見出し画像

10年後、不動産はどうなっているか?

要点


 ・人口減少時代の住宅はどうなるか?
 ・人口増加エリアの住宅はどうなるか?
 ・住宅建築ロボット
 ・3Dプリンター
 ・自動運転によって住環境はこう変わる
 ・AR・VRは、住環境をこう変える
 ・その時、不動産ローンはどうなるか?
 ・不動産投資の行く末
 ・賃貸生活者の未来
 ・あなたは、どう生きていくか?

人口減少時代の住宅はどうなるか?

日本では、ここ20年で、少子高齢化による人口減少と、未婚率と離婚率の増加による世帯数増加が拮抗してきましたが、ついに世帯数が減少に転じて始めました。

ニュースで時折みかける、空き家問題についても、空き家率はどんどん増えています。
更地にすると固定資産税が上昇するため、これまでは朽ち果てて住めない住宅も残ってきましたが、そういう物件を除いても、空き家は増える一方です。

さらに追い打ちをかけるように、特に都心でシェアハウスに居住するヒトが増えています。 シェアハウスは、1つの物件で複数の需要を満たしてしまうため、需給バランスを崩す要因のひとつです。 全体から見れば、シェアハウスは、まだまだごくわずかではありますが、定住ではないライフスタイルを応援する新たなタイプのシェアハウス(マンスリー・マンションやゲストハウスに近い)も生まれています。

このように、日本では、需要が急速に減ろうとしているにもかかわらず、永らく日本では、景気振興のために、住宅建設を税制や金融政策等で奨励してきました。 供給量が増え続けているのです。 だからでしょうか? これまでは、都心では目立った家賃価格の下落はありませんでしたが、立地の悪いところから徐々に家賃価格は下がっているように思います。

もっとも、スルガ銀行等の地銀による甘い審査による投資用ローンに対して、金融庁から指導が入りはじめて、ようやくその勢いも消えようとしています。

とはいえ、住宅の新築がなくなった訳ではありません。 建築会社が存続するためには、新しい住宅を建築するか、リフォームするしかないからです。

しかしながら、これは日本特有の状況かもしれません。


海外での住宅事情はどうなるか?

海外の多くの地域では、まだまだ人口が増え続けていて、住宅不足が叫ばれています。 
例えば、レバノンのような紛争国(シリアなど)に近い国であっても、歴史上不動産価格が下がることはなかったそうです。 紛争リスクが減ると不動産価格が上昇し続け、紛争がある時期でも不動産価格は下がる事がないと聞きました。

しかし、そういう地域にも、大きな変化が訪れようとしています。

テクノロジーの進化によって、住宅建設コストが大幅に下がろうとしているからです。
それが、住宅建築ロボットと3Dプリンターです。 どちらもまだ試作段階で、量産まで行っていませんが、あと数年で実用化するでしょう。


住宅建築ロボット

オーストラリアの上場会社Fastbrick Robotics Limitedが開発したコンクリートブロックをくみ上げていくロボットHadrian Xが海外でニュースになっています。 

このロボットを使うと、3ベッドルーム2バスルーム(リビングは別にある)の家が、30時間強で建設できるそうです。
あらかじめCADで作られた3D設計図に合わせて、自動的にブロックを積み上げてくれます。

基礎はあらかじめ作られている必要はありますが、壁を積み上げていく作業は、このロボットで無人でできます。 あとは、窓とか屋根を付けるのは、従来通りの建設作業員がやっているようです。

従来は、どんなに早くても3か月から半年はかかっていた建築期間が、3日以内で済むようになるということは、単純に人件費が下がるだけではありません。 建売住宅の場合、不動産会社が建築するための資金を調達して、家を建てます。 建て終わったら、販売するわけですが、建て終わってすぐに売却できたとしても、建築期間が半年であれば、資金の回収は1年に2回です。 

つまり、従来なら1軒分借りたら、その資金で2軒しか建てられなかったのが、3日で建てられるとしたら、同じ資金で120軒建てられるようになるのです。 実際には、建て終わってから売れるまで1か月はかかるとしても、年間で1軒しか建てられなかったものが、12軒建てられるようになります。 同じ調達資金に対して、売上も利益も12倍になるということです。


3Dプリンター

ブロックを積むロボットよりもパワフルなのは、3Dプリンターです。 3Dプリンターというと、プラスチックで模型を作ったり、金属で部品を作ったりというのを想像すると思いますが、なんと家も作れるのです。

3Dプリンターで家を建てるメリットは、通常の建築では出来ない形が創れるということと、24時間で完成するということです。 材質は鉄筋の代わりに炭素素材をコンクリートを混ぜたことによって、強度を出しています。 大きさは小ぶりなもの多いようですが、コストは1m2あたり2万円~3万円と、100m2の家で200万円から300万円くらいで出来るようです。

1日で完成するので、先の住宅建築ロボットの3倍速く建てれます。 この3Dプリンター1台で、年365軒建てられるのです。


自動運転によって住環境はこう変わる

住宅コストに大きな影響を与えるのは、ロボットや3Dプリンターだけではありません。 実は、自動運転車やパッセンジャー・ドローンの普及によって、住宅価格に影響が出るという意見があります。 例はエレベーターです。 エレベーターによって、人々はビルの低層階に住む必要がなくなりました。 高層マンションであっても、地上階よりも、むしろ地上から距離の遠い高層階の方が、眺望が良い分、価格が高くなっています。

