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展示会のススメ。印刷DX展へ行ってきた話

前書き

 5月16日~17日と、インテックス大阪で開催された印刷業界の見本市ともいうべき印刷DX展へいってきた。私は別段印刷業界の人間ではない。最近得た肩書と言えば行政書士、しがない士業をやっている者である。
 たまたま同業の先生からインテックス大阪で開催される別の展示会のお誘いがあったわけだが、よくよくみたら他にもいろいろあるではないかということに今更気づいて、直近で行けそうなタイミングで開催されていた印刷DX展へ今回足を運んでみた次第である。印刷業界には今まで直接ご縁があったわけでもなく、強いて言えば士業で書類作成する仕事だし、つくった書類を印刷する業界のことも知っておくに越したことはない、という非常に軽い感じのきっかけであった。ただ、別業界視点で足を運んでみたからこそ得られたものがあるので、それらを書き残しておくことにする。


展示会に行く前の準備

展示会場の公式サイトから各展示会の公式サイトへ

 まずは最寄りの展示会場の公式サイトを確認して、日程と業界、入場制限の有無を確認する。イベントによっては招待制だったりするので注意が必要であるが、基本的にはその業界のことを知ってもらいたいという趣旨もあったりするわけで、必ずしもその業界の人でないといけないわけでもない。ただし、展示会へは事前予約が必要な場合が多い。混雑しすぎて収拾がつかなくなっては困るため、それもそうである。そこまで混雑とまではいかない場合は、当日受付が可能であったりする場合もある。

 なお、名刺は忘れないようにしたい。今回の印刷DX展では入場時に名刺を2枚提出するように求められた。社会見学の学生であれば致し方ないが、どういう業界、分野の人であるのか把握する意味でも求められることもあるだろうし、新たなビジネスチャンスの場でもあるので当然と言えば当然である。まだつくっていなければ、自作するかネット上の名刺作成サービスでとりあえずのものを用意しておこう。よほど積極的にばらまくとかでなければ一日50枚もつくっておけば足りるだろう。ただ、名刺を切らすのは基本的に非常にまずいので展示会参加に限らず多めには準備しておきたいところ。

会場内でのイベント・セミナーは基本的に予約がいる

 展示会公式サイトにとべば割とイベント内イベントが開催されていることがわかる。空きがあれば当日ふらっと飛び入りで参加することも可能であるが、席に限りがあるので基本的に事前予約が必要である。なお、今回私は初日に3つ、二日目に2つ予約しておいた。

会場周辺地図・設備の確認

 会場までの交通手段の確認や館内設備も一応確認しておいたほうがよい。そういえばインテックス大阪に来たのは何年ぶりだったか思い出せないほど久しぶりであった。ニュートラム中ふ頭駅から徒歩5,6分といったところだったか。中に入ればコンビニがあり、ちょっとしたものであれば調達できる。2階のレストランは昼時は長蛇の列となっていたため時間が読みづらく、昼一番のセミナー等に参加するのであれば昼食は軽めのほうがよいかもしれない。なお1階広場にはちょっとした売店があるのでそこで軽食を取ってベンチで食べることもできる。二日目に利用した売店での軽食の値段はやきそば500円からあげ500円だった。参考程度に記載しておく。
 ちなみに喫煙所は複数個所あり、館内案内図にも記載されているので喫煙者の方も安心してご利用いただける形となっている。

いざ印刷DX展へ

 大規模な印刷機器のデモンストレーションから趣向を凝らした製品までいろいろと展示されていた。その中でも個人的に印象に残ったブースをいくつか紹介してみる。なお、それぞれの企業名をクリックすると各公式サイトへとべるようにリンクを貼っておいた。

株式会社ペーパル

 かつて日本では浮世絵の発色するをよくするために紙にお米が使用されていたという。紙の表面に塗工する原料の一部にお米を使用したkome-kami等のサステナブル製品が展示されていた。温故知新なアイデアを盛り込んだ製品である。写真ではわからないが、独特な手触りの良さがあった。


