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思い出話12 ごめんな。同級生のI君

小学4年生のある日、私は、その日の授業で使う書道用紙と墨汁を買うために、三百五十円の小銭を白い紙で包んで小さくし、ランドセルに入れて持っていった。紙にはマジックで350円と書いておいた。

学校に行き何時間目かの授業の終了後、私は持ってきた小銭を出そうとして、ランドセルの中を見たが、入っているはずの白い紙包みがないのに気がついた。

いくら探してもないのでおかしいと思った。
そして、クラスの同級生たちにそのことを言った。

そうしたら、みんなが教室中探してくれて、見つかった。

それは、I君の机の横に掛けられた雑巾の中にあった。
見つけた友だちが言うには、雑巾がちょっと膨らんでいたので、何かなと思って見てみたら、私の探していた白い紙包みが出てきたというのです。

そして、数人の同級生たちがI君に詰め寄って問いただした。
I君は、知らぬ存ぜぬの一点張りで、そのことを拒否した。

その日の放課後、事の事情を知った担任のA先生が、I君を呼び出した。

翌日、私は、担任のA先生から呼び出されて、話しを聞いた。
そして、A先生が言うには、
「佐藤君は、I君の服装について、色々と言ったそうだが、そのことをI君はひどく気にしていて、佐藤君にバカにされた。悔しいと言っている。そのことが原因で、腹いせで、I君は、君のお金を盗ったらしい」
そう言われ、私は思い出した。

彼は、いつもはっきり言ってみすぼらしい格好をしていた。
シャツの襟や袖口は黒く汚れ、ズボンやセーターも着古されたもので痛みが酷く、普通なら学校には着てこないようなものを着ていた。

ある日、I君と会った時、新品のカッコいい自転車が校内に置かれていて、それがいいなというI君に対して、私はその身なりをけなしたことがあった。

「自転車なんかより、そんな汚い服着てこないで、新しい服買ってもらえよ!みっともないよ・・・」

私はI君の事情は全く知らなかったが、A先生から聞いた話では、I君のお父さんは何かの事情で仕事をしておらず、お母さんがパートの仕事で何とか家族を養っているということだった。

私は先生からそう聞いた時、子ども心に、
「悪いことを言ってしまったかな~」
と、悔いたが、だからと言って、人のお金を盗むことはないだろうにとも思った。
A先生もそのことには全く同意見でした。

その後、I君とはあまり話しをしない仲になってしまった。
私はお金を盗られたこともあり、I君への謝罪はしていなかった。

子どもの頃というのは、相手の事情など全く考えずに、好き勝手なことを言ってしまうものです。それによって、相手の心に大変な傷を与えてしまう可能性もあります。
言葉には注意したいと思った出来事でした。

ごめんな。I君。


猪苗代湖の夕日

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