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畳ベッド

誰にでも、生活のルーティンというものがあると思う。特に、モーニングルーティンが決まっている人は多いのではないだろうか。目が覚めたらまず部屋のカーテンを開けて、それから顔を洗って…と、その順序や内容は人によって異なるにしても、起きてすぐにやることというのは、基本的にパターン化されていることが多い。

私の場合、そのルーティンの中に「敷布団を上げて、掛け布団を畳む」という行為が入る。こう書くと和室に布団を敷いて寝ているのかと思われそうだが、そうではない。答えは、タイトルにある通りだ。私は畳ベッドを使っているのである。

(そもそも畳ベッドとはなんぞや?という方は、普通のベッドの床板が畳になっているものを想像して頂ければ幸いだ。本当は画像を挿入したかったのだけれど、フリーの画像をネットの海から漁ることを諦めたので、興味がある方は検索をかけてみてほしい。)

私はこの畳ベッドを、かれこれ10年近く使っている。畳は湿気を帯びると腐るので、空気の通りをよくするために、起きたらまず敷布団と掛け布団をベッドの端に固める。そして寝る前に、また布団を敷き直すのである。


ネットで「畳ベッド」と検索すると、『畳ベッドのメリット・デメリット』といった記事が複数ヒットする。メリットは湿度調整や断熱性・保温性に優れていること、デメリットは手入れを怠ると痛みやすいこと、などだ。

これらのメリット・デメリットはどれも、自然由来の素材ゆえのもので、畳ベッドの性質をよく説明している。だが私は、畳ベッドを使い始めた後に、思わぬデメリットに直面した。

寝ている時間以外は布団を畳んでおくため、日中は空いている畳部分を使うことができる。腰掛けたり、横になったり、一時的にカバンを置いたり…と、小さな自由スペースとして活用できる。私の場合は、勉強机の真後ろにベッドがあるので、サイドテーブル的な使い方をし始めた。

そのように一時的に置いた荷物を、寝る前にきちんと片付けられるのなら、特に問題はない。が、中には、寝る時間になってもベッドの上が散らかっている日というのも存在する。もう寝たい。ベッドに入りたい。なのに畳の上には荷物がある。それを片付ける気力はない。

そうなった時に、寝る時間には使わないスペースが存在することに私は気がついた。そう、勉強机だ。畳ベッドに仮置きした荷物を、勉強机に移しておけば、なんの問題もなく布団を敷くことができる。これで万事解決だ!


ここまで読んだら、その先の展開が読めた方もいらっしゃると思う。「仮置き」のはずの荷物は、次第に膨れ上がっていった。かくして私は、種々多様な積み上がった荷物を、崩すことなくベッドから勉強机に移す技術を手に入れたのである。世界一無駄な技術の習得だ。ベッドと勉強机の間で荷物を往復させるという要らないルーティンを身につける前に、本当はベッドの上の荷物を片付けてから眠る習慣を手に入れるべきなのだ。分かってはいる。分かってはいるものの、荷物は移せても片付けはできない。それが人間というものだ。


結果として、畳ベッドを使い始めてから10年近く経ったが、そのうちの8年くらいは、「昼間にベッドの上でごろごろする」という楽しみは、私ではなく私の散らかった荷物たちが享受していた。

「それは畳ベッドのデメリットではなくあなたの使い方の問題だ」という指摘が飛んできそうだ。確かに120%くらいは私の問題だろうと思うし、私の畳ベッドちゃんに、自分に片付けの習慣がないことの責任を持たせるのは違う気がする。しかし人間、最初に思い描いた理想を維持し続けることは難しいし、怠けてしまう生き物なのだ。


無駄に壮大な話になってしまったが、部屋の片付けやインテリアを考える上で、こういう自分の性格や生活のゆとりは考慮に入れておかないと、最初の計画は破綻することになる。

先程の畳ベッドの場合、几帳面な人か、寝室と作業場・書斎が分かれている場合には、そのようなことにはならないと思う。ただ私のように、6畳の実家の自室で使おうとしている学生などは要注意だ。いつの間にやら、畳ベッドが荷物置きとしての本領を発揮しているなんてことがあるかもしれない。


ちなみに畳ベッドに荷物を置く習慣、昨年コロナ禍に入り部屋を大々的に片付けた際に、ようやく解消された。今のところ、昼間に畳の上で寛ぐことができている。

次こそは変な習慣がつかないように、気を引き締めて生活していきたいところだ。と言いつつ今も、ベッドの上にはテキストが複数転がっているのだけれど。

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