「質の高い観客に映画を届けるために」宮台真司先生 | 映画『アマノジャク・思春期』全国公開記念 最終回:

映画『アマノジャク・思春期』の全国劇場公開を記念し、2019年7月28日(日)下北沢トリウッド公開上映2日目、社会学者・映画批評家 宮台真司先生とのアフタートークの一部始終を文字起こししました。こちらは最終回の記事です。

<映画『アマノジャク・思春期』公式HP>
https://www.amanojaku-sishunki.com/

<有料配信用の特設サイト>
https://shortmovie-shishunki.wixsite.com/theater


<登壇者>
宮台 真司 社会学者・映画批評家
岡倉 光輝 映画『アマノジャク・思春期』脚本・監督
理沙 映画『アマノジャク・思春期』プロデューサー

□参考図書のご紹介。

切通理作著『お前がセカイを殺したいなら』(1995)フィルムアート社


✲携帯・PCなどのハッキング被害と闇バイト被害、スパム被害も注意。
※令和5年から   

観客のニーズに応えれば、表現は劣化する

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理沙:最後に一つ、ご質問させてください。先ほど、質の高い観客に見ていただくという話がありましたが、一方で映画の宣伝って、SNSで情報をシェアして『いいね』を求めるようなところがあると思うんです。そうした風潮がある中で、この作品を本当に観るべき人に届けるには、一体どのようなアクションや方法をとっていけばいいでしょうか?

宮台:トータルで言うと、観客のニーズに応えれば、表現は劣化します。産業界も同じで、インダストリアル・プロダクト──iPhoneみたいなもの──も劣化します。だからこそ、スティーヴ・ジョブスは、スタッフに『日本の携帯電話にはこういう機能がついています』と言われても、『分かった、それらの機能は全て落とそう』と言うわけです。
これがクリエイターには必要です。観客のニーズには応じずに、観客が想定していなかったものを見せることが必要です。想定していなかった表現で『ああ、世界は確かにそうなっている』と思わせられるかどうか。当然『分かる人には分かる』という戦略しかあり得なくなります。『分かる人には分かる』界隈にどれだけ届くか、そこに少しずつでも若い人たちを巻き込めるか、がポイントです。

質の高い観客たちが評価する、名のある表現者を呼べば、その人の周りについているクオリティの高い観客がついて来る

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宮台:でも、良い観客としての質を満たす人たちに対して、漏れなく『こんな映画がある』という情報を届ける必要があります。そこは、質の高い観客たちが評価する、名のある表現者を──単なる有名人ではなく──呼べば、『この人が良いと言うのだったら』ということで、その人の周りについているクオリティの高い観客がついて来ます。とにかく『パンピーを寄せる』というのは止めるべきです。
僕のマブダチとも言える園子温は、昔は尖がった映画を撮っていたので、試写会でしばしば『毎日生き辛い社会を生きているのに、映画でもますます辛くさせられてどうするんだよ!』と抗議されていました。同じことを言う映画批評家さえいるという状況です。そういうクズどもは、映画に来なくていいんだよ。死ぬまでテレビを見てろよ(笑)。

徹底的に暗いからこそ、暗さの中でしか見えない明るさがある

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宮台:テレビと違って映画は非日常です。映画の非日常は、テレビの日常より、遥かにひどい絶望を経験するべき場です。希望を描く場合も、まさに絶望からの希望を描くべきなのです。決してテレビのようになってはいけない。徹底的に暗いからこそ、暗さの中でしか見えない明るさがある。それを描くには、『劣化した関係を粉飾決算して生きるパンピー』を相手にしちゃ駄目なのです。
パンピーは、見たくないものは見ない、見たいものだけを見る、という『粉飾決算された毎日』を送っています。そういう人たちは、見たくないものを見せられると、怒り出します。それはもう本当にクズなので、捨てると良いでしょう。

理沙:ありがとうございます。捨てます(笑)
(終わり)

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宮台先生、ありがとうございました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!
映画『アマノジャク・思春期』製作委員会

<映画『アマノジャク・思春期』公式HP>
https://www.amanojaku-sishunki.com/

<劇場公開情報>

<映画『アマノジャク・思春期』とは>
ある少年の「受け口」の容姿への悩みを通し、彼の周辺で繰り広げられる騒動を描いた作品。また2005年4月の発達障害者支援法の施行前、「発達障害」の周知がない時代が本作の背景となっており、その少年は隠れた発達障害をも抱えている。本作では「いじめ」という普遍的かつ社会的なテーマを中心に据え、子どもの純粋さと同時に残酷な側面、そして、いじめの標的となる当事者の個別の事情を、実話に基づいて、生々しく描く。

※能登半島の皆様にお力をお貸しください。
『赤い羽根共同募金 能登半島』の語句でご検索を。

鍵屋一「ひな型でつくる福祉防災計画 ~避難確保計画からBCP、福祉避難所~」(2020)◎災害対策の関連本

・第2回池袋みらい国際映画祭 地域審査員賞
・第3回ところざわ学生映画祭 グランプリと観客賞*別題Goblin
・福岡インディペンデント映画祭2018 優秀賞

・カナザワ映画祭2017 審査員特別賞[のびしろ賞]
会場:金沢21世紀美術館
金沢駅から徒歩33分(車で10分)

七尾駅間[磯部駅は別駅乗り換え]
JR七尾線、IRいしかわ鉄道線、北陸鉄道浅野川線

・第18回TAMA NEW WAVEコンペティション 特別賞[多摩商工会議所 会頭賞]
会場:ヴィータホール[ヴィータ・コミューネ8階]
聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩2分

・福井駅前短編映画祭2018 グランプリ[フェニックス大賞]
会場:テアトルサンク
福井駅から徒歩9分


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