これと同じことが自動運転車の普及によって起こると予想されています。 どういうことかというと、移動中に、完全にプライベートな空間が使えて、好きなことができていれば、通勤や友人と会うための移動時間はあまり気にならなくなります。 移動中に部屋を暗くして横になって寝たり、ヨガや瞑想、ウェイトトレーニングをしたり、SkypeやZoomを使ったり、後述するVRを使ってミーティングが出来たり、映画を観たり、あるいは調理して食事をすることが出来れば、移動時間は気にならなくなります。 もちろん、電気自動車(EV)なので、燃料代はほぼ無料です。

移動時間や移動コストが気にならなくなると、必ずしも都心に住まなくても良いというヒトが増えるでしょう。 朝、目が覚めたら湖のほとりにいて、鳥のさえずりや、魚が跳ねる音が聴こえる・・・ そんな場所の人気が出るでしょう。

一方で、都心であっても、不便であったり、住環境が良くない場所であったりすると、需要が減り、価格(不動産売買価格や家賃)が暴落する可能性が出てきます。


VR・ARは、住環境をこう変える

VRとARに技術の進歩によっても、住環境は大きく変わる可能性があります。

まず、通勤の必要がなくなるかもしれません。 私自身もOculus Goを使って知人2人と計3人でミーティングをしてみたことがあるのですが、本人とは似ても似つかないアバターであるにもかかわらず、同じ空間に一緒にいる感じがするのです。 これは、SkypeやZoomでの会議とは大違いです。 自分の部屋に居ながら、スイスのきれいな湖沿いの別荘でミーティングをしているかのような感覚になります。

こうなると、「Zoomも良いけど、やっぱり顔を付き合わせて仕事するのが大事だよね!」
という意見に賛成するヒトは減っていくと思います。

つまり、仕事をするのに時間をかけて通勤/移動する必要がなくなり、本当の在宅勤務が普通になるでしょう。 そうなると、都心のオフィス需要も大幅に減る可能性があり、東京中のビルが空き家になる可能性が出てきます。 

逆に、そういった窓もない部屋に住んだとしても、スイスの別荘に居るかのような感覚で生活を送ることも可能になります。 どこに住んでも利便性はほとんど変わりません。 リラックスできる雰囲気のある場所にリアルに住もうと、バーチャルで住もうと、あるいは、移動に時間をかけず、何処にでも友人に会いに行きやすい便利な場所に住もうと、遠くに住んでバーチャルで友人に会おうと、満足度では大して変わらない世の中になるでしょう。 

このようにVR・ARは、住環境の選択肢をかなり柔軟にしてくれるでしょう。


その時、不動産ローンはどうなるか?

VRやARや自動運転のおかげで、安い土地を手に入れ、ロボットや3Dプリンターで家が建てられるようになると、新築コストは各段に安くなるでしょう。 住宅ローンの借入れ金額も減るでしょう。 借りる金額が少なくなるので、貸す側の銀行は、売上を減らすことになります。

すでに家を建てている人にとっては、あまり面白い話ではないかもしれません。 すでに保有している住宅よりも、新しく家を建てた方が安くなる場合は多いでしょう。 それでも、ローンを払い続けなくてはならないのです。 また、中古住宅の価格も、大幅に下がるに違いありません。


不動産投資の行く末

すでに住宅に投資して、家賃収入を得ている人は、困ることになるかもしれません。 何故なら、価格が安くなることによって、新築の供給が急激に増える可能性があるからです。 供給が増えれば、家賃は安くなり、収入が減ります。 レバレッジを掛けている場合、担保価値の市場価値が下がることにより、繰上返済を求められる可能性もあり、さらには家賃の下落によって、借入の返済を家賃収入が下回る可能性も考えられます。

これから投資するヒトは、明らかにこれまで投資してきた人よりも有利だと思います。


賃貸生活者の未来

安価な新築の住宅が需要を上回る勢いで供給されるようになると、家賃価格は下がるでしょう。 生活費に占める家賃の比率が下がることにより、生活は楽になるでしょう。 あるいは、収入が下がったとしても、住居に困ることがなくなる時代が、まもなくくるでしょう。

ただし、建築ロボットや3Dプリンターで家を建てられるのは、建築基準法の厳しい日本では、実用化までにかなり時間がかかると思います。 とはいっても、空き家がこれだけ蔓延しているので、賃貸価格は下がると考えて間違いないと思います。 実際、いまでも田舎に行けば、一軒家が農地付きで1~2万円で借りることができます。 もちろん、不動産屋に探しに行くというよりは、知人を通じて紹介してもらわないと難しいかもしれませんが。


あなたは、どう生きていくか?

これからの10年で、住宅価格が急速に下がるとして、あなたはどうしますか?
持ち家をローンで保有している人は、このまま完済までローンを返し続けますか? それともいまのうちに売却した方が得でしょうか?  持ち家がないヒトは、格安の住宅を建てるか、中古を格安で手に入れますか? それとも家賃が安くなることを見越して、賃貸で住み続けますか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?