『咲かずに枯れて』第一章1-1

登場人物                  

テト:音楽好きの高校2年生。バンドに憧れている

レイ:テトの中学生からの唯一の友達。ギターをやっている。

ツキ:????

第一章〜なんとなく 1-1

テトはもがき苦しんだ

生きる意味と執着していた物が剥がれる寂しさ

テトは生きる意味を失った

愛が消えるのは一瞬だ。

友情なんて物は存在しない。

時は遡る事5年前の2050年

そう。全ての行動はなんとなくなのだ。

なんとなく口に寂しさを感じ、

なんとなくご飯を食べる。

そして、なんとなく命を口へと運び、

何かに特別感謝を心の底から抱いているわけではないが

なんとなく手を合わせる。

なんとなく僕らは何かを始めてなんとなく辞める

なんとなく好きになった人と付き合いなんとなく別れる

何もかもがなんとなくで動いてるのなら…

なんとなく生きていればこの世界だって動かせるのではないだろうか…

『実はなんとなく生きる事が何よりも賢いんじゃないのか』

『あれ?』

『何かの物語の始まりみたいなポエムを謳っている僕って…』

『もしかして…』

『かっこいいな。』


『うへへ笑』

そんな事を考えながらテトは厨二病全開でコソコソと膝の上に置いたスマートフォンを片手に敵を倒してゆく。

気付けば賑やかな教室に1日の終わりを告げるチャイムが響き渡るのだ。

キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン

起立!礼!

『ありがとうございました』

テトは毎日思っていた

この軍隊の様な挨拶には毎日本当に反吐が出る。

『右に倣えの集団行動。うんざりだ。』

ただ挨拶をしているだけなんだろうが僕には戦場で軍曹にでも命令されている気分になる

『僕に命令するな』

『学校が嫌いという訳ではない』

ルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルールルール

『頭がおかしくなりそうだ。』

テトの高校生活において唯一嫌いな概念がそれだった。

『いつか、なんか。んー。自由になりたいなぁ』

自由と言うものが何か明確では無いがテトはそう思っていた。

軍人演習を終えた気分で颯爽と2ー2組と書かれた教室を後にする。

誰も寄せつけないオーラを纏い階段を降りて下駄箱で靴に履き替え門を出る。友達の少ないテトは一人で15分ほど歩き駅に向かうのだ。

駅に着くと1時間に1本の電車を待つ。

駅は無人駅でとても古い。

そして椅子は4つしか無くて早いもの勝ちだ。

テトは早く着くので座っている。そのまま慣れた手付きで耳にイヤホンを差し込み音楽を鳴らしながら電車と彼が来るのを待つのだ。

しばらくすると…きた

『テトー!!』

いつもの様に彼が来た。

クラスの違う僕らは駅で落ち合うのが鉄則なのだ!