 展示会ではkome-kamiを筆頭にした製品紹介が主であったが、よくよく調べてみると明治23年創業133年もの歴史がある非常に老舗の会社である。

有限会社西村謄写堂

 高知県の印刷業者様。展示会ではベンチを並べて休憩所での出展という、あまりにも斬新すぎるアイデアに非常に感動した。実際歩き疲れていたので非常にありがたかったりした。事業としては、印刷に関することなら手広くなんでもやっておられるとのことである。
 ちなみに同人誌を印刷してこの道なんと35年。最初は一人のお客さんからがきっかけだったそうだ。もしかしたらその道の方であれば既にご存じの方もいるかもしれない。非常に温かい印刷業者さんであった。

西村謄写堂(@nishimuraikemen)さん / X

展示会で休憩所を出店するという斬新すぎるアイデア


有限会社ハラダ印刷

 広島県の印刷業者様。強みは点字プレスである。封筒から選挙の投票用紙、クリアファイルに至るまで、さまざまなものに点字加工を施すことを強みとしている。駅などでは点字をみかけたことがあるが、実は紙に点字をプレスすることも可能ということは今まで知らなかった。
 一見地味かもしれないが、いざ必要となったときにこういったことができる会社があるというのを知っているというのは覚えておいて損はない。

鬼頭印刷株式会社

 特殊印刷をつよみとする、愛知県は名古屋の印刷業者様。ブースにあったポストカードが非常に綺麗でとても印象的であった。超豪華な名刺や豪華なアルバムの表紙も手掛けておられたりするということで、ここぞというときの記念品をつくりたいときに、こういった会社があるということを覚えておくといざというときにいいかもしれない。
こういったホログラム入り等の特殊加工の印刷物はどうしても写真ではよさが伝わりにくいので、展示会にいって実際の製品を手に取ってみてほしいところである。詳細はこちらから確認いただきたい。

大阪府印刷工業組合

 385社加盟する、大阪府印刷工業組合。展示会といえば企業ブースが想起されやすいが、展示会に出展するだけでも割とお金がかかるので、組合での参加という点は非常にありだと思う。数は力である、というのを改めて思い出すこととなった。
 なお、ブースに立ち寄った際にいただいた胸ポケットに入る手帳は非常にありがたく、さっそく使わせてもらっている。

感動会社楽通株式会社

 今回の展示会で別格の存在感を放っていたのがこちらの姫路の企業。テレビやYahooニュースにも何度もいい意味で登場しているので、もしかしたら既にご存じの方もおられるかもしれない。とにかく会場内でのインパクトの強さはあまりにも圧倒的であった。何がどう凄いのかは私の拙い文章力ではちょっと表現しがたいものがあるので、詳しくは小見出しのリンクから公式サイトをご確認いただいたほうが早い。
 映画風の企業紹介ポスターをつくり、ヒアリングを取調室を模したセットで行い出前でカツ丼をとることも忘れない。それすらも序の口である。後述する営業セミナーでも講演されていたが、アイデアと行動力、相手のために何ができるか?を改めて考えさせられることとなった。

展示会内セミナー・イベントの振り返り

 生成AIに関するセミナー、印刷業界の今後に関するパネルディスカッション、営業セミナー等に足を運んでみた。大きく2点ほど以下に振り返りを述べておく。

生成AIの話

 セミナー自体では、最近の生成AIを利用したソフトウェア紹介と実際に動かしてみた感じどうなのかという点が主になっていた。
 生成AIは実はしれっと普段使いされているソフトウェアに実装されていたりするものが割とあるので、日頃からインターネットを多用している人にとっては習うより慣れろで馴染んでいける部分はかなりあるのではないかと思う。基本的な操作さえ覚えてしまえば、これほど使い勝手の良いものはない。と、展示会終了後に自分の事務所のチラシを生成AIを駆使して作成しながら改めて感じた。
 ただ個人的に感じた思う所は、その基本的な操作の部分ですら人によっては難しいと感じてしまう人もいる点である。ここが人によっては弱点ともなり、人によってはビジネスチャンスともなりうるわけで、どのような使い方ができ、どのような問題点を孕んでいるのかは逐一情報収集が必要であると考える。むしろ当たり前に使用されるのを前提でいろいろと考えておいたほうがよさそうだ。
 なお、adobeのfireflyは商用利用が可能であり、その点は大変すばらしいので是非気軽に触ってみてほしいと思う。ただその反面、日本発祥の取り組みという点では非常に世界に後れを取ってしまっているなと思ったところである。余談になるが、2023年の旅行収支(インバウンド)は約3兆円の黒字だったが、デジタル関連の収支は、サブスク等の使用料がかさんで約5兆円の赤字という話を思い出した。

