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一年前は、まだ彼と。

昨日、私が女装をするきっかけとなった男の現在の画像をみた。

伸びた彼の髪の毛が、なぜか胸にチクリと感傷を憶えて。
知らない人となった期間の、その長さを目の当たりにした様だった。

……私の方が綺麗になっていた。
そのように思う。

ある時期まではずっと彼を追っていた。
黒い髪も。黒いマスクも。
どこか同一の個体としての
似ている彼になろうとしていた。

私の方が綺麗になっていた。

喜ぶべきこと、なんだろう。
喜んで然るべきなんだ。
ざまあないな。と思っても良いはずで……

代わりのこの寂しさは、どこからくるものなのだろうか。

どうしようもなく、寂しくなった。

在る3月の朝6時。
時を戻したらもう、会いに行かないよ。
約束なんかも、しないだろう。
今はもう、魅力を感じなくなっていた。
私はもう、なにとも思わなくなっている。

あの時、惨めに打ちのめされた
私がもう、どこにもいなくなっている。
それがどうしようもなく、寂しくなった。
あんなにも、焦がれていたはずなのに。

どうせ、彼は私がどうしようと勝手に生きるのだろうから
元気でね。
は、あの頃のしゆさんに。

私の方が綺麗になっていた。

それがこんなに寂しくなるなんて。

思いもしなかった。

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