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事業計画の作り方 ~Part4 資金繰り~

こんにちは。SKPです。
これまで3回に分けて事業計画の作り方を紹介してきましたが、内容は『損益の計画』をメインとしてきました。

しかし、『損益』だけでなく、その結果として『資金繰り』がどのようになるのかも、事業計画においては大切な内容です。

今回はそんな『資金繰り計画』の作り方をご紹介します。

7.『資金繰り表』の作成

『資金繰り表』は難しいものではありません。「現金の収支の予測」を表にまとめるだけです。

似たようなもので「キャッシュフロー計算書」がありますが、これは『営業・財務・投資活動別の現金増減要因』をまとめたもので、資金繰り表をより細かくしたもの、と言えます。

では、実際の作り方を見ていきましょう。厳密に・精緻に作ろうと思えばいくらでも細かくできるのですが、最も簡単・簡素なパターンを紹介します。

この場合の『資金繰り表』を作るために確認するのは次の項目です。

1.スタートとなる「現預金残高」
2.『損益計画』の税引後当期純利益(※)
3.『損益計画』の減価償却費
4.借入金の元金返済予定額

細かいことを無視して書くと、この『1+2+3-4の金額』が『損益計画』通りに利益が出た時の「現預金残高」となります。

1.スタートとなる現預金残高は、『損益計画』のスタート時点の現預金残高を指します。仮に4月以降の『損益計画』を作成しているのであれば、『3月末の現預金残高』がここに入ります。

しかし、4月以降の事業計画を作る場合、通常は3月よりも前に作成を開始します。そのため「厳密な3月末の現預金残高」は分かりませんので、ここでは「今期、このままいけばこれくらいの現預金残高となるはず」の予測値を入れることになります。

続いて「2・3」ですが、事業によって最終的に増える・減る現預金の金額は当然、会社の利益・損失の金額に依存します。利益が出ればその分現預金が増えることになりますので、1の金額に加算します。

しかし、経費の中には「非資金経費」と言って、「経費にはなっているけれど現金の出金がないもの」があります。代表的なものが3の減価償却費です。お金が出ていっていないため、この金額も加算する項目となります。

この詳細は、別の記事に書いてありますので、良ければご参考下さい。

最後に4.借入金の元金返済額を『1~3の合計額』から差し引きます。借入金の返済は『損益』へは影響を与えませんので、初めてここで考慮することになります。

これらをまとめると、次のイメージのようになります。

キャプチャ

この場合だと、「利益+減価償却費」が「借入金の返済額」よりも大きいので、スタートよりも現預金が増えた、という事業計画になっている、ということになります。

※月ズレ・期ズレは考慮する??

先ほどの確認項目2.税引後当期純利益に(※)を付けましたが、これは本来「『税引前』当期純利益」を見るのが正しくなります。

何故か?というと、法人税の支払時期は「今回計画した期間」よりもさらに先になるためです。

仮に令和3年3月決算の会社だとすると、令和2年4月~令和3年3月の利益を計算して法人税の金額が決まります。法人税は、基本決算日から2か月以内に支払うことになるため、多くの場合、令和3年5月に法人税の納税を行います。

そのため「今回計画した利益に対する法人税」は、計画の「さらに次の期」に実際の現金出金が行われます。

厳密にはこのような「期ズレ」も資金繰りには考慮すべきなのですが、「期ズレ」を考慮していくとどんどん煩雑になっていきますので『実際に自由に使える資金』という意味合いで、今回は「税引後当期純利益」を計算の基準としています。

同じようなことは、売上の代金未回収分「売掛金・受取手形」などの売上債権。商品在庫などの「棚卸資産」。仕入の後払いとなる「買掛金・支払手形」などの仕入債務、などにも言うことができます。

資金繰り計画を厳密に考えようとすると、これらが「発生してから、いつ入金・出金があるのか」という『回転率・回転日数』も考慮しなければなりませんが、正直簡易計画ではここまでやってられません。

そのため「これらの回転率・回転日数」は大きく変わらない。変わらないのであれば、同じサイクルで回っているため影響はない。という前提で『期ズレ・月ズレを考慮していない』というのが今回の『資金繰り計画』です。

8.改めて全体を見返す

これで「損益計画」と「資金繰り計画」が完成します。ここで改めて全体を見返してみましょう。資金繰りは問題ないでしょうか?損益計画は実行不可能なものになっていないでしょうか?

特に資金繰り上、明らかに「資金がショートする」という場合は対策を講じなければなりません。これは「損益計画」の利益を良くする、という意味ではありません。

資金がショートする前に「金融機関への新規融資の相談」をしたり、「現状の借入金のリスケを検討」したり、という実際の財務面の対策です。

計画上、資金がショートしてしまうのであれば「アクションプラン」にその対策を盛り込みましょう。そして、その対策を行った場合に資金繰りがどうなるのかも追記しましょう。

こうすることによって、正に金融機関へ提出する「事業計画書」そのものとなります。


なお、記事では「翌年1年」の計画というイメージでしたが、1~3年という短期の事業計画を作る場合は、3年分を作るとしても同じ方法で作成が可能です。

小難しい記事となってしまいましたが、「事業計画」を作る上での参考にしてもらえればと思います。




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