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雪と共に生きる和紙の魅力 和紙の探究#1【新潟県 小国和紙】

私は福岡の写真を撮影しているのですが、フィルムで撮影した写真を和紙にプリントして1つの作品としています。

和紙を使う理由は2つあります。
・フィルム写真と透け感や温かみのある質感が合っている
・海外へのリーチのため、日本のものを取り入れたい

最初は何気なく、PHOTOPRIさんで和紙の印刷を見つけて発注していました。しかし、人に和紙の良さを伝えようと思った時に、質感以外のことを話すことができず、私自身もっと和紙のことを知らなくてはと感じました。

そこで各地を訪れた際に和紙の工房にお邪魔させていただき、和紙について深掘りする活動を始めました。

今回は新潟県の小国和紙の工房である小国和紙生産組合さんを訪問しました。

小国和紙の特徴 -雪国ならではの和紙づくり

長岡市内から車で約40分ほど。福岡人にとっては見たこともない高さの雪を見ながら、小国和紙の工房に向かう。

小国和紙は雪を活かした製法がいろいろなところで使われており、雪ざらしやカングレといった製法が使われている。こういった製法を使用していることから国と県の無形文化財に指定されている。

小国和紙生産組合

紙漉き体験 -職人の技を体験する

工房案内の前に和紙の紙漉きを体験する。めちゃくちゃ冷たいよと念を押された上で紙漉きの作業場所である漉船(すきふね)の前へ。

和紙は桁(けた)という枠の中に簀(す)を引いて、そこに紙素と水を合わせたものをすくい漉いていく。

この簀は特別なもので、編んでくれる職人さんが日本に4人しかいないそう。中国で作られているものもあるが、良い簀はその方々が作っているとのこと。

桁と簀

桁も簀もさまざまなサイズがあり、大きいものは上から吊るして紙漉きをするそう。お値段もちらっと聞いたけれど簀ひとつでもしっかりいいお値段。

さまざまな大きさの桁と簀

実際に原料に手を入れてみると少しトロミのある液体で、気温の影響もあってひんやりと冷たく感じた。

桁と簀を持って、液体をすくい揺らしていく。簡単そうに見えてコツを掴むのに意外と時間がかかる。職人さんは夕飯のことを考えながらでもできるくらい身に染み付いているとのこと。

原料をすくい揺らして漉く

体験では5枚分の紙漉きをさせてもらう。無地にもできるし、いろいろな形に切り抜いた和紙を乗せたりもできる。

紙漉きを終えると桁から取りだしてもらう。和紙の繊維が残ってなんとなく紙の形を残す。
翌日プレスして乾燥させて和紙として出来上がるそう。完成品は後日配送してもらうことに。

作った和紙は後日送ってもらうことに

コウゾから和紙へ -工房で製造工程を学ぶ

和紙の原料はコウゾという植物で、小国和紙生産組合では1.25ヘクタールの畑でコウゾを育てている。他の地域ではミツマタなども原料として使われるが、ミツマタは育成に3年かかるため雪が降るとだめになってしまう。

コウゾは半年で大きくなる木で、畑で計画で栽培ができる。秋ごろに3~4メートルまで育ったコウゾをまとめて収穫する。積雪の多い地域なので、この時期にまとめて収穫の必要がある。他の地域のように少しずつ収穫するのは難しい。

和紙の原料となるコウゾ

コウゾは外側の黒い部分は使わないため、皮引きをして黒皮を取り除く。大きい蒸し器でコウゾを5時間くらい蒸して皮引きにうつる。ここで出る木の芯棒は地域の方が野菜の苗を立てるものなどに活用されている。

ここから専用の機械を使って黒皮を取り除く。1本1本黒皮を取り除いて、素材となる白皮の状態へ。写真を見てもわかる通り、白皮といいつつもきなりのような色合いになっている。

白皮を名前の通り白くするために、小国では雪ざらしという方法をとる。紫外線によりコウゾの色素が破壊され、白い和紙の原料となる。一般的な天日干しと比べて、雪の照り返しもあり効率よく乾かすことができるとされている。雪の量を見ながら、2月ごろに行われる。

薄皮を引いて皮部分を綺麗に取る

訪問時は束にしてつるしてあったが、最初のきなりっぽい色から白に変化しているのがよくわかる。

干すと紫外線がこうぞの色素を壊して白くなる

このままだとまだ固いコウゾなので、ここから木灰(木の灰を水に溶かしたもの)で1晩ほど煮て柔らかくする。釜を煮るために薪を使っているが、この時にコウゾの芯棒を使ったり、隣町にあるYONEXさんからラケットに使えない木材をもらって煮る火の原料としている。

1晩煮るとコウゾから繊維状のものが見えるように。これが和紙の繊維となる。煮た時の灰汁などを綺麗にして、残っている固い部分などを手作業で取り除いていく。

木灰で煮ると皮がほぐれて繊維っぽくなる

繊維部分がきれいに取れたら、繊維を細かくする必要がある。細かくするにはいろいろな方法があり、専用のミキサーで行うことが多い。現在は電気で動くものでできるが、むかしは手で叩いて細かくしていた。

他地域だと水車などを活用して叩いていたが、冬時期は水車が埋まってしまうので、雪国では主婦の方や子どもを中心に叩いて細かくしていたそう。

カットすると和紙の原料となる

コウゾは繊維が7~8ミリほどあり、一般的な紙と比べて長く、紙としても非常に丈夫なものになる。紙としての利用だけでなく、服やカバン、椅子の座面などにも使用されている。

紙漉きをした後は一晩寝かせて、プレスをかけて絞る。表面が50度くらいあるプレートに張り付けて、乾燥をかけて和紙として完成する。

50度ほどあるプレートで和紙を乾燥させる

和紙の利用先の1つには、同じ長岡市に酒蔵がある朝日酒造さんの久保田のラベルがある。日本中で飲むことができる日本酒のラベルにも、小国の和紙が使われている。

今回実際に雪ざらしやカングレを見ることはできなかったが、お話の中の随所に雪と共存している部分や地域とのつながりをよく感じることができた。

和紙の製法の大きい流れは同じだとしても、素材の収穫や叩く工程など雪の影響で他の地域とは違った対応が必要になる。ただ一方で雪を活用して生産されている特色もあり、培ってきた歴史が体現されているように感じる。

小国和紙生産組合

小国和紙生産組合
〒949-5341 新潟県長岡市小国町小栗山145 
☎ 0258-41-9770  FAX. 0258-41-9771 
info@oguniwashi.com

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shoji | 写真家
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