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属性と応援、ナショナリズムとの付き合い方

最近はもっぱら野球を見ている。贔屓は北海道日本ハムファイターズだが、悲しい気持ちになることも多い。しかしながらチームが勝利したり、好きな選手が攻守で活躍するととても幸せを感じる。チーム状況はさておき、(野球に限らず)スポーツチームの応援で気になることがある。

例えばファイターズでは、中田翔に対して「お前が必要」という応援フレーズが用いられていたり、他球団では「お前が打たなきゃ誰が打つ」という応援歌の一節がある。一方で、一般的に女性が他者を「お前」と呼ぶことは好ましくないとされている。

しかしながらこの規範は、スポーツの応援時にも適用されてしまうのだろうか?もちろん選手と直接会話するようなことがあれば、その選手「お前」とは呼ばないだろう。(これは性別に関わる問題ではないだろう)しかしながら数年前には中日ドラゴンズの監督が上述の「お前が打たなきゃ誰が打つ」の「お前」を問題視した(中日ドラゴンズに関してはほとんど知らないが、名古屋在住なのでこの騒動は覚えている)という騒動があった。監督が問題視したのはあくまで子どもへの影響だそうだが、「女性ファンも増えているのだから応援の言葉遣いも変えていかなければならない」という言説を見かけたことがあった。その人の意見も尊重しなければならないのは分かっているが、「女性はスポーツの応援においても「お前」と言ってはいけないのか?」とちょっとした反発を覚えた。

私としては、チームや選手を応援する時にはファンは基本的に一体となっており、性別やスポーツ経験、出身地などの個々の属性は消失してしまうと考えている。もちろん注目するポイントなどに自らの属性が関係することもあるだろう。しかしながら、応援の仕方がそれらの属性に制限されることは望ましくないと思う。

だから応援している時も属性の一つである性別を意識したくない。実のところ長い間球場には行けてないのだが、実は各球団が企画している女性限定ガールズユニフォームはあまり肯定的な見解を持てない。昨年札幌ドームで、「女性にはガールズユニ、男性にはウポポイユニ(2020年のWLHユニのこと)配布」というキャンペーンをやっていた時、「私は女性だが、ほしいのはウポポイだ」と思った。(余談だがその後あるキャンペーンに当選して、ウポポイユニを手に入れることができた。強く願えば願望は叶うということを実感した)同様に男性でも「ガールズユニフォームがほしい」と願うファンもいるだろう。

また女性をターゲットにしたイベントも各球団行われている。ファイターズでは「彼氏にしたい選手権」だ。この選手権自体をポリコレやフェミニズム的観点から批判する意見もある。だが私は選手権自体というよりは、これまで女性しか投票できなかったのは良くないのではないかと思っていた。だが今年に関しては、少なくとも予選に関しては性別その他の属性に関わらず、1人(1メールアドレス)1票投票できたようであり、それは良いことだったと思う。「最下位チームがやることではない」という批判を見かけたが、選手の練習時間が犠牲になっているわけでもなし、多少の余興的企画は良いのではないかと思う。他球団を引き合いに出すならば、例えばオリックスバファローズの「オリ姫」企画は、首位になった今年から始まったわけではない。(他球団に関する背景事情ははわからないので深くは触れないが)

(ただし女性ファンが最も求めているのは「強いチーム」であることは間違いない。ファイターズは好きだけど、「強いファイターズ」がもっと好きなのは初のファンクラブ兼選手の今川優馬に限った話ではない。観戦する際、最も期待しているのはチームの勝利や良いプレーだ。)

さて、「ファンが一体となる」ということは、特にワールドカップのような国際大会においては問題となる。日本代表を「ニッポン頑張れ」のように時には国旗を振りかざして応援することは、ナショナリズムの温床として時には批判される。

東京オリンピック開催には正直なところ賛成できないが、それでも野球の「侍ジャパン」には近藤健介やさらにルーキーの伊藤大海が選出されてしまったので、応援しなければならないというジレンマに悩まされている。今の所私のスタンスは「できればオリンピック自体開催してほしくないけれど、出場する以上は彼らの活躍を期待するし頑張ってほしい」といったところだ。

話はそれたが、侍ジャパンを応援する時、私は彼らを日本という国家とは独立したチームとして応援しようと思う。彼らの勝ち負けは国家のあり方とは無関係だ。国名に引きずられるのなら、彼らのことは「サムライズ(仮称)」とでも考えよう。

そもそも、「ジャパン」とか「ニッポン」という名称の団体がすべて、「日本という国を代表する存在」というわけではない。XJAPANはすばらしいバンドだが、彼らは日本を体現する存在というわけではないだろう。さらに言えば、デヴィッド・シルヴィアンやミック・カーンらが在籍した「JAPAN」はどうなってしまうのだろうか。このバンドのメンバー全員はイギリス出身だし、代表曲の一つは「Visions of China」である。

もちろん各スポーツの代表を日本という国家の代表だと考えて応援する人も多いだろうし、おそらくそのような見方のほうが主流なのかもしれない。だが私はスポーツ応援と自分の属性をあまり関連づけたくない。

そう言ってしまうと、そもそもファイターズを応援しているのは北海道出身だからじゃないかと自分自身に反論したくなる。しかしながら応援する時は普段自身を縛っている枷ともなりがちな属性を離れて、チームや選手を応援したいと思っている。

(人名は敬称略)

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