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「みんとしょ」の魔力~祝・岐阜県初みんとしょオープンその後

図書館を一番楽しんでいる人

 当方の「みんとしょ」がオープンして約2週間が過ぎた。
 実に多くの方に、棚に本を入れていただき、本を借りて楽しんでいただいている。この4月からの「地域教育の拠点/シン・フリースクール」を創りあげるプロジェクトに賛同してくれている同志でさえ、
 「わざわざお金を払って棚を作りたい人なんていないのではないか」
 「フリースクールへの寄付として、という謳い文句にしないと集まらないのではないか」
 と多くの心配を寄せてくださっていた。そんな心配をよそに、じわりじわりと棚は埋まり、目標にはやや及ばないものの上々の出だしだと言えるだろう。この地域の「地域教育力」や「気のいい大人」の存在を疑わずに、ここまで進めてこられてよかったと思う。

 この数日で、うちの塾やフリースクールの生徒全員に、その保護者の多くの方に貸出カードを作ってもらい、図書館としての利用が軌道に乗ってきた。既に一人で5冊以上借りて読んでくださっている方もいる。そんな中で、この当方の図書館を、最も楽しんでいると言っても過言ではない人物を紹介しようと思う。
 何を隠そう、この私、「地域教育の拠点/シン・フリースクール みんなの学び舎ことのは 代表:木下慎一朗」である。

棚の向こう側にみえるもの

 元来本が好きな性分だったが、就職してからはずっと読み続けられたわけではなく、仕事のためのインプット以外の本はどんどん後回しとなった。
 この2週間は、フリースクールの春休みと重なっていたため、日中塾の子が来るまでの空き時間がかなりあった。大量に並べられた様々な本を改めて眺めて、溜飲が下がる思いを我慢せずに思い切り読書してみた。

やっぱり、みんとしょ始めてよかった。

 そう思えた理由は2つ。
 1つ目は、この「一箱本棚オーナー」のシステム自体のよさを再確認できたこと。
 地域の方に本を入れてもらう。その棚を見ると、入れてくださった方の人柄に触れるようで非常に楽しい。
 ここまでは誰もが感じられる楽しさだ。しかし、私だけはここまでどんな方が来てくださって、どんな棚を作ってくれたのか、人と棚とが完全に結びついている。その私が棚から手に取った本を読むと、その本の素晴らしさとともに「この本をあの人はどう読んだのかな」とその人の顔も浮かぶのである。読書それ自体の楽しみと、共有する喜び、しかも具体的に知っている人との共有を狙えるのは本当に素敵だ。
 これは、今のところ私にしかできない楽しみ方となってしまっているので、何とかしてこの面白さを他の人と分かち合いたいと考えている。読書会や本棚オーナー向けイベントをしなければ。
 これまでにも複数の「みんとしょ」を訪問しているが、本と人とをつなぐすごい力を秘めたシステムのすごさに気付けたのはオープンしてからだった。思わぬ好機を得た気持ちだ(←やや遅い)。

 2つ目は、直感的に理解していた教育との親和性の高さを改めて感じたこと。
 貸出カードを作った塾の子どもたちや保護者の皆様も、本当に切れ目なく本を借りていく。感想カードもどんどん書いてくれる。図書館は自分から足を向けようとする人の数は多くないのかもしれないが、毎週必ず来る場所が図書館になるというのは、人を読書に向かわせる力があるのだと気付く。
 塾会員のある子は、普段はほとんど本を読まないそうだ。だが、本棚に入れてもらった漫画に感動して泣けたという話をしたら、その本読んでみたい!と借りていった。
 また、当方は塾の時間に絵本専門店の商品である絵本を教材として使用することが特徴の一つだが、多様な本たちが増えたことで活動の幅がまた広がった。
 教員時代に立場上、全国学力・学習状況調査のデータ分析をしたことがあったが、全国データの分析によると「子どもの読書習慣」と相関性があるのは「保護者の読書習慣」でも「図書館や本屋へのアクセス」でもなく、「家に本があるかどうか」だけだったそうだ。いつでも手に届くところに置いてあれば、興味が刺激されたタイミングで自然と手に取るということだろう。
 教育を行う環境に、雑多に多量の本あり。これは大成功・大正解の予感がする。

この体験を広げていくために

 私だけが、入れてもらったたくさんの名作小説に心洗われて涙したり(店番しててよく泣いているので外から見ると怖いと思う)、棚から発せられる人柄を感じ取って楽しんだりしていてはもったいない。もっと多くの方にこの体験を広げてよさを知ってもらいたい。そのために今考えていることがある。

 まずは、これだけ早く当方の企画にリーチして、賛同して、棚のオーナーになってくださった方同士をつなげること。気軽かつ楽しい企画を考えたい。オーナー同士のつながりができたら、オーナー主体でどんどん参画してもらえる雰囲気を作りたい。

 また、とにかくもっともっと面白がって、その面白がっている様子をこうやって発信していきたい。当方のみんとしょの情報発信をしているInstagramは大学生の同志の方の活躍で徐々にフォロワーが増えつつある。そこで「自分も参画したい!」と思えるような発信ができたらと思う。

教育への応用の幅は広い

 子どもが育つ環境として最適な「よい乱雑さ」を本を通して実現する。

 これが「地域教育の拠点/シン・フリースクール」を名乗り、今年から方向性をさらに具体的にした当方の答えだ。今はこの方向性に確信をもてている。これは高度に文化的なのはもちろん、高度に教育的になれる。そして、その応用の幅は、底知れぬものがある。

 子どもたちを読書へと誘う環境として最高のものができることはもちろん、教材としての有用性も高さも実証済み。自己の興味の発見など、「自分探し」の一端も担える。

 こちらで書いた「本に呼ばれる」経験ができることも、もちろん教育的に価値があることだ。

 これは副次的なものだが、本が並んでから、当方に来る子どもたちの動きが小さくなった。「図書館は静かに」という後天的な教えのせいか、はたまた人は先天的に本という存在の前に落ち着くのか。

 本の魔力、みんとしょの魔力は、信じるに値すると思う。
 これを地域に広げ、定着させ、気のいい大人の手で育てて、子どもたちを育みたい。
 「地域教育の拠点/シン・フリースクール」は最高のスタートを切った。

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