【ごめんなさい】RRRのババイ=独身のおじ、ではなかったです!テルグ語のおじ・おばについてもう一度整理した【覚え書き】

RRR好きが高じて、半年ほど前にこういう記事を書いたのです。

で、上記の記事の中で、そのときに聞いた友人が言ってたことから

おじの中で独身の人をbabaiって呼ぶ

って書いちゃってたんですけど、こちらほかのテルグ語エリア出身友人に確認したところ間違いの情報だったとわかりまして、読んでくださったおひとりおひとりにお詫びして知らせたい……本当に申し訳なかったです。
正確に言うと独身の人をbabaiと呼ぶのではなく、babaiと呼ばれる人に結果的に独身の人が多いという感じなんだと思います(後述します)。

(なお、上記記事でもペッダイヤ部分はほぼ間違いないだろうと思われます)

間違いと知った上でもっとちゃんと知りたいと思って、改めて複数のテルグ後エリア出身の友人にファミリーツリーの言葉について聞き取りをして、納得いった情報について自分なりにまとめてみました。
ただし、今回の情報についても正直、地方によって方言があるとか、部族によってちょっと言葉が違うとかも全然あり、完全に正確かどうかは定かではありません。
あくまで「ハイデラバード出身の複数の友人から聞いたもの」として一例として心に留めておいてもらえればと思います。

比較対象:日本のファミリーツリー

稚拙なイラストで申し訳ないのですが、上記は日本の「おじ・おば」の簡略図です。父方か母方か関係なく、自分の親の年上のきょうだいなら伯父・伯母、年下なら叔父・叔母となり、姻族(伯父や叔母などの結婚相手)については「義理の⚫︎⚫︎」とか「義叔父」というような呼び方をします。
要は、「親より年上か年下か」「血族か姻族か」で名前が変わるというシステムです。

一方で:テルグのファミリーツリー

同じイラストを使ってテルグでのファミリーツリーを現したのがこちらです。

母の姉・父の兄の妻:いずれもPedaamma(もしかしたらPeddaammaかも…)
父の弟・母の妹の夫:いずれもBabai
父の女きょうだいは年上でも年下でもAthaya
……などというシステムなのがわかるでしょうか。

つまり、「親より年上か年下か」「血族か姻族か」で名前が変わる日本のおじ・おばシステムとは違い、まず「自分の親と同じ性別か」で分けられ、さらに「同じ性別の中で親より年上か年下か」で名前が変わるようなのです。
姻族かどうかは関係してきません。

Babaiは「父の弟」を指すので、もし自分の父に10代〜20歳そこそこの若い弟がいるのであれば彼は未婚者のケースが多いでしょう(これが最初の勘違いの一因でした)。

最初ぜんぜんわからんかった

最初に友人に下のような図を書いてもらって解説してもらったんですけど、日本のおじおばシステムを前提としてしまうと全然理解できませんでした。

友人が描いてくれたイラスト

なんでElder/younger sisterでまとまってるの……なぜ……意味わからん……と思ってたんです。ぐぬぬぬ、、、となってしまっていたんですが、友人が言ってくれた言葉でなるほどそうか!となったんです。

🇮🇳友人「Babaiの子どもと自分は結婚できない、でもAthaya・Mammayyaの子どもとは結婚できる!」

わたし「あ、テルグ語エリアって族外婚はOKだけど族内婚はNGだから、族外のおじおばか族内のおじおばかを呼び名で明確にわけているのか……!!!!なるほど〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

つまり……どういうことだってばよ?
どういうことかといいますと……

交叉いとこと平行いとこ

まず、日本ではあんまり意識しないんですが、いとこって「交叉いとこ」と「平行いとこ」に分けられます。

交叉いとことは、自分の親と違う性別のきょうだいから生まれた子どもを指します。たとえば、母方の男兄弟の子ども、などです。
平行いとことは、自分の親と同じ性別のきょうだいから生まれた子どもを指します。たとえば、父方の男兄弟の子ども、などです。

これは複数の友人から聞いているのですが、テルグ語のエリアではかつて交叉いとこの年上男性+年下女性での結婚がかなりあり(今も田舎の方では全然あるらしい)、交叉いとこ同士は結婚できます。
逆に平行いとこ同士の結婚はタブーとされているようです。平行いとこは実のきょうだいと同様に扱われるのだそうです。実際、実のきょうだいの兄も年上の男性の平行いとこも、同じ呼び名「Anna(アンナ)」で呼びます。

そして、RRRの中でのラーマとシータは交叉いとこです。シータはラーマをBavaという人称代名詞で呼んでいて、これは交叉いとこの年上男性かつ許嫁になり得るいとこ(字幕では単に「許嫁」と表記してある)を指す言葉だからです。

こういう「交叉いとことの結婚」というのを族外婚と呼び、父系制における同姓不婚の概念がみられるのですが、わたしは文化人類学にはまっっっったく詳しくないので知りたい方は個別にお調べください……(吐血)

ババイ(ヴェンカテスワルル)はシータの父ではない(独身かどうかはわからない)(たぶん)

上記のことから、

①ヴェンカテスワルルはラーマや弟からババイと呼ばれているので、父(ヴェンカタ)の弟もしくは母の妹の夫、つまり平行な、「族内」のおじである
②シータはラーマにとって結婚相手=交叉いとこであるため、交叉な、「族外」のおじ・おばの娘である。ラーマ父ヴェンカタの姉妹もしくはラーマ母サロージニの兄弟の娘であろう
=ヴェンカテスワルルババイはシータの父ではない(たぶん)

ということが自分の中で腑に落ちました。
以前からインドの友人には「シータ?ババイの娘じゃないよ?だってババイはヴェンカタの弟じゃん!」とか気軽に言われてて、「だからァそこがわかんねーんだけどォ??!!」と思っていたのですが、ひとまず納得いくことができてすっきりしました……。

ここからは個人的な推測ですが、①ヴェンカテスワルルはおそらくヴェンカタの実の弟だと思います。で、②シータはおそらくサロージニの兄弟の娘ではないかと思います。映画内での描かれ方というか……いや、見る人によってそれぞれですが……。
んでヴェンカテスワルルは実際独身だと思います。イギリス警察に入ってすぐだったであろう若かりしころのババイは自分の兄があんな死に方をして、家族を失った甥がどう生き残ったか知っているんですよね。甥は優秀に育ち、自分のいるイギリス警察に入ってきて、絶望的で苦しい使命を背負いながらもその使命を果たそうと、自分の役職も追い抜かして(たぶん。制服とか見るに)心を殺して努力をしている。ババイはラーマの保護者として使命をともにしようとしている気がして、自分の家族を持つイメージはないような気がして……。注意:これは妄想です。

わかんないこともまだある

正直、「じゃあChinnaamma(叔母を指す:Chinnaが小さい、ammaが母)って呼び方はどうなるんや、Pinniとかとどう違う?」とかまったく整理できてない部分はあるので、引き続きヒアリングしたり調べたりしていきたいと思ってます。
RRRを好きになっただけなのになんでテルグ語の人称代名詞に詳しくなってるのか全然わからない……。でも楽しいからいっか!!!!!!!!


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