「ルポルタージュ」を読んで恋愛感情は必要かと考えた

日本の「生涯未婚率」は男性23.4%・女性14.1%(2019年)だそうです。毎年ニュースになっていて、毎年少し嫌な気持ちになっています。私はアラサーで独身。結婚について、何歳までに絶対に結婚したいとか、逆に生涯独身を貫きたいとか、そんな確たる信念は持ち合わせていない。結婚なんて単なる書面上での契約でしょ、と言い切れるわけでもなく、親友が結婚すればきっと式で号泣する(予定もないのにひそかにスピーチも考えている)。

でも、毎年、失業率が報道されるように、未婚率も流れると、やっぱり結婚は日本の正常さを図るモノサシになっているのかと、多様性!ダイバーシティ!とやたらと言ってるわりに、その価値観は変わらんのか、と、鼻をフンッとしたくなります。

このニュースが流れるときは、たいがい「結婚できるほどの経済的な余裕がなくなっている」とか「人間関係を疎ましく思っている人が増えている」などの言葉が合わさってくる。もちろん、経済的困窮によって結婚を選びたいのに選べない状況になっている人がいることについては、支援や制度の見直しが必要。ですが、「選択肢が増えてるってことですね」なんて肯定的なコメントの一つや二つでてきてもいいのに。

なんて思っていた私に、新たなステージを見せてくれたのが、

「ルポルタージュ」(売野機子)でした。

「若者よ、恋愛しましょう」という空気に疲れた世代が、いろんな価値観を認めようという流れの中で、「恋愛しなくてもいい」から、「恋愛ってかっこわるい」に変わっていった近未来です。

あらすじは、
舞台は2034年。2人の女性新聞記者が、あるシェアハウスが襲撃されたテロ事件の遺族取材に取りかかる。この時代、「恋愛未経験者」(未婚率ではない!)は70%にのぼり、多くの夫婦は条件や目的の一致により「(恋愛)飛ばし」といわれる関係を築いていた。襲撃されたシェアハウスも非恋愛者の集まりだった。ある遺族も、妻との思い出などないと言い切る。なぜこの場所が狙われたのか、亡くなった人たちとその家族との関係をたどりながら、理由を探していく。聖は取材の中で出会った葉に対して何かの感情が芽生える一方、理茗は(狭義の)恋愛感情をもたない自分にとまどいを抱きます。

いきなり興味をそそる始まりです。が、一貫したテーマは、「恋愛」とは何か(夫婦とは何か、にもつながる)を問うています。私は結婚についてどうだこうだと考えていましたが、その考えが少しずれた方向で進んでいくと、もしかして恋愛不要のはやりになるかもしれないなと思いました。

そういう時代がくるかもしれないという新しいけど現実的なよくできた設定です。が、これは続きのシリーズ「ルポルタージュ~追悼記事~」まで読まないといけません。展開があっさりしすぎて拍子抜けだと思ったのですが、続きシリーズで深まっていきます。

売野さんの作品は、きれいな絵柄も相まって、少し不思議な感覚になりながらも、社会からの押し付けへの抵抗というか、別の道筋を示してくれます。「MAMA」もおもしろかったです。


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