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詩にまつわる

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#散文詩

天性の言葉の艶

天性の言葉の艶

 林浩平『心のどこにもうたが消えたときの哀歌』2010。
 吉増剛造論でも知られる詩人の、第三詩集かな。夢魔を描いた散文詩と行分け詩。語られる夢は、天澤退二郎ばりの奇妙な歪みを持ったもので、夢を扱っていないものも叙述の裂け目に陶然とさせられるタイプの作品が多い。
 「鳩の広場にて」は、彷徨の詩篇と、会田綱雄と会えなかったという注記の関連が、率直に言ってよくわからず、そこに立ち止まらされる面白さがあ

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詩はどこにあるのか

詩はどこにあるのか

 1月に亡くなった天澤退二郎さんの『帰りなき者たち』1981。
 「詩はどこにあるか」というテーマについて深く長く考えていた人で、そのベースには常に宮沢賢治があった。だから、散文詩、物語を書くことは必定で、天澤さんにとってその主要なテーマは夢、夢魔だった。
 この詩集は、大学教員であるらしい私らしい人の夢のようなものが多く記述されていて、自ずと東京という都市に対しての眼差しにもなっている。
大学の

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