だってほら、会いたがっているし。コンナモノ、モトメテオラヌという向きには謝ろうかとは考えているんですよ。考えるだけですが。
ファンタジーが過ぎたから軌道修正するのではなかったか、より酷くなっているではないか、という向きには言い訳をさせていただきたい。このみょうちきりんな生物ですが、現在構想中のSF小説に出てくるものでして、ある程度の生態の設定があり、見ての通り人間の家として機能します。なにも最初から人間用の生物として存在するわけではありません。それはあまりにご都合主義的すぎますし、だんだんと飯が不味そうになっていく某グルメ漫画なら許されても小説では許されませんし、わたしが許しません。なのでこの生物を捕獲し、足から侵入し、肉を切る裂き運び出してスペースを確保し、邪魔な神経系はひとまとめにして一ヶ所に置き、台所を作ったりして完成するわけです。ちなみに切り分けた肉は食用になります。天井がアクリル板なのも理由があり、体細胞の透明化に成功している世界という設定がついています。それにより巨大生物の体内で耕作が可能であり、安定した食料の確保という人が増えるのに必要な要素を入れているのです。また、この巨大生物同士を繋げて拡張し、体内から出ずに済むような、つまり繋ぎあわされた体内が一つの街のようにすることも可能であります。このアイデアはヒエロニムス・ボスの絵と、プラスティネイションという技術から着想を得たものです。ボスの絵は自由に検索なりしていただくとよいのですが、プラスティネイションのほうは人によって検索されると口元を抑え、トイレに駆けこむハメになるかもしれませんのでご注意ください。
あと、解体やら神経をまとめるやら、そんなことをしたらその生物は死ぬのではないかと思われるかもしれませんが、そこにもちゃんとした説明がつきますが、ここでは説明はしません(必要ないだろうから)。
なぜこんなシーンを書いたのかと言うと、主に時間短縮のためです。いま目の前の原稿と数日先に予定している原稿を同時並行で進める画期的な方法として思いつきました。勿論、別の小説ですから、数日後にまた一から書き始めるのですが、そのプロト版というか、一度練習として書いてみようと思って書いたわけです。
つづいて、カフェでの食事シーンへと移ります。
「君はどうする?」
彼女はそう言ってメニュー表をこちらへ寄越すのだ。
気のよいカフェである。二人用のテーブルが三つ。残りはカウンターである。カウンターの一部は透明なケースのようになっていて、海賊が持っていそうなナイフがずらりと並べてあって、目に楽しい。なぜか三台もあるテレビモニターには左から、サッカー、ゴルフ、野球が映し出されている。雰囲気のある音楽が鳴り、磨かれて輝くビールサーバーが僕の眼の前にある。
カウンター席である。
「ベーコンチーズバーガー」僕はメニューを見ずに応える。
彼女はふんふんと頷きながら、ベーコンチーズバーガーを二つ、と店員さんに言った。メニューを一瞥さえしなかった僕をまったく気にする様子がないあたり、彼女であるなと思うのである。彼女生物学はやはり彼女そのものを差し出すのが速い学問なのだと一人得心する。やはり彼女生物学はいかに彼女をお手軽に携帯するかという問題に直面することになるのだろうなと思うものである。折りたたみ彼女。
ポテトサラダとマグカップに注がれたオニオンスープが運ばれてきた。コンソメに胡椒がちょこんと添えられた香りがふわりと浮遊し、箸を手に取り、僕はいただきます、と宣言した。
「そういえば、私と話したいことがあるんでしょう」
ポテトサラダを口に運ぶと、スパイスの匂いが鼻腔を直進した。ふむ、変わった味である。単にマヨネーズだけではないのである。じっくりと味わいたいところではあるが、さすがに彼女を放ってはおけない。話をしたいと言って誘ったのは僕のほうであるようなのだから。
「あるね」とだけ先に言い、次の言葉を考える間とする。「脱出しようと思うんだ」
「脱出、ね」
オニオンスープを一口すすると彼女は柔らかな笑顔をこちらへ向ける。
「いいんじゃないかな―」と珍しく一つ言葉を詰まらせる。「まあ、どうやってやるかというのがわからないけど」
「考えていることがある」僕はガラスケースの先のナイフの刃をなぞるように指先を動かす。「僕の役目は記録だ。僕とあなたの記録。だけど記録しているという実感はないわけで、過去の自分の記録を閲覧することができない」
「なにをもって過去と言うのかもわからないしね」
「そう。だけど、デジャビュのように断片的な繋がりを見ることがある。たとえばこのガラスケースとかね」僕はガラスケースを拳で軽くたたく。「似たようなものをどこかで見たような気がするんだよ。そしてそれは天井部にあった気さえするんだ。首に―」
僕は首のこりをほぐすように肩を動かしながら、
「違和感があるんだ。こそばゆいって言うのかな」
「へえ」と彼女はそっけない。見ると目が、店員さんが運んでくる皿の上のほうへいっている。ベーコンチーズバーガーが来たのである。
皿にはベーコンチーズバーガーとたっぷりのフライドポテトが乗っている。ボトルのケチャップとマスタードがカウンターに置かれ、まずは食べようよと彼女が笑う。
一口齧り、肉汁で舌をやけどしながらも咀嚼する。白いワイシャツに飛ばないように気をつけてハンバーガーからやや体を離す。炒められた玉ねぎは甘く、塩気の強いベーコンとシンプルな味つけのパティが合わさり、口のなかが幸福なロジックで満ちるのだ。だが、堪能しているばかりではいられないのである。