向かいのホームから歩いてくるレイの姿だ

向かいのホームからは階段で繋がっている

彼とは中学からの唯一の友達で

今では何でも話せる様な存在である。

いわば親友だ。

『よっ!レイ!』

レイはいつも片手にコーラを持っている

彼もいつも割と早めの到着だ

『ふぅー』

レイはコーラを飲みながら座った。

彼は少しクールで明るい。出会った時から何処か天才的で絵は凄くうまいし、工作もとても上手い。友達も沢山居るし僕とは正反対だ。

そして最近彼がギターを始めたのと元々バンドが好きだったテトはそれをカッコいいと思い真似してギターを始めた。

テトはいつもレイと駅で落ち合い何でもない様な事から趣味の話まで喋りながら帰るのが毎日の楽しみなのだ。

『あ!テト!最近ギター弾いてるか?』

『まあ。弾いてるけど…難すぎん?笑あの。あれ。なんだっけFコード?指届かんしこれ本当に押さえれんの?』

テトはとりあえずギターの事は全てレイに聞いていた。

『ああ!Fコードか!俺はもう弾けるようになったぜ!あのコードはひたすら練習だ。練習に練習を重ねて練習を極めた者だけが弾けるコードなんだ頑張れよ!笑』

『なんだよ。レイもギター買ったばかりのくせに!!待ってろすぐ追いつくわ。笑』

『テトが追いつく頃にはもっと俺は上手くなってるけどな!笑ふははは笑』

『なんか今日のレイめっちゃムカつくな』

『いや、そう怒んなって笑』

『怒ってねえよ笑』

『あ!ねえ!来たよ!!!』『やっとかぁ』

ピンポーンパーンポーン

一番ホームにまもなく列車が到着します。

黄色い線の内側までお下がりください

プシューゥ

レイと話していると電車が来るまでの待ち時間なんてあっという間だ。

彼が居なければこの高校生活も一人だっただろう

レイには感謝している

『あ。テト!今日バイト?カラオケ行かね?』

『バイト無いからいいよ!よし行こ!って、あれ?昨日も行かんかったけ?笑』

『まぁ、気にすんな笑じゃ!いつもの時間にいつものカラオケ屋なぁ!』

『おっーけい!』

大体いつも遊びはレイから誘ってくれるのだ。

自分から誘わなくてもレイが誘ってくれている。

いつもそんな感じだ。

テトは自分から誘うのが苦手故にとても助かっていた。

彼は唯一の僕の理解者なのかもしれない。

そして最寄りの駅に着くと家が真逆な僕らは反対方向の自転車置き場へと歩き出す

『歌ったなあああああああああああ喉痛っ』

『レイは声張りすぎなんだよ笑』

『テトは歌上手いもんな!なんか声量がある笑!』

『歌という物は腹から出すんだぜレイ君笑』

『なんか今日のテトめっちゃムカつくな』

『いや、そう怒んなって笑』

『怒ってねえよ笑!っていうさっきのデジャブな笑』

『おもろ笑』

『じゃあまった明日!!』

『おう!テトまた明日なぁ』

外はすっかり真っ暗だ。暗闇の中自転車を漕いで家に帰る22時。

この暗闇の中一人で帰るのは寂しいものだ

誰かと過ごした後の一人の時間は苦手だ

レイのおかげで中々悪くない高校生活をテトは送っていた。

家に帰ると決まってテトは自分の部屋へと直行する

リビングは苦手だった。

『ふわぁー。帰ったあ。てか宿題だる。明日やろ。』

『気持ちを切り替えて

そ!ん!な!こ!と!よ!り!も!』

テトは家に帰ると最近決まってチェックする物があるのだ。

【バンド募集掲示板】

ギターを始めたテトはバンドをやりたいと思う様になっていたのだ。

『えーと、検索っと。』

『んー。今日もヴォーカル希望多いなぁ。』

テトは同じ練習場所に通えそうな投稿をしている書き込みに手当たり次第メールを送っていた。

だが練習時間や募集パートが被ってたりで中々メンバーが見つからなかった。

『こりゃ無理かな〜笑』

かれこれ1カ月くらいが経っただろうか。

ギターは勝手にレイにやらせると決めていた。

勿論レイはまだ聞かされてもいない。

『さて風呂も入ったし今日も寝るかあ。』

突然メールが鳴った

ぴろんっ

『最近迷惑メール多過ぎな。』

アプリアイコンに通知の数字が付く事が嫌いなテトは余計なメールは見かけ次第消しているのだ。

A型が疼いている。

『削除っと…ん。』

微かに本文にドラムという文字が見えた。

『ん?』

メールアドレスがbandboshuu.com

トンッ

テト様宛

ドラムやってます。高校一年生です。

プロ志望です。

抹茶パフェより

文章こそは短く情報量が少なかったがテトは何かを感じた。

何か長い長い壮大なストーリーでも始まりそうな予感がした。

予感だけだ。

だが一つ理由を付けるなら

なんとなくと

抹茶パフェというワードがテトを謎に惹きつけた。

1-2へ続く
















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