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交差する世界線②

私は、ある日曜日の昼下がり、今年流行の夏服を買いに
行くでもなく。駅前のカフェでいつも通りに珈琲を
運ぶでもなく。
・・・・見知らぬ病院の入り口前にいた。
あれから、日曜日でも空いている整形外科を見つけた私
は、早速そこに電話した。
午前中は人が多くて既に受付終了していた為、
午後からの診察には必ず間に合うべく、
早めに来ていたのだ。
30分前だったが、そこには既に5,6人程の人が
並んでいた。
幸い屋根の下で日陰になっているのと、海が近くて
程よい海風が入るので、梅雨明けの7月でも、どうにか
待つことが出来た。

病院側も、並ぶのは見越しているのだろう。
入り口前のスロープには、簡易的な椅子が2、3脚
用意してあった。
足裏が猛烈に痛い私は、強がって立っていたが、
それも限界に近づいていて。お年寄りの方もいらしたが、
その椅子に座ってしまおうか・・真剣に迷っていた所だった。

「どうぞー。お待たせしましたー。」
意外に明るい声とともに、早めに病院の扉が開いた。
そこには、理学療法士さん?の格好をした男性が
患者を招き入れていた。
「あ!どうですか?調子は?」
と、顔見知りの患者さんには、声を気さくにかけている。
「悪い病院ではないみたいだ・・。」
・・その明るい雰囲気に、緊張が少し和らいでいった。

受付を済ませ、レントゲンを撮ってもらい、1時間ほど
待って診察の番となった。
恐る恐る猛烈に痛む足裏を、見知らぬ医師に差し出す。
医師は、柔らかい口調とともに、足裏をピンポイントに
押していき、痛みがあるかを確認していく。
その中の1つのポイントを押された瞬間、私は声にならない声と
ともに、足を思わず引っ込めた。・・・痛すぎたのだ。

「はい。足底筋膜炎ですね。」
と、医師から冷静に病名を告げられた。
足裏の筋膜が炎症を起こしているとかで、
「安静」しか治す道はなく・・・。数か月ほどの時間がかかる、
とのことだった。

「いや、困る・・・。」勤め先のカフェは、店長がケチなせいで
私ともう1人以外バイトはいない・・・。
もう1人の子も、もうすぐ産休に入るし、さすがに回らないよな。
そう思い、私は
「何とか、何とか早く治す方法ないですか?」
と、足裏は微塵も痛くなさそうな医師に、食い下がった。
何もない、と言われそうだったが、意外にも、秘密兵器を
紹介するような面持ちで、
「そうですね・・・。では、この機器試してみます?」
と紹介された治療機器があったので、あまり説明を聞きも
せず、
「是非!」
とお願いして、その日に試せることとなった。
そして、その機器での治療の担当となったのが、
先ほどの明るい理学療法士さんだった・・・。

続く







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