パネルディスカッション『目指すべき真の印刷業界とは』

 90分もの間、5人の会社経営者によるパネルディスカッションがざっくばらんに行われた。印刷業界での課題とはいいつつ、他の業界・分野でも共通する課題を改めて痛感することとなった非常に素晴らしいパネルディスカッションだった。以下に要旨で印象に残った点を記載する。

  • プロダクトアウト(自社のアイデアや技術から製品開発していくこと)からマーケットイン(徹底的な顧客ニーズや要求を研究し製品開発を行うこと)へ

  • 請負業から顧客サービス業への転換が必要

  • 限られたパイを市場で取り合っていて、どこで差別化していくのかを決めかねている会社が多いのが現状。

  • 印刷業というくくりは最早ない。十把一絡げに印刷業界というくくりで考えるのではなく、個々の企業がどうしたいのかをどこまでの覚悟を持ってやるのかが重要。

  • 自分たちは何をしている会社なのかを明確に答えを出している会社が日本には少ない。市場から何を求められているのか?何のために自分が存在しているのか?

  • 『印刷』とは目的ではなく『手段』である。製品の目的が達成されたかどうか後でフォローしていくアフターサポートが非常に重要。開発部隊にフィードバックできる仕組みのある会社は強い。

  • 好きなものだけみていると知見が狭くなる。

  • お客さん側の勘定科目を知るだけで、自分の商品の目的が分かる。

  • みえる化して全員で共通認識を持つことの重要性

  • 受けた教育を使うことになっていない人があまりにも多い。みえるようになると困ることが見えてきてしまう部分もあるが、恐れずにもっとつかうべきだし踏み込んでいくべきである。

  • 人手不足とデジタル。本業ではないところは外注するのが当たり前になる時代がやってくる。

  • コストではなく、価値に対して値付けすべきである。

 印刷業界だけの話ではなく、他の業界にでも共通する話ではなかろうかと思わずにはいられない。この拙文をお読みの方はさまざまな業界・分野の方がいることと思われるが、自分の分野ではどうなのか?という視点で今一度読んでもらいたいところである。

最後に

 展示会は学びの宝庫であった。別にその業界に携わっていなくてもよい。むしろ携わっていないからこそ学べるものが大きい。ただし、それなりの規模の展示会ともなれば基本的に大都市でしか開催されておらず、平日一日二日使ってとなるとなかなか足を運ぶのが難しいところである。なにかのきっかけでもし寄れそうであれば、是非足を運んでみてほしいと思う。
 
 今回開催された印刷DX展への参加を通じて、『経験のかけ合わせ』これが今後さらに重要性を増すこととなるのではないかとも感じた。今ある強みを理解し、それらを組み合わせ、あるいは別のものをそこにかけ合わせて新たな価値を創造していく。自らが持つつよみである『知的資産』への気づきと、かけ合わせによるつよみの積み上げ、これは個人・企業を問わず重要ではないかと思う。

 世の中を一変させるような技術から、そこまではいかずとも知っておくとだけで人生の何かが変わりうるような、さまざまな素晴らしいつよみに触れてきた。なぜ今まで知らなかったのかと思うようなものもあったりしたわけだが、世の中は広いわけで、あらゆることを知っている人というのはいないものである。知らない世界に触れて今の自分に活かす、これは忘れずにいたいものである。

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