無題
私の感情は正と負、どちらの方を向いているのか。
かれこれ三秒程度自問して、出した答えは「強く、負の方向」であった。
然し、己を一番認識できないのは己自身であると先の時代を生きた賢者は云うた。何故なら、鏡でも無ければ人は自らの存在を視覚によって認知することはできず、仮に鏡写しになった自らの姿を見たところで、鏡に映った像はただの光の屈折に過ぎず己を直視したことにはならないからである。
ならば。
実母に聞いてみる。私の感情は正と負、どちらの方を向いているのか。
私が考え込んでいたよりも遥かに長い時間、初老を過ぎた母は頭を抱えて悩んでくれた。出された答えは「強く、正の方向」であった。
さて、私の感情は正と負、どちらの方を向いているのか。
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