谷山浩子さんの曲について。

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「ない」ことを指し示す。ー 私が好きなものについて。

ずっと熱が下がらず、朦朧としながら考えていたこと。

 これまでも何度か書いてきたのだけど、谷山浩子さんの曲は「ない」ということの描き方が上手い。例えば、『意味なしアリス』の冒頭。

「キノコの上の芋虫は、淋しさを教える教授だった。それじゃあ始めるよと言い残して、芋虫はどこかにいってしまった。もう二度と帰らない。アリスだけ残った。」

 あるいは『ガラスの巨人』。これは心のなかの空っぽな空間、ただ

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そしてその孤独のイメージがあるからこそ、他者との関わりが描かれる。
https://note.mu/siteki_meigen/n/n358cde5448e1?magazine_key=m20ebcd25811d

ドアをノックすると、家のなかにはもう自分がいると返事が来る。それを聞いた自分は、「じゃあ自分は誰なのだろう?」と思い、そのまま彷徨うことになる。
確かに谷山浩子の曲にはこういう感覚に根付いたものが多い気がして、その、どこか不安だけどどこか奇妙で滑稽でもある感じが好きだ。

「わたしがこれ[「賢いエルゼ」]を自分の物語だと感じるのは、たぶんもっと漠然とした感覚なのだと思います。
家に知らない自分がいるから、わたしは自分ではない。
誰も扉をあけてくれない。
動くたびにおかしな鈴の音がして、自分が誰だかわからない……。」
(谷山浩子『真夜中の図書館』)

谷山浩子の曲のなかには、綺麗すぎて何も言えなくなるようなものも多い。
「さかなの言葉」「遺跡散歩」「メリーメリーゴーラウンド」「花時計」「ガラスの巨人」。

駄文 ―「まばゆい いのち 治癒 ゆめ」。

つい先日、永井均さんがツイッターにて『誰にもわからない短歌入門』という本を挙げながら、そこで紹介されている短歌について語っていた。

どろみずの泥と水とを選りわけるすきま まばゆい いのち 治癒 ゆめ

 

 というものだ。笹井宏之さんという方の短歌らしい。

 さて、『誰にもわからない短歌入門』という本のほうは紀伊国屋新宿本店でも扱っているらしいのでそのうち手に入れるとして、この短歌について思

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眠れぬ夜のための谷山浩子プレイリスト。

ふとiTunesで曲をDLしながら谷山浩子プレイリストを作成したら、これがなんともよく眠れる出来だったので曲目を公開してみることにする。ただ、そもそもこのプレイリストは車の運転中に聞くCDを作成するためにつくっていたものなので眠くなってしまうのはとても困るのだが…。(「そもそも谷山浩子って誰?」という方はこの記事へ。また、自分なりに谷山曲の魅力を語った記事はここにまとめてある。)

 車で聞くこと

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私を私が見つめている、に足りないもの ―谷山浩子「神様」について (執筆中)

わたしを見てるそのわたしを 誰かが黙ってみつめてる

 ほんとの名前知らないけど たとえばそれは神様

 谷山さんの曲には時折離人症めいた感覚が登場する。たとえばわたしの体がわたしを離れていってしまうかのような不安を歌った「空に吊るされた操り人形」。わたしを見ているわたしが、いつの間にか月になってわたしを動かしている「わたしじゃない月のわたし」。そして、代表曲の一つである「神様」もまた、こうした感

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わたしとあなたとの深淵を越えていく想像力 ― 谷山浩子「きみの時計がここにあるよ」について

前回に引き続き、谷山浩子さんの曲について手短に。

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 「きみの時計がここにあるよ」を初めて聞いたのはライブにおいてであった。卓上にある置時計から思いがけぬ形で広がっていく世界に感嘆したことを覚えている。自分にはない想像力に触れた気がして、とても強く印象に残った。

 真夜中の置時計 机の上で時を刻む  文字盤の上には 頬杖ついた天使

 ふと僕は考える この天使の図案を描いた誰かが 

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不安で淋しくて、明るく楽しい。― 谷山浩子の暗くて賑やかな曲 5選

いちど書いてみたかった谷山浩子さん布教記事です。

・谷山浩子さんとは…?

 今年で還暦という大ベテラン。独特の世界観を曲のなかで展開しながら、切ない恋、ファンタジー、嫉妬や憎悪、ちょっとしたホラー(?) までさまざまなジャンルの曲を作ることで有名な方です。もし名前を聞いてピンと来なくても、ジブリの『ゲド戦記』のあの曲を作曲した方といえば伝わりますかね? あるいは、『みんなのうた』には「恋するニ

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