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ロシア語能力検定試験

2023年10月末に第82回ロシア語能力検定試験2級を受験、12月13日に合格証書を受け取った。

同試験は300点満点で、内訳は文法100点、露文和訳、和文露訳、聴取(ヒアリング)、口頭作文が各50点である。
合格基準は、これら5科目すべてにおいて60%以上の得点を満たすこと。
ちなみに口頭作文とは、与えられた身近なテーマで10分間ロシア語による自由作文を行い、その後3分間で各受験者に配布されたICレコーダに一斉に口頭録音する、というものだ。

試験を終えて「今年は難しかった!」というのが率直な感想で、合否は五分五分と思っていた。
そのため合格発表の日まで戦々恐々であったが、ふたを開けて見ると、いずれの科目も比較的余裕をもって基準をクリアできていた。
年甲斐もなく一喜一憂したり、ドキドキしたり、そして最後にホッとできたことはうれしい経験だった。

発端は、昨年、ロシア語力のブラッシュアップを思い立ち、能力検定試験2級合格を目標に据えたことだ。

大学ではロシア文学を専攻し、修士課程にも進んだが、アカデミズムに嫌気がさして中退、塾講師の気ままな生活を経て就職した。
それ以来、約40年間のブランクがあった。
職場ではごくまれにロシア語を使う機会があり、また、一時期、法律雑誌でロシアの立法動向に関する短報の執筆を担当したりもしたが、体系的なロシア語学習からは長く遠ざかっていた。
能力検定2級合格を目指すのであれば、もう一度基礎から総合的に勉強しなおす必要があった。

そんな状況から1年余り、今年10月の試験まで何をしてきたか、ごく簡単に記すと以下のとおり。

昨年9月、経堂の東京ロシア語学院のオープンキャンパスに参加。そこでの個別相談に基づき、同学院(以下「学院」とする。)の5か月間の通信講座(基礎コースⅡ)を開始し、今年3月に修了。
同3月、5月の検定試験3級対策として、学院の春季集中講座の和文露訳対策講座(2日間)を受講。
5月に検定試験3級を受験し、合格。
8月には、同じく夏季集中講座の2級対策講座(4日間)を受講。
8月末から10月末にかけて約2か月間、集中的に受験準備を行った。
具体的には、過去5回分の試験問題を学院から入手し、順番に解答と復習を2回ずつ行った。
夏季集中講座の練習問題をすべて復習し、間違えた問題を繰り返し解いた。
通信講座テキストの付属ヒアリング教材(CD)を全課分聴きなおし、和文露訳の練習問題を同じく全課分復習した。

合格証書を手にして今さらのように考える。
このような資格は果たして何の役に立つだろうか?

以前から、2級に合格したら語学力を生かしてなにかちょっとしたアルバイトを見つけられるのではないか、と虫の良い期待を持っていた。
あらためてネットで求人情報を調べてみると、なかなか難しい。
週に数時間好きなときに在宅でできる仕事、というようなこちらの希望にかなう都合の良い仕事はなかなか見当たらない。

しかしせっかくの勉強の成果だ。何の役にも立たないとは考えたくない。
どのように生かしたらよいだろう?

もちろん、結果はどうあれ、合格を目指して勉強したこと自体は無駄ではなかった、と思う。
まあ、少なくとも脳の老化防止には役立ったはずだ。
聴取の試験では、2分半ほどの長さのロシア語テキストの録音が3回繰り返し流され、その後15分で聴き取った内容をできるだけ詳細に記述する。
集中講座の受講や過去問の解答を通じて、そのような練習を何度も行ったことは、ヒアリングの訓練だけでなく、衰えつつある記憶力の活性化に大いに貢献したことだろう。
とすれば、語学の学習は成果だけでなく、過程そのものにも意味があると考えるべきだろうか?

そもそも語学の学習の意義とは何だろうか?と悪いくせで抽象的なことを考え始める。

「語学を学習する意義とは何か?」

ひとつは「異文化との出会い」であると思う。
例えば、「私は本を読んでいます」をロシア語では「ヤー・チターユ・クニーグ」という。
たったそれだけのことであっても、その表現を習得することで、ほんの少しだけロシア語を母語とする人々の生活や社会に触れることができる。
語学の学習とは、そのよう小さな学びを積み重ねていくことによって、異文化との出会いを少しずつ深めていくことではないだろうか?

もう一つは「自国語の再発見」である。
これについても一つ例を挙げたい。
ロシア語の名詞は主格、生格、与格……といった6通りの格を持ち、名詞の性(男性、女性、中性)及び数(単数、複数)に応じて語尾が複雑に変化する。
さらに、その変化パターンは名詞ごとに多岐にわたり、手元の辞書によれば男性名詞10パターン、女性名詞11パターン、中性名詞で7パターンある。しばしば、アクセントの位置も格変化とともに前後に移動する。その上、形容詞や数詞まで名詞の性、数、格に応じて変化する。とにかく、ややこしいことこの上ない。
そんな言語をロシア人はよくも器用に操れるものだ。
あるとき通信講座の質問用紙を使って、そんな感想とともに講師に尋ねてみた。
「ロシア人はうっかり格変化を間違えたりしないのでしょうか?」
それに対して講師の先生はこのように答えてくれた。
「ロシア人のほうこそ「日本人はひらがなとカタカナと漢字を間違えずによく使えるものだ」と感心しています。」
なるほど、と思った。
そういったことも含め、外国語を学習するということは、日本語を外側から見るという視点を獲得するということなのだろう。

さて「異文化との出会い」にしても「日本語の再発見」にしても、まだまだ勉強の余地は大いにありそうだ。

都合の良いアルバイトの口をひきつづき探りながら、1級を目指してみようかな、と考え始めている。
第82回試験の実績によれば、2級の合格率27.3%に対して1級は9.4%。
かなり高いハードルになりそうだけれど。


※タイトル画像は「みれのスクラップ」さんから拝借しました。ありがとうございました。

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