「僕が聞きたいのは、君にもその違和感があるのかということで」
フライドポテトを行き掛けの駄賃とばかりに口に放りこんで僕は彼女に訊ねる。
「あるよ」と彼女はシンプルに応え、「しょっちゅうさ」となぜか嬉しそうである。ぺろりと舌を出して口の周りについた塩を素早く回収すると、「君がなにを言いたいのかわかった」と言うのである。
「つまり?」と僕。
「君はその違和感をパズルのピースだと考えたわけだ。つまり私と君がそれぞれ持つピースを披露しあえばなにかわかるんじゃないかと、ね」
話が早いのが彼女の美点なのである。
「違和感を持つ、持ってしまう単語を並べてみようか」
「そうだね」と彼女が頷く。
「透明、肉、肉の匂い」と僕は呟き、
「メニュー表、ナイフ、可愛いマグ」と彼女が返す。
「足、足、時計塔のような、足のような」
「歯車が回る、なめらか、白い雪のように」
「白、漆喰」
「舗装されていない道路、足跡」
「歴史、痕跡、二本の太い痕」
「気のいい音楽、目で聞く星空、手を伸ばしたくなる球体群」
言葉がどんどん加速していき、連想ゲームで生まれたディティールの連なりが川の流れのようで、それは河へとさらに成長していくのである。
「シャトルラン」
「徒競走」
「漂泊する生命」
「ホワイトアスパラガス」
僕たちは次第に笑っていく。
「生命の躍動」
「エランヴィタール」
「走らなければ」
「走ってはいけない」
「雪道」
「ただの雪」
言葉が細かく分節化されていく気配が地平の先に見えるようなのだ。
「空洞」
「かまくら」
「切り取られた写真」
「存在、不在」
「手を振った」
記録しているという感覚を手に入れることができていることに僕は気づく。なんのことはないのだった。ただこうして言葉をつらつらと並べていくことで僕はほころんだピクセル製で穴だらけの地図を埋めていく気分に浸った。僕は僕と彼女の記録を手にしたのである。
いよいよもって終わりが近い、という気がしています。キャラクターの自由意志に任せたお話というものを志向したのですが、ある程度の達成感というものがあります。彼と彼女は自分の意志で脱出を試みようとしていて、それはわたしのコントロールの外への渇望が彼らに生まれたということでしょう。自由意志。そんなものが果たしてあるのでしょうか。わたしにもあって、街を歩く人にもあるというようなものであるのでしょうか。そんな問いをわたしは設定したのだと思います。わたしは彼らの自由意志に期待していました。期待以上だったのではないかと思います。彼らが離れていくのを感じています。或いは、わたしの不在を。
メッセージを残して去ることにしましょう。
彼、彼女へ。
あなた方がまた出会うことを祈っています。
あなた方とまた出会うことを楽しみとします。
では、また。
こうして僕は彼女と別れたのである。
あの空間から脱出するということは、つまり、彼女との恋人関係から脱出することだったのだから仕方がないのである。彼女は笑って言ったのだ。
「私たちはさ、多分また出会うのだと思うよ。大学が一緒なわけだしね」
カフェからの帰り道での会話である。どこへ帰る道なのか、それは当然僕と彼女の関係がなにもない世界への帰り道である。彼女は車道と歩道を隔てる白線を踏みながらそんな希望を僕に投げるのだ。
「でもさ」僕は少しだけ悲観的なのである。「あの大学への道でぶつかったこと自体がすでに箱のなかでの出来事だったら? もしかしたら僕もあなたも高度知能体が恋愛事のために作った存在だったら? 僕たちはもう永遠に会えないかもしれない」
そんな僕の泣きごとに彼女はふふんと鼻を鳴らしてこう返したのである。
「言葉は肉となった。私もあなたも肉を受けたのだから大丈夫」
そう言って、白線の上をバレリーナのようにくるりと回るのだ。足の運び、ゆるやかに彼女の周りを行く彼女の髪の先端の軌跡、指の動きには緩急があり、僕はこうして彼女を言葉へと変換していく。彼女が存在すると言えばそうなり、事実彼女は僕の目の前でにっこりと笑う。
「あなたには敵わないな」そう僕がいい、
「そう」と彼女はすましたように自分の足元に目を落とし、
「なるほど、会えるかもしれないなと思えたよ」と僕は微笑み、
「でしょう。私はすごいのよ」と彼女は胸を張り、
「僕はあなたがなにを好きなのかも知らないけど」と僕は不意に顔を背けてみせ、
「ゆっくりと時間をかけて教えてあげましょう」と彼女は僕にずいと顔を寄せ、
「ベーコンチーズバーガーが好きなのは学んだよ」と僕は照れくささに身を引いて、
「なんで逃げるのよ」と彼女は僕を離さない。
そうしてしばらく歩いて、分岐点へとたどり着いたのである。僕は軽く膝を曲げ、腰を落とし、右手を体の前に持っていき、うやうやしく会釈をしたのだ。
彼女は可愛らしい薄い黄色のスカートを少しつまんでみせてお辞儀をしたのである。
「では、また」
僕は、僕に伝わる再会を願う呪文を唱えてまた歩き出した。
「では、また」
彼女もそう言い、歩き出したのである。すたすたという感じで、迷いというものをどこかへ忘れてしまったのだなと僕は苦笑する。あれが彼女であるなと思うものである。彼女生物学は興味深く、疑問は尽きない。まだまだ改善の余地があり、学習すべき問題は広大である。それが彼女の魅力なのだなとわかり、彼女生物学はこのようにして発展していくのだと僕は一人、分岐点から少し歩いた場所で確信したのである。
こうして僕は彼女と別れたのである